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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』
理人の想い3
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帯も、腰骨の上で貝の口結びがされていて、それが背中に回されている。
男性の場合は簡単に蝶結びでもいいと、ネットには書いてあったけれど、さらりと貝の口結びをしてしまうとか、理人、さすがだなぁとか思って惚れ直してしまった。
でも、それは彼にしても同じだったみたいで。
「葵咲、上手に着れたね。すごく可愛いよ」
と言った後、照れたようにはにかんで、
「僕、実は家で結構練習してきたんだけど、うまく出来てるかな?」
私のほうにくるりと背中を向けて、帯の具合を見せてくる。
その仕草がめちゃくちゃ可愛くて。
「バラしたら意味ないじゃん。――って言いながら、実はね、私も!」
理人を真似て、ウエストの帯をちょこんとつまんで見せると「変じゃない?」と聞いてみた。
二人して「似たもの同士だね」って笑いあって、何となくほっこりする。
私たちは今、浴衣姿のまま、向かい合わせに二人でベッドに座っている。
私も理人も何故か正座をしていて。
座布団でもないところに改まった様子で畏まっていることが、何だか余計に緊張感を高めた。
「……葵咲、この旅行中、僕はキミに変なことばかりしてるよね」
ややしてポツン……と理人が口を開いた。
私は何も言わずに理人をただ見つめた。
何か言ってしまえば、彼が話し難くなる気がして。
「僕はキミに異性の知り合いがいるのを目の当たりにすると……不安でたまらなくなる。いつか誰かにキミを奪われてしまいそうな気がして……でも誰にも渡したくなくて……。あんまりにも怖くて、葵咲のことを滅茶苦茶に壊したくなってしまうんだ。さっきも――」
そこで一旦言葉区切ると、理人は腿の上に載せた両の手にグッと力をこめる。
「さっきも……葵咲に僕の子供が出来たら……キミは僕から逃げられなくなるんじゃないかって……そんなことを考えてしまった……。僕は本当に最低だ」
共学の学校に籍を置いていたのだから、異性の友人や知人がいることは当たり前のことで……それは不思議なことではないと頭では分かっていても、心が追いつかないのだ、と理人は言った。
目の前で私が理人の知らない人間関係を垣間見せると、そこから色々悪い想像をしてしまうらしい。
「僕にだって女性のクラスメイトや知人がいないわけじゃないのにね」
そこでとても悲しそうな……どこか自虐的にも思える笑みを口の端に浮かべると、俯いてしまう。
「私が……異性として好きなのは理人だけだよ?」
理人の表情が余りにも辛そうで、私は思わずそう言って目の前に座る彼の手を取っていた。
「正木くんだって、本当にただのクラスメイトの一人で……今日たまたま再会するまで存在だって忘れていた人だし」
こんなことを言っても彼の気持ちは鎮まらないかもしれないけれど、私にはこんなありきたりな言葉しか掛けて上げられない。
それが、凄くもどかしかった。
男性の場合は簡単に蝶結びでもいいと、ネットには書いてあったけれど、さらりと貝の口結びをしてしまうとか、理人、さすがだなぁとか思って惚れ直してしまった。
でも、それは彼にしても同じだったみたいで。
「葵咲、上手に着れたね。すごく可愛いよ」
と言った後、照れたようにはにかんで、
「僕、実は家で結構練習してきたんだけど、うまく出来てるかな?」
私のほうにくるりと背中を向けて、帯の具合を見せてくる。
その仕草がめちゃくちゃ可愛くて。
「バラしたら意味ないじゃん。――って言いながら、実はね、私も!」
理人を真似て、ウエストの帯をちょこんとつまんで見せると「変じゃない?」と聞いてみた。
二人して「似たもの同士だね」って笑いあって、何となくほっこりする。
私たちは今、浴衣姿のまま、向かい合わせに二人でベッドに座っている。
私も理人も何故か正座をしていて。
座布団でもないところに改まった様子で畏まっていることが、何だか余計に緊張感を高めた。
「……葵咲、この旅行中、僕はキミに変なことばかりしてるよね」
ややしてポツン……と理人が口を開いた。
私は何も言わずに理人をただ見つめた。
何か言ってしまえば、彼が話し難くなる気がして。
「僕はキミに異性の知り合いがいるのを目の当たりにすると……不安でたまらなくなる。いつか誰かにキミを奪われてしまいそうな気がして……でも誰にも渡したくなくて……。あんまりにも怖くて、葵咲のことを滅茶苦茶に壊したくなってしまうんだ。さっきも――」
そこで一旦言葉区切ると、理人は腿の上に載せた両の手にグッと力をこめる。
「さっきも……葵咲に僕の子供が出来たら……キミは僕から逃げられなくなるんじゃないかって……そんなことを考えてしまった……。僕は本当に最低だ」
共学の学校に籍を置いていたのだから、異性の友人や知人がいることは当たり前のことで……それは不思議なことではないと頭では分かっていても、心が追いつかないのだ、と理人は言った。
目の前で私が理人の知らない人間関係を垣間見せると、そこから色々悪い想像をしてしまうらしい。
「僕にだって女性のクラスメイトや知人がいないわけじゃないのにね」
そこでとても悲しそうな……どこか自虐的にも思える笑みを口の端に浮かべると、俯いてしまう。
「私が……異性として好きなのは理人だけだよ?」
理人の表情が余りにも辛そうで、私は思わずそう言って目の前に座る彼の手を取っていた。
「正木くんだって、本当にただのクラスメイトの一人で……今日たまたま再会するまで存在だって忘れていた人だし」
こんなことを言っても彼の気持ちは鎮まらないかもしれないけれど、私にはこんなありきたりな言葉しか掛けて上げられない。
それが、凄くもどかしかった。
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