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僕が閉めない限り
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エレベーターの扉が開くと、果たしてそこには葵咲ちゃんが立っていた。
今日は白地にローズピンクのチューリップがあしらわれた、女性らしい華やかなワンピースだ。素材はシフォンだろうか。
薄い生地が下着を薄ら透けさせていて、僕は何となく目のやり場に困った。
僕が一人でカウンターにいるのを認めると、彼女の方も少し驚いたような顔をして立ち止まる。そういえば、僕がここで彼女を迎えるのは初めてだ。
「いらっしゃい」
何となくその雰囲気が気まずくて、僕は努めて明るい声で呼び掛けた。
その声に、葵咲ちゃんも弾かれたように歩きはじめる。
カウンターまで来てから、
「理人、ホントにここの職員さんだったんだね」
悪戯っぽく笑う。
「前にちゃんとそう言ったじゃない。こう見えて僕、ここの館長だから」
葵咲ちゃんが笑ってくれたことで、少し緊張の糸が緩んだ。
彼女がトートバッグから取り出した本を受け取りながら、そんな軽口も出た。
「次の、借りる?」
返却処理をしながら問えば、
「いいの? もう閉館時間じゃないの?」
今日は新しい本を借りるのは諦めていたのだと彼女は言う。
「平気だよ。まだ19時になってないし。それに、僕が閉めない限りここは閉まらない」
僕の提案に、彼女はありがとう、と言ってカウンター横の館内階段へ向かった。
僕は彼女の姿が消えるまで見送ってから、当初の計画通りエントランス側のエレベーターで一階に降りる。
入口扉に、外から見えるように「Close」の札をかけると、内側から施錠した。入口付近の電気も落としてエレベーターに乗り込むと、ロビーに戻る。
寸の間逡巡してから、彼女が今返したばかりの本を手に取ると、館内に向かう階段を降り始めた。
今日彼女が借りていたのは九類「文学」の本。この図書館ではロビーのすぐ下の階、六階に資料が集められている。
彼女がエレベーターを使わなかったことから、おそらく今日もそれほど階下には降りていないと踏んだ僕は、階段を降りながら彼女の姿を探した。
今日は白地にローズピンクのチューリップがあしらわれた、女性らしい華やかなワンピースだ。素材はシフォンだろうか。
薄い生地が下着を薄ら透けさせていて、僕は何となく目のやり場に困った。
僕が一人でカウンターにいるのを認めると、彼女の方も少し驚いたような顔をして立ち止まる。そういえば、僕がここで彼女を迎えるのは初めてだ。
「いらっしゃい」
何となくその雰囲気が気まずくて、僕は努めて明るい声で呼び掛けた。
その声に、葵咲ちゃんも弾かれたように歩きはじめる。
カウンターまで来てから、
「理人、ホントにここの職員さんだったんだね」
悪戯っぽく笑う。
「前にちゃんとそう言ったじゃない。こう見えて僕、ここの館長だから」
葵咲ちゃんが笑ってくれたことで、少し緊張の糸が緩んだ。
彼女がトートバッグから取り出した本を受け取りながら、そんな軽口も出た。
「次の、借りる?」
返却処理をしながら問えば、
「いいの? もう閉館時間じゃないの?」
今日は新しい本を借りるのは諦めていたのだと彼女は言う。
「平気だよ。まだ19時になってないし。それに、僕が閉めない限りここは閉まらない」
僕の提案に、彼女はありがとう、と言ってカウンター横の館内階段へ向かった。
僕は彼女の姿が消えるまで見送ってから、当初の計画通りエントランス側のエレベーターで一階に降りる。
入口扉に、外から見えるように「Close」の札をかけると、内側から施錠した。入口付近の電気も落としてエレベーターに乗り込むと、ロビーに戻る。
寸の間逡巡してから、彼女が今返したばかりの本を手に取ると、館内に向かう階段を降り始めた。
今日彼女が借りていたのは九類「文学」の本。この図書館ではロビーのすぐ下の階、六階に資料が集められている。
彼女がエレベーターを使わなかったことから、おそらく今日もそれほど階下には降りていないと踏んだ僕は、階段を降りながら彼女の姿を探した。
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