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きみを守りたい
僕の話を聞いて?
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「……ッ。――っ! ひとっ!」
耳元で、葵咲ちゃんの声が聞こえる。
停電してしまったのか、真っ暗闇で何も見えない。
「理人!!」
不意に頬を包み込む温かい感触がして、僕の意識は急速に浮上する。
気絶してる場合じゃないっ!
今にも泣きだしそうな彼女の声を聞いて、僕はゆっくりまぶたを開いた。停電していたと思ったのは錯覚で、電気はちゃんとついていた。
シャットダウンしていたのは僕の方だったか。
「泣かないで……」
唇の上に彼女の瞳からこぼれ落ちた涙のしずくが触れて、僕はゆるゆると葵咲ちゃんの頬に手を伸ばした。
意思に反して身体がやけに重たい。それに夏も近いというのにおかしい。なんかちょっと寒いかも……。服も何故か濡れているみたいだし。って、あれ? この階に水道なんてあったっけ?
ぼんやりとした頭で色々考える。
まだよく状況が飲み込めないけど、ひとつだけ確かなことがあった。目の前で葵咲ちゃんが泣いている。それだけで、僕はしっかりしないと!と思えた。
「……大、丈夫、だから」
こんな力ない声で大丈夫なんて言われても説得力がないよね。頑張れ僕。腹から声を出せ!
とりあえず現状を把握したくて身体を起こそうとしたら、葵咲ちゃんに押さえ付けられた。
「動かないで! 理人、頭からすごい血が出てるのっ」
泣きながら必死に僕の頭の傷を押さえる葵咲ちゃんに、ああ、だから身体が濡れて気持ち悪かったのか、と今更のように得心する。
「私、バッグにスマホ入ってるっ……」
言いながら、書架の下敷きになっているトートバッグを懸命に引っ張る葵咲ちゃん。でもここ、電波が来てないんだ。教えてあげないと。
「……き、さき。ね、僕の話を聞いて?」
トートバッグごと棚の下から荷物を引っ張りだすのを諦めたらしい彼女が、隙間から袋の中に手を入れてやっとのことで携帯を取り出すのが見えた。彼女の操作でディスプレイが明るく光るのを目の端におさめながら、壊れてなくてよかった、と安堵する。
僕のスマホは倒れた拍子に何処かに行ってしまったみたいだし。
でも、ここにいたんじゃ、せっかく手にした彼女の機器も、用をなさない。
……一刻も早く、彼女を安全な場所に逃がさないと。
「ここ、圏外でしょ? ロビーまで出れば電波も通じるし……助け、呼べると思うんだ……。だから……大変だけど、頑張って移動しよう?」
言えば、葵咲ちゃんが信じられないという顔をする。
「ヤダ! 理人、今動いたら死んじゃうっ!!」
泣きながら僕にしがみついてくる様は幼いころのまんまで。
僕は、懐かしさにふと微笑んだ。
「……大丈夫。僕はそう簡単には死なないよ。呼び出したくせに肝心なこと、ちゃんと話せてないし……それにね……」
そこまで言ってから、葵咲ちゃんの目を見つめてわざとにやりと笑う。
「それに……なにより僕はまだ君を抱いてない……。君とエッチするまでは死んでも死にきれないよ。だから、安心して?」
冗談めかして言ったけど、結構本気。
こんな状況じゃなかったら張り倒されていたかもしれないセクハラ発言だけど、僕が軽口を叩けたことで、葵咲ちゃんの心にほんの少しだけど、ゆとりが生まれたみたいだった。
「理人、本当に大丈夫なの? 立てる……?」
耳元で、葵咲ちゃんの声が聞こえる。
停電してしまったのか、真っ暗闇で何も見えない。
「理人!!」
不意に頬を包み込む温かい感触がして、僕の意識は急速に浮上する。
気絶してる場合じゃないっ!
今にも泣きだしそうな彼女の声を聞いて、僕はゆっくりまぶたを開いた。停電していたと思ったのは錯覚で、電気はちゃんとついていた。
シャットダウンしていたのは僕の方だったか。
「泣かないで……」
唇の上に彼女の瞳からこぼれ落ちた涙のしずくが触れて、僕はゆるゆると葵咲ちゃんの頬に手を伸ばした。
意思に反して身体がやけに重たい。それに夏も近いというのにおかしい。なんかちょっと寒いかも……。服も何故か濡れているみたいだし。って、あれ? この階に水道なんてあったっけ?
ぼんやりとした頭で色々考える。
まだよく状況が飲み込めないけど、ひとつだけ確かなことがあった。目の前で葵咲ちゃんが泣いている。それだけで、僕はしっかりしないと!と思えた。
「……大、丈夫、だから」
こんな力ない声で大丈夫なんて言われても説得力がないよね。頑張れ僕。腹から声を出せ!
とりあえず現状を把握したくて身体を起こそうとしたら、葵咲ちゃんに押さえ付けられた。
「動かないで! 理人、頭からすごい血が出てるのっ」
泣きながら必死に僕の頭の傷を押さえる葵咲ちゃんに、ああ、だから身体が濡れて気持ち悪かったのか、と今更のように得心する。
「私、バッグにスマホ入ってるっ……」
言いながら、書架の下敷きになっているトートバッグを懸命に引っ張る葵咲ちゃん。でもここ、電波が来てないんだ。教えてあげないと。
「……き、さき。ね、僕の話を聞いて?」
トートバッグごと棚の下から荷物を引っ張りだすのを諦めたらしい彼女が、隙間から袋の中に手を入れてやっとのことで携帯を取り出すのが見えた。彼女の操作でディスプレイが明るく光るのを目の端におさめながら、壊れてなくてよかった、と安堵する。
僕のスマホは倒れた拍子に何処かに行ってしまったみたいだし。
でも、ここにいたんじゃ、せっかく手にした彼女の機器も、用をなさない。
……一刻も早く、彼女を安全な場所に逃がさないと。
「ここ、圏外でしょ? ロビーまで出れば電波も通じるし……助け、呼べると思うんだ……。だから……大変だけど、頑張って移動しよう?」
言えば、葵咲ちゃんが信じられないという顔をする。
「ヤダ! 理人、今動いたら死んじゃうっ!!」
泣きながら僕にしがみついてくる様は幼いころのまんまで。
僕は、懐かしさにふと微笑んだ。
「……大丈夫。僕はそう簡単には死なないよ。呼び出したくせに肝心なこと、ちゃんと話せてないし……それにね……」
そこまで言ってから、葵咲ちゃんの目を見つめてわざとにやりと笑う。
「それに……なにより僕はまだ君を抱いてない……。君とエッチするまでは死んでも死にきれないよ。だから、安心して?」
冗談めかして言ったけど、結構本気。
こんな状況じゃなかったら張り倒されていたかもしれないセクハラ発言だけど、僕が軽口を叩けたことで、葵咲ちゃんの心にほんの少しだけど、ゆとりが生まれたみたいだった。
「理人、本当に大丈夫なの? 立てる……?」
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