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書庫の中*
欲情
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僕は結局二冊の本を手にしたまま、階段をワンフロア分のぼった。
幸い、ひとつ上のフロアにも、誰もいなかった。
それでも無意識に階段から一番奥まった棚の陰に入ると、僕は手にした本を書架に仮置きする。
そうして未だ熱を持ったままの自分の分身に、鎮まれ……と願う。
本音を言えば、彼女を思いながら昂《たか》ぶる熱を吐き出してしまった方が楽になることは明白だったけれど、さすがに書庫でそんなことはできない。
彼女を抱きたい……。彼女に触れたい……。彼女を舐めたい……。彼女に挿れたい……。
息を吐き出しながら、そんな思いに飲まれそうになる自分を鼓舞する。
悶々とした思いのせいで、さっき触れた彼女の温もりをふいに思い出してしまい、更に下半身に熱が集まるのを感じた。
これは……まずい。なかなか収まりそうにない。
いくらなんでもこんな状態のまま、ロビーには戻れない。
かといってここで出してしまうわけにもいかないし。
書庫内に窓と机と椅子はおろか、トイレすらないここの構造を、今ほど呪ったことはない。
ふと思い立って、彼女が借りていた本を手に取ると、見るとはなしにページを繰る。
ぼんやり文字を追っていたら、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
葵咲ちゃんは、もう上にあがっただろうか。
今ロビーに行って彼女に出会ってしまったら、お互いちょっと気まずいな。
そんなことを考えながら、書架の間を二冊の本を片手に所在なく歩き回る。
もしも今、地震があったらどうなるだろう?
ふと、そんなことを思ったのは、ここが耳鳴りを覚えそうなほど静かで……あまりにも高い棚と、そこに並ぶ本の多さに気圧されたからかもしれない。
全ての棚の下には一応L字型の固定金具が取り付けられているけれど、できれば天井からの支えもあった方が安全だな。
書架と書架の隙間が狭いことを考えてみても、もしも棚がひとつでも倒れてしまったら、最悪ドミノ倒しになってしまって危険だ。
ここは一面が壁に覆われていて窓もないから書庫に降りたら携帯も圏外で、助けも容易には呼べないし。
今度、予算が取れるか上に掛け合ってみるか。
そんなことを思いながら棚と天井の隙間を見ていたら、オレンジの回転灯が光り始めた。
上からの呼び出しだ。
僕は少し考えて、一旦一階に降りて返し損ねていた本を正規の場所に戻してから、エレベーターで最上階を目ざした。
幸い、ひとつ上のフロアにも、誰もいなかった。
それでも無意識に階段から一番奥まった棚の陰に入ると、僕は手にした本を書架に仮置きする。
そうして未だ熱を持ったままの自分の分身に、鎮まれ……と願う。
本音を言えば、彼女を思いながら昂《たか》ぶる熱を吐き出してしまった方が楽になることは明白だったけれど、さすがに書庫でそんなことはできない。
彼女を抱きたい……。彼女に触れたい……。彼女を舐めたい……。彼女に挿れたい……。
息を吐き出しながら、そんな思いに飲まれそうになる自分を鼓舞する。
悶々とした思いのせいで、さっき触れた彼女の温もりをふいに思い出してしまい、更に下半身に熱が集まるのを感じた。
これは……まずい。なかなか収まりそうにない。
いくらなんでもこんな状態のまま、ロビーには戻れない。
かといってここで出してしまうわけにもいかないし。
書庫内に窓と机と椅子はおろか、トイレすらないここの構造を、今ほど呪ったことはない。
ふと思い立って、彼女が借りていた本を手に取ると、見るとはなしにページを繰る。
ぼんやり文字を追っていたら、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
葵咲ちゃんは、もう上にあがっただろうか。
今ロビーに行って彼女に出会ってしまったら、お互いちょっと気まずいな。
そんなことを考えながら、書架の間を二冊の本を片手に所在なく歩き回る。
もしも今、地震があったらどうなるだろう?
ふと、そんなことを思ったのは、ここが耳鳴りを覚えそうなほど静かで……あまりにも高い棚と、そこに並ぶ本の多さに気圧されたからかもしれない。
全ての棚の下には一応L字型の固定金具が取り付けられているけれど、できれば天井からの支えもあった方が安全だな。
書架と書架の隙間が狭いことを考えてみても、もしも棚がひとつでも倒れてしまったら、最悪ドミノ倒しになってしまって危険だ。
ここは一面が壁に覆われていて窓もないから書庫に降りたら携帯も圏外で、助けも容易には呼べないし。
今度、予算が取れるか上に掛け合ってみるか。
そんなことを思いながら棚と天井の隙間を見ていたら、オレンジの回転灯が光り始めた。
上からの呼び出しだ。
僕は少し考えて、一旦一階に降りて返し損ねていた本を正規の場所に戻してから、エレベーターで最上階を目ざした。
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