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サプライズ
サプライズを仕掛けたい
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僕の愛する葵咲ちゃんは、日本文学科の学生だ。
僕のリサーチによると、彼女が専攻している教授のゼミは古典文学が専門だったはずだ。
彼女がどんなテーマで卒業論文を書くのかはまだ分からないけれど、そのゼミの歴代の卒業生たちが残して行った卒論をチェックしてみると、先人たちが参考にした文献のいくつかは最下層のフロアにあるものだった。
あんな人気のないフロアに彼女一人を行かせるのは不安だ。その場合は必ず付いていこう、と心に決める。
この図書館に勤務し始めてから三週間。来週で内田さんはここを本当に退職する運びになっている。
僕自身、何とか館長としての生活にも慣れてきた。
そして、何より! 葵咲ちゃんの行動パターンが少しずつ把握できてきたのだ。
どうやら彼女は少なくとも週に一度は必ず、講義のない時間帯に図書館を訪れているらしい。今までは現れる時間帯がなかなか掴めなくて捕まえ損ねてきたけれど、カウンター内のパソコンのログをチェックして、少しずつ時間帯の的がしぼれてきた。
今日こそは必ず彼女を捕まえてみせる。
本日のバイトは日本文学科四年生の男の子――鈴木君――だ。
無口だけれどとても真面目な学生で、司書としての知識も姿勢も、他の子たちとは一線を画している。
僕自身、彼がいる時は出番がないなと感じてしまうくらい、レファレンスサービスも割と完璧にこなす子だ。
そして、彼がカウンターにいると、葵咲ちゃんの出現率が高い気がする。
それは彼が、葵咲ちゃんと同じゼミを専攻している先輩だからかもしれないし、ただ単に、鈴木君が割と頻繁にシフトに入っているからそう感じるだけなのかもしれない。でも、一度そんな風に思ってしまうと、何となくモヤッとするのだから僕も大概大人気がない。
せめてもの救いは、鈴木君が葵咲ちゃんに何ら関心を持っていないことだろう。同じ恋する男としての僕の勘だが、彼には他に想い人がいるはずだ。
「鈴木君、僕、裏に入るから何かあったらボタン、押してくれる?」
僕の調べが正しければ、今日はこれから葵咲ちゃんがくる可能性が高い。
葵咲ちゃん、実は僕がここで働いていることをまだ知らない。
サプライズを仕掛けるのも悪くない、と思った。
僕のリサーチによると、彼女が専攻している教授のゼミは古典文学が専門だったはずだ。
彼女がどんなテーマで卒業論文を書くのかはまだ分からないけれど、そのゼミの歴代の卒業生たちが残して行った卒論をチェックしてみると、先人たちが参考にした文献のいくつかは最下層のフロアにあるものだった。
あんな人気のないフロアに彼女一人を行かせるのは不安だ。その場合は必ず付いていこう、と心に決める。
この図書館に勤務し始めてから三週間。来週で内田さんはここを本当に退職する運びになっている。
僕自身、何とか館長としての生活にも慣れてきた。
そして、何より! 葵咲ちゃんの行動パターンが少しずつ把握できてきたのだ。
どうやら彼女は少なくとも週に一度は必ず、講義のない時間帯に図書館を訪れているらしい。今までは現れる時間帯がなかなか掴めなくて捕まえ損ねてきたけれど、カウンター内のパソコンのログをチェックして、少しずつ時間帯の的がしぼれてきた。
今日こそは必ず彼女を捕まえてみせる。
本日のバイトは日本文学科四年生の男の子――鈴木君――だ。
無口だけれどとても真面目な学生で、司書としての知識も姿勢も、他の子たちとは一線を画している。
僕自身、彼がいる時は出番がないなと感じてしまうくらい、レファレンスサービスも割と完璧にこなす子だ。
そして、彼がカウンターにいると、葵咲ちゃんの出現率が高い気がする。
それは彼が、葵咲ちゃんと同じゼミを専攻している先輩だからかもしれないし、ただ単に、鈴木君が割と頻繁にシフトに入っているからそう感じるだけなのかもしれない。でも、一度そんな風に思ってしまうと、何となくモヤッとするのだから僕も大概大人気がない。
せめてもの救いは、鈴木君が葵咲ちゃんに何ら関心を持っていないことだろう。同じ恋する男としての僕の勘だが、彼には他に想い人がいるはずだ。
「鈴木君、僕、裏に入るから何かあったらボタン、押してくれる?」
僕の調べが正しければ、今日はこれから葵咲ちゃんがくる可能性が高い。
葵咲ちゃん、実は僕がここで働いていることをまだ知らない。
サプライズを仕掛けるのも悪くない、と思った。
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