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■僕惚れ②『温泉へ行こう!』
葵咲の同級生2
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さすがにもう、とても眠れるような状態ではなくて――。
私は顔がどんどん火照っていくのを感じながら、そことは違う部分で、一人ドキドキしている自分のことを馬鹿だな、とか思ったりした。
私がこうして理人にときめいているこの瞬間も、彼は正木くんを牽制することばかり考えているはずなんだから。
何だかそう考えたら、彼を気遣う必要なんてないじゃない、と思ってしまった。
私は何も言わずにスッと理人から離れると、身体を起こしてシートに座り直す。
「葵咲?」
いきなり肩から私の気配が遠のいて、理人が怪訝そうな顔をした。
「こんなところじゃ眠れないよね」
途端、嬉しそうに正木くんがそう言葉を紡いだのが、何だかとっても腹立たしくて……。私は珍しく、感情のままに彼をキッと睨んだ。
いきなり私に睨みつけられた正木くんは、私の態度に刹那ひるんでから、一瞬だけ悲しそうな顔をした後で、視線を窓に転じる。
「――そろそろ、着きますね」
トンネルの中なので、何も景色なんて見えないはずなのに、じっと窓のほうを見つめたまま、正木くんが言う。
敬語なので、きっと私に、ではなく理人に向けられた言葉なんだろう。
「僕たちはすぐレンタカーに乗り換える予定なので……正木さんとは駅に着いたらお別れですね」
理人もそれに気付いていたんだろう。代わりに答えてくれる。
そんな二人のやり取りをぼんやり眺めていたら、鏡面になったガラス窓に、正木くんの顔が映っているのに気がついた。
彼が鏡越しに私の様子を窺っているように見えて、居たたまれなくなった私は、思わず視線を逸らして隣の理人を見つめる。
理人の服の裾を、正木くんには見えないようにちょっとだけ引っ張って理人の注意を引いてから、「ごめんね、理人。せっかく肩、貸してくれたのに……。何だか落ち着かなくって……」と話した。
わざと、ドキドキして……というのは言わずにおいた。
今ここで言わなくても、きっと二人きりになったら、理人は私にさっきの行動の真意を問うてくるはずだから。
だから敢えて今は告げない。
「丸山、ごめんね。せっかくの彼氏とのデートを邪魔したみたいになっちゃって」
駅に着くと、それまで無言だった正木くんが、申し訳なさそうにそう言った。
私こそ、照れ隠しのためとはいえ、大人気なかったな、と反省しきりで。正木くんに「こちらこそごめんね」と素直に謝ると、彼に手を振ってさよならする。
そんな私たちの様子を、理人はずっと無言で見つめていた。
私は顔がどんどん火照っていくのを感じながら、そことは違う部分で、一人ドキドキしている自分のことを馬鹿だな、とか思ったりした。
私がこうして理人にときめいているこの瞬間も、彼は正木くんを牽制することばかり考えているはずなんだから。
何だかそう考えたら、彼を気遣う必要なんてないじゃない、と思ってしまった。
私は何も言わずにスッと理人から離れると、身体を起こしてシートに座り直す。
「葵咲?」
いきなり肩から私の気配が遠のいて、理人が怪訝そうな顔をした。
「こんなところじゃ眠れないよね」
途端、嬉しそうに正木くんがそう言葉を紡いだのが、何だかとっても腹立たしくて……。私は珍しく、感情のままに彼をキッと睨んだ。
いきなり私に睨みつけられた正木くんは、私の態度に刹那ひるんでから、一瞬だけ悲しそうな顔をした後で、視線を窓に転じる。
「――そろそろ、着きますね」
トンネルの中なので、何も景色なんて見えないはずなのに、じっと窓のほうを見つめたまま、正木くんが言う。
敬語なので、きっと私に、ではなく理人に向けられた言葉なんだろう。
「僕たちはすぐレンタカーに乗り換える予定なので……正木さんとは駅に着いたらお別れですね」
理人もそれに気付いていたんだろう。代わりに答えてくれる。
そんな二人のやり取りをぼんやり眺めていたら、鏡面になったガラス窓に、正木くんの顔が映っているのに気がついた。
彼が鏡越しに私の様子を窺っているように見えて、居たたまれなくなった私は、思わず視線を逸らして隣の理人を見つめる。
理人の服の裾を、正木くんには見えないようにちょっとだけ引っ張って理人の注意を引いてから、「ごめんね、理人。せっかく肩、貸してくれたのに……。何だか落ち着かなくって……」と話した。
わざと、ドキドキして……というのは言わずにおいた。
今ここで言わなくても、きっと二人きりになったら、理人は私にさっきの行動の真意を問うてくるはずだから。
だから敢えて今は告げない。
「丸山、ごめんね。せっかくの彼氏とのデートを邪魔したみたいになっちゃって」
駅に着くと、それまで無言だった正木くんが、申し訳なさそうにそう言った。
私こそ、照れ隠しのためとはいえ、大人気なかったな、と反省しきりで。正木くんに「こちらこそごめんね」と素直に謝ると、彼に手を振ってさよならする。
そんな私たちの様子を、理人はずっと無言で見つめていた。
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