41 / 324
許して欲しい
僕んち、くる?
しおりを挟む
で――。存外呆気なく――。僕と葵咲ちゃんの交際は認められた。
というか……。
「え? あなたたち、付き合ってたんじゃなかったの?」
と全員一致で驚かれた。
元々きみと葵咲は血の繋がりがあるわけじゃないし、葵咲の態度を見ていれば理人くんに惹かれているの、丸分かりだったよ。
葵咲ちゃんのお父さんが、笑いながらそう言った。
理人くんが怪我して病院に運ばれた時、この子ったらもう取り乱しちゃって大変だったのよ~。あんまり動転してるから気が済むまで付いててあげなさいって背中押したのよ。
あ、言うの、遅くなっちゃったけど、あの時は娘を守ってくれて本当にありがとう。理人くんが元気になってくれて良かった。おばさん、理人くんのお母さんに合わせる顔がなくなるかと思ったのよ。
でもね、そんな理人くんだから……おばあちゃんと二人で、貴方になら葵咲を任せても大丈夫っていつも話してたのよ。
そう言って笑ったのは葵咲ちゃんのお母さんで――。
せっかくだからデートしてきなさいな。このところ理人くん、忙しくてずっと会えんかったんでしょう?
おばあちゃんの提案で、僕らは丸山家のみんなに後押しされて――というか半ば追い出されるように――外に出された。
「“理人くんなら大丈夫”ってそういう意味だったんだね」
葵咲ちゃんがそういって恥ずかしそうに笑った。僕も、まさかあの言葉にそんな意味があるなんて思っていなくて正直驚かされた。
***
でも、そんなことよりも信じられないのは、今のこの状況だ。
僕の横を、まさか葵咲ちゃんが、“デート”と言う名目で歩いてくれる日がくるなんて。
そう考えたら、思わず顔が緩みそうになる。
(夢じゃないよね?)
何となく不安になって、視線を、すぐ傍の葵咲ちゃんに移す。
今日の彼女は、フリルスリーブが可愛い5分丈袖のオフショルダーワンピースを着ていた。色は、いつも白っぽい服装が多い彼女にしては珍しく、鮮やかなライトコーラルで、足元にはゴールドのラメ入りのヒールを履いていた。手には、シルバーの小さなハンドバッグ。
大学で出会うときには中に大学ノートや本などが沢山入った、帆布の大きめなトートバッグが主流だったから、とても新鮮で可愛いな、と思った。
髪も、ゆるふわな印象のサイドアップにしてあって、後れ毛が首筋にかかるのが、女の子らしくて凄くいい。
休日の彼女はいつもこんな感じなんだろうか。そう考えたら、大学以外の場所でも、もっともっと彼女を見たいな、と思った。
「これから、どうしよう?」
時計を見ると、まだ十四時にもなっていない。
「とりあえず、一旦うちの実家に停めてある車を取りに行こうか」
その時に、うちの両親にも彼女のことを恋愛対象として見ている旨を話そう。丸山家のみんなの反応を思い起こすと、うちのほうも多分、言うまでもないことなんだろうけど……一応。
そこをクリアしないと、彼女は前に進めないのだろうし。
「いいかな?」
そう問いかけると、葵咲ちゃんははにかんで、「うん」と言ってくれた。
***
僕の実家でも、やはり僕たちはとっくに付き合っているものと思われていた。
僕が怪我をしたとき、僕の傍を離れようとしなかった葵咲ちゃんを見て、母は僕らを兄妹みたいにして育ったから、と言ったけれど、あれも良く聞いてみれば「幼い頃からとても仲の良い二人で微笑ましい」というのを表現したつもりみたいで。
(分かり辛いって!)
僕はあの時、母の言葉に違和感を感じたのをよく覚えている。僕と葵咲ちゃんは断じて兄妹などではないし、そういう風に思われるのも心外だ、と――。
どうやら僕も葵咲ちゃんも、空回りをしていたみたいだ。
案外親たちのほうが、当事者より客観的な目で見て、本質を見抜いていたのかも知れない。
そのことに気がついた僕たちは、
「理人、葵咲ちゃん、せっかくだし、夕飯食べていくでしょう?」
という母の誘いを丁重に断って、そそくさと僕の実家を後にした。
僕は、一刻も早く葵咲ちゃんと二人きりになりたかったんだ。その気持ちは、葵咲ちゃんも一緒だったみたいで。
車に乗り込んで、どちらからともなく「どこに行こう?」と口にしながらも、心の中では行き先なんてひとつしかなくて――。
「――僕ん家、来る?」
というか……。
「え? あなたたち、付き合ってたんじゃなかったの?」
と全員一致で驚かれた。
元々きみと葵咲は血の繋がりがあるわけじゃないし、葵咲の態度を見ていれば理人くんに惹かれているの、丸分かりだったよ。
葵咲ちゃんのお父さんが、笑いながらそう言った。
理人くんが怪我して病院に運ばれた時、この子ったらもう取り乱しちゃって大変だったのよ~。あんまり動転してるから気が済むまで付いててあげなさいって背中押したのよ。
あ、言うの、遅くなっちゃったけど、あの時は娘を守ってくれて本当にありがとう。理人くんが元気になってくれて良かった。おばさん、理人くんのお母さんに合わせる顔がなくなるかと思ったのよ。
でもね、そんな理人くんだから……おばあちゃんと二人で、貴方になら葵咲を任せても大丈夫っていつも話してたのよ。
そう言って笑ったのは葵咲ちゃんのお母さんで――。
せっかくだからデートしてきなさいな。このところ理人くん、忙しくてずっと会えんかったんでしょう?
おばあちゃんの提案で、僕らは丸山家のみんなに後押しされて――というか半ば追い出されるように――外に出された。
「“理人くんなら大丈夫”ってそういう意味だったんだね」
葵咲ちゃんがそういって恥ずかしそうに笑った。僕も、まさかあの言葉にそんな意味があるなんて思っていなくて正直驚かされた。
***
でも、そんなことよりも信じられないのは、今のこの状況だ。
僕の横を、まさか葵咲ちゃんが、“デート”と言う名目で歩いてくれる日がくるなんて。
そう考えたら、思わず顔が緩みそうになる。
(夢じゃないよね?)
何となく不安になって、視線を、すぐ傍の葵咲ちゃんに移す。
今日の彼女は、フリルスリーブが可愛い5分丈袖のオフショルダーワンピースを着ていた。色は、いつも白っぽい服装が多い彼女にしては珍しく、鮮やかなライトコーラルで、足元にはゴールドのラメ入りのヒールを履いていた。手には、シルバーの小さなハンドバッグ。
大学で出会うときには中に大学ノートや本などが沢山入った、帆布の大きめなトートバッグが主流だったから、とても新鮮で可愛いな、と思った。
髪も、ゆるふわな印象のサイドアップにしてあって、後れ毛が首筋にかかるのが、女の子らしくて凄くいい。
休日の彼女はいつもこんな感じなんだろうか。そう考えたら、大学以外の場所でも、もっともっと彼女を見たいな、と思った。
「これから、どうしよう?」
時計を見ると、まだ十四時にもなっていない。
「とりあえず、一旦うちの実家に停めてある車を取りに行こうか」
その時に、うちの両親にも彼女のことを恋愛対象として見ている旨を話そう。丸山家のみんなの反応を思い起こすと、うちのほうも多分、言うまでもないことなんだろうけど……一応。
そこをクリアしないと、彼女は前に進めないのだろうし。
「いいかな?」
そう問いかけると、葵咲ちゃんははにかんで、「うん」と言ってくれた。
***
僕の実家でも、やはり僕たちはとっくに付き合っているものと思われていた。
僕が怪我をしたとき、僕の傍を離れようとしなかった葵咲ちゃんを見て、母は僕らを兄妹みたいにして育ったから、と言ったけれど、あれも良く聞いてみれば「幼い頃からとても仲の良い二人で微笑ましい」というのを表現したつもりみたいで。
(分かり辛いって!)
僕はあの時、母の言葉に違和感を感じたのをよく覚えている。僕と葵咲ちゃんは断じて兄妹などではないし、そういう風に思われるのも心外だ、と――。
どうやら僕も葵咲ちゃんも、空回りをしていたみたいだ。
案外親たちのほうが、当事者より客観的な目で見て、本質を見抜いていたのかも知れない。
そのことに気がついた僕たちは、
「理人、葵咲ちゃん、せっかくだし、夕飯食べていくでしょう?」
という母の誘いを丁重に断って、そそくさと僕の実家を後にした。
僕は、一刻も早く葵咲ちゃんと二人きりになりたかったんだ。その気持ちは、葵咲ちゃんも一緒だったみたいで。
車に乗り込んで、どちらからともなく「どこに行こう?」と口にしながらも、心の中では行き先なんてひとつしかなくて――。
「――僕ん家、来る?」
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる