15 / 324
書庫の中*
何で抵抗しないの?
しおりを挟む
一通りことの経緯を説明した僕に、葵咲ちゃんはそれでもどこか納得していない様子だった。
その証拠に、僕の両腕と書架に閉じ込められて逃げることはかなわないくせに、微塵もひるんだ様子もなく真っ直ぐ僕を睨み付けてくる。
「……でも、だからって、そこまでする?」
信じられない、と小声でつぶやく彼女に、僕はわざとらしくため息をついてみせた。
「前に言ったよね? 一人の男として僕を見て欲しいって。そのためなら僕はどんな手段だって使うよ」
幼いころから読書家で、そのうえ努力家でもあった葵咲ちゃん。
図書館は、そんな彼女にとって必要不可欠な施設だと、僕は子供のころから知っていた。だからここを職場に選んだのだ。
「理人を男として見ろって言われても……無理だよ。だって私たち、小さい頃からずっと一緒にいたんだよ?」
なぜかそこで僕から視線をそらすと、それでもはっきりと言葉を続ける。
葵咲ちゃんは残酷だ。
ずっと一緒に過ごしてきたのは今更どうしようもないじゃないか。
「幼馴染みは恋愛対象にはなれないってこと?」
低く押し殺した声で問いかければ、こちらを見ないでこくんと首肯する。
「僕の方を見て?」
その態度にどこか違和感を覚えて請えば、子供のようにイヤイヤをする。
「なんで?」
思わず葵咲ちゃんの細い両肩に手をかけると、
「だって理人、初めて会った時、私にお兄ちゃんって呼べって言ったじゃない!」
刹那キッ!と睨みつけられた。
もしかして彼女、泣きそうなのを堪《こら》えてる?
何となくだけど、そんな気がした。
「……葵咲?」
「小さい頃は私のお兄ちゃんになるって言ったくせに……私が大きくなった途端いきなり男だと思えって……勝手すぎるよ……」
確かにそうだと思う。
でも、悪いけど僕は……彼女を妹だなんて思った事はただの一度もないんだ。
彼女に近づくためだけに兄の仮面を被っていたのは事実だけど、その仮面を被り続けろと言われても土台無理な話だ。
「じゃあ、葵咲は今でも僕を兄として見てると?」
問えば、葵咲ちゃんは唇をかみしめてうつむいてしまった。
そんなに力一杯唇を噛んだら噛み切ってしまうじゃないか。
そう思ったら、無意識に僕は彼女の顔を上向け、噛みしめられた唇の端に、自分の指を潜り込ませていた。
そうしてそのまま吸い寄せられるように口付ける。
突然キスしてきた僕を押しのけようと伸ばされた両手を掴むと、そのままひとつに束ねて書架に縫いとめる。
唇を割っていた指をのけると、その手で彼女の後ろ頭を抱えて、顔を少し上向かせるようにして口付けの角度を深くする。
そうしていてもなかなか口を開いてくれない彼女に焦れて、僕は一度唇を離して耳元に顔を寄せると
「口、開いて……」
そう言って、もう一度唇をふさいだ。
噛まれてもいいと思って口づけたのに……もっと激しく抵抗されるだろうと思ったのに……彼女は抵抗しなかった。
ばかりか、素直に薄く開かれた唇の隙間から、僕の舌を容易に侵入させてしまう。
それをいいことに、僕は夢中で彼女の口腔をむさぼった。
彼女の口の端を、どちらのものとも分からない唾液が伝う。
「なんで抵抗しないの? 止めてくれないと……僕はもっと君を求めてしまう」
本気で、どうにかなりそうだった。
その証拠に、僕の両腕と書架に閉じ込められて逃げることはかなわないくせに、微塵もひるんだ様子もなく真っ直ぐ僕を睨み付けてくる。
「……でも、だからって、そこまでする?」
信じられない、と小声でつぶやく彼女に、僕はわざとらしくため息をついてみせた。
「前に言ったよね? 一人の男として僕を見て欲しいって。そのためなら僕はどんな手段だって使うよ」
幼いころから読書家で、そのうえ努力家でもあった葵咲ちゃん。
図書館は、そんな彼女にとって必要不可欠な施設だと、僕は子供のころから知っていた。だからここを職場に選んだのだ。
「理人を男として見ろって言われても……無理だよ。だって私たち、小さい頃からずっと一緒にいたんだよ?」
なぜかそこで僕から視線をそらすと、それでもはっきりと言葉を続ける。
葵咲ちゃんは残酷だ。
ずっと一緒に過ごしてきたのは今更どうしようもないじゃないか。
「幼馴染みは恋愛対象にはなれないってこと?」
低く押し殺した声で問いかければ、こちらを見ないでこくんと首肯する。
「僕の方を見て?」
その態度にどこか違和感を覚えて請えば、子供のようにイヤイヤをする。
「なんで?」
思わず葵咲ちゃんの細い両肩に手をかけると、
「だって理人、初めて会った時、私にお兄ちゃんって呼べって言ったじゃない!」
刹那キッ!と睨みつけられた。
もしかして彼女、泣きそうなのを堪《こら》えてる?
何となくだけど、そんな気がした。
「……葵咲?」
「小さい頃は私のお兄ちゃんになるって言ったくせに……私が大きくなった途端いきなり男だと思えって……勝手すぎるよ……」
確かにそうだと思う。
でも、悪いけど僕は……彼女を妹だなんて思った事はただの一度もないんだ。
彼女に近づくためだけに兄の仮面を被っていたのは事実だけど、その仮面を被り続けろと言われても土台無理な話だ。
「じゃあ、葵咲は今でも僕を兄として見てると?」
問えば、葵咲ちゃんは唇をかみしめてうつむいてしまった。
そんなに力一杯唇を噛んだら噛み切ってしまうじゃないか。
そう思ったら、無意識に僕は彼女の顔を上向け、噛みしめられた唇の端に、自分の指を潜り込ませていた。
そうしてそのまま吸い寄せられるように口付ける。
突然キスしてきた僕を押しのけようと伸ばされた両手を掴むと、そのままひとつに束ねて書架に縫いとめる。
唇を割っていた指をのけると、その手で彼女の後ろ頭を抱えて、顔を少し上向かせるようにして口付けの角度を深くする。
そうしていてもなかなか口を開いてくれない彼女に焦れて、僕は一度唇を離して耳元に顔を寄せると
「口、開いて……」
そう言って、もう一度唇をふさいだ。
噛まれてもいいと思って口づけたのに……もっと激しく抵抗されるだろうと思ったのに……彼女は抵抗しなかった。
ばかりか、素直に薄く開かれた唇の隙間から、僕の舌を容易に侵入させてしまう。
それをいいことに、僕は夢中で彼女の口腔をむさぼった。
彼女の口の端を、どちらのものとも分からない唾液が伝う。
「なんで抵抗しないの? 止めてくれないと……僕はもっと君を求めてしまう」
本気で、どうにかなりそうだった。
0
お気に入りに追加
216
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる