【完結】【R18】つべこべ言わずに僕に惚れろよ

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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大学図書館

司書として

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 葵咲きさきちゃんは地元のとある大学へ進学した。
 そして、僕は彼女の入学から丁度一年後に、彼女の大学内の学校図書館で司書として勤め始めたのだ。

 普通なかなか司書の仕事なんて空きはないのだけれど、神さまの采配だろうか。たまたま彼女の大学図書館員の席に欠員が出ることになり、僕は心の底から感謝した。
 それと同時に、大学に行った折、学芸員と司書とを迷って司書の資格を取ることにした過去の自分にもでかした!と言ってやりたい。
 そんなに給料はよくなかったけれど、司書になりたい人間はたくさんいるもので、かなり狭き門だったと思う。

 大学の図書館は、自校の学生たちの勉強に役立ちそうな資料を中心に集めている。
 そこが公立の図書館と大きく違うところで、流行りの読み物などが公立のそれに及ばない代わりに、公立の図書館にはない専門的な――ある意味マニアックな――資料がわんさかあるのが特徴なのだ。
 学生たちが論文を書く資料を集めるならば、公立図書館に行くより、大学の図書館に行く方が効率が良いのはどこの学校でも同じことだろう。
 そのため大学図書館司書には、公共の図書館司書とは少し違った――いわゆるその大学で学べる専門的な――本の知識が必要不可欠になってくる。
 そうでないと、学生や教授達からの求めに対して的確なレファレンスサービスが出来ないからだ。
 僕がここに採用された一番の理由は、そう言う専門的な知識に造詣ぞうけいが深かったからに他ならない。


 僕は、かなりの運と、そしてある種の執念に助けられて、今、この座を勝ち取れたのだと自負している。
 伊達に一年余分に費やして、葵咲きさきちゃんの後を追ってここへ来たわけではないと言うことだ。

 僕が勤めることになったここは、一大学が有するにしてはとても規模の大きな図書館だった。その上、もともと閉架式へいかしきの図書館だったものを開架式かいかしきにした関係で、とても特殊な造りになっているのにも興味をそそられた。

 七階建ての大きなレンガ造りの建物全体が図書館なのだが、おもしろいのは受付カウンターが一階ではなく最上階にあること。これこそが、まさしくここが閉架式の図書館だった名残なのだ。
 かつては、七階の受付で蔵書の目録を頼りに目当ての資料を選んだ学生たち。彼らに応じる形で司書たちが書庫に降りて、手ずから要求された本を取ってきて学生らに手渡していたんだと思う。
 国内で有名なものだと、国立国会図書館がそのやり方だ。
 それが、年月を経て必要に迫られて開架式に変わったんだろう。大掛かりな工事は行わず、部分的にいじっただけで開架式の体裁を整えたんだろうこの図書館は、書庫へ降りるための階段と、大型エレベーター――大量に資料を運ぶ役割も担うため――が、閉架式の時の名残で受付のすぐ側にある。
 恐らく、かつてはそれらの入り口も含めて受付のカウンター内だったはずだ。
 それらからは各階――書庫――に降りることが可能だが、降りた先では館内からも、最上階のエントランス以外からは外に出ることは敵わない造りになっている。

 建物に付随しているいわば玄関代わりのもう一基の小型エレベーターは、一階エントランスと、七階の受付ロビーにしか止まらない設定になっている。
 外部から建物内に入ってきた者達は、学生・教授の区別なく、皆一律に一階エレベーターエントランスと、七階図書館ロビーにしか行けない、と言うことだ。

 その上、エントランスから最上階に上がる小型エレベーターの出口は、受付の真正面に位置しているので、利用者たちは、上がってきたと同時に大抵カウンター内の人間と目が合う。

 ここを葵咲ちゃんが訪れたなら、僕は十中八九気付くことが出来るだろう。

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