【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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許して欲しい

僕んち、くる?

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 で――。存外呆気なく――。僕と葵咲きさきちゃんの交際は認められた。
 というか……。
「え? あなたたち、付き合ってたんじゃなかったの?」
 と全員一致で驚かれた。

 元々きみと葵咲は血の繋がりがあるわけじゃないし、葵咲の態度を見ていれば理人りひとくんに惹かれているの、丸分かりだったよ。
 葵咲ちゃんのお父さんが、笑いながらそう言った。

 理人くんが怪我して病院に運ばれた時、この子ったらもう取り乱しちゃって大変だったのよ~。あんまり動転してるから気が済むまで付いててあげなさいって背中押したのよ。
 あ、言うの、遅くなっちゃったけど、あの時は娘を守ってくれて本当にありがとう。理人くんが元気になってくれて良かった。おばさん、理人くんのお母さんに合わせる顔がなくなるかと思ったのよ。

 でもね、そんな理人くんだから……おばあちゃんと二人で、貴方になら葵咲を任せても大丈夫っていつも話してたのよ。
 そう言って笑ったのは葵咲ちゃんのお母さんで――。

 せっかくだからデートしてきなさいな。このところ理人くん、忙しくてずっと会えんかったんでしょう?
 おばあちゃんの提案で、僕らは丸山家のみんなに後押しされて――というか半ば追い出されるように――外に出された。

「“理人くんなら大丈夫”ってそういう意味だったんだね」
 葵咲ちゃんがそういって恥ずかしそうに笑った。僕も、まさかあの言葉にそんな意味があるなんて思っていなくて正直驚かされた。

***

 でも、そんなことよりも信じられないのは、今のこの状況だ。
 僕の横を、まさか葵咲ちゃんが、“デート”と言う名目で歩いてくれる日がくるなんて。
 そう考えたら、思わず顔が緩みそうになる。
(夢じゃないよね?)
 何となく不安になって、視線を、すぐ傍の葵咲ちゃんに移す。
 今日の彼女は、フリルスリーブが可愛い5分丈袖のオフショルダーワンピースを着ていた。色は、いつも白っぽい服装が多い彼女にしては珍しく、鮮やかなライトコーラルで、足元にはゴールドのラメ入りのヒールを履いていた。手には、シルバーの小さなハンドバッグ。
 大学で出会うときには中に大学ノートや本などが沢山入った、帆布ハンプの大きめなトートバッグが主流だったから、とても新鮮で可愛いな、と思った。
 髪も、ゆるふわな印象のサイドアップにしてあって、後れ毛が首筋にかかるのが、女の子らしくて凄くいい。
 休日の彼女はいつもこんな感じなんだろうか。そう考えたら、大学以外の場所でも、もっともっと彼女を見たいな、と思った。


「これから、どうしよう?」
 時計を見ると、まだ十四時にもなっていない。
「とりあえず、一旦うちの実家に停めてある車を取りに行こうか」
 その時に、うちの両親にも彼女のことを恋愛対象として見ている旨を話そう。丸山家のみんなの反応を思い起こすと、うちのほうも多分、言うまでもないことなんだろうけど……一応。
 そこをクリアしないと、彼女は前に進めないのだろうし。

「いいかな?」
 そう問いかけると、葵咲ちゃんははにかんで、「うん」と言ってくれた。

***

 僕の実家でも、やはり僕たちはとっくに付き合っているものと思われていた。

 僕が怪我をしたとき、僕の傍を離れようとしなかった葵咲きさきちゃんを見て、母は僕らを兄妹きょうだいみたいにして育ったから、と言ったけれど、あれも良く聞いてみれば「幼い頃からとても仲の良い二人で微笑ましい」というのを表現したつもりみたいで。
(分かり辛いって!)
 僕はあの時、母の言葉に違和感を感じたのをよく覚えている。僕と葵咲ちゃんは断じて兄妹きょうだいなどではないし、そういう風に思われるのも心外だ、と――。

 どうやら僕も葵咲ちゃんも、空回りをしていたみたいだ。
 案外親たちのほうが、当事者より客観的な目で見て、本質を見抜いていたのかも知れない。


 そのことに気がついた僕たちは、
理人りひと、葵咲ちゃん、せっかくだし、夕飯食べていくでしょう?」
 という母の誘いを丁重に断って、そそくさと僕の実家を後にした。

 僕は、一刻も早く葵咲ちゃんと二人きりになりたかったんだ。その気持ちは、葵咲ちゃんも一緒だったみたいで。
 車に乗り込んで、どちらからともなく「どこに行こう?」と口にしながらも、心の中では行き先なんてひとつしかなくて――。

「――僕ん、来る?」
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