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フェードアウトは許さない
どうして僕を避けるの?
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「葵咲ちゃん」
幼いころ、二人でよく待ち合わせした神社の鳥居の陰。
そこから突然現れた僕に、明らかに動揺する彼女。
「理人……」
長く伸ばした艶やかな黒髪を、ポニーテールにした葵咲ちゃん。
彼女の通う高校の夏服は、半そでのセーラーに、黒のプリーツスカート。胸元には臙脂のセーラースカーフを巻くスタイルだ。
セーラーブラウスは白地が基調だが、襟の部分だけ黒布になっていて、そこに3本の白い縁取りのラインが引かれているのが目を惹く。
彼女を一目見て、スカート丈が極端に短くなっていないことに安堵した僕だったが、髪を1つに束ねてアップにしているせいで、うなじが丸見えだったのには、言いようもない不安を感じた。僕以外の男たちが、彼女をどんな目で見ているんだろう?と思うと胃の奥から苦いものが込み上げる。
だが、とりあえず今は彼女の美しい首筋が見られてラッキーだと思うことにした。
僕の呼び声を受けて振り向きざまに見開かれた大きな瞳と、急に立ち止まった衝撃で揺れるポニーテール。
少し汗ばんだ首筋に張り付いた後れ毛……。
葵咲ちゃんの髪が揺れた瞬間、ふわりと彼女の芳しい体臭が鼻孔をくすぐった。僕が知っている彼女の香りとは少し違う、だけれどとても甘美な芳香。多分、シャンプーの銘柄を変えたんだろう。
素直に告白しよう。
僕は、初めて見る夏服姿の葵咲ちゃんに、すごく興奮した。
少し見ない間に、何て魅惑的に成長したんだろう!
白いセーラーブラウスをツンと突き上げる女性らしい丸いふくらみの双丘。あれに触れられたなら、どんなに心地いいだろう。
彼女の色香に吸い寄せられるように、僕は思わず葵咲ちゃんを抱き寄せてしまっていた。
頭上から降り注ぐ蝉時雨が、耳の奥でわんわん響いている。
つい今し方まで身を潜めていた鳥居の陰に葵咲ちゃんを連れ込むと、柱に彼女の背中を押し付けて退路を断つ。
突然の僕の暴挙に驚いた彼女が、僕を見上げながらキッと睨みつけてきた。
例えその表情がどんなものであったとしても、今この時、間違いなく彼女は僕を見てくれている。そう思うと、その視線が堪らなく僕を奮い立たせた。
睨んでも僕がひるまなかったからか、彼女の愛らしい口が、抗議の声をあげようと息を吸い込む。
だが、僕は、彼女が声を発するのを許さなかった。
刹那、彼女の顎に指をかけると、少し開かれた瑞々しい唇を、角度をつけて深くふさぐ。
「……ンっ!」
そのまま口中を貪るように彼女の舌に自分のそれを絡めると、彼女がイヤイヤをするように首を振って、僕の口付けから逃れようとする。
顎に絡めた指でそれを封じると、同時に腰にまわした腕に力を込めて彼女の肢体をさらに自分に密着させる。
と、次の瞬間、舌先に鋭い痛みが走った。
驚いて思わず唇を放したのと同時に、彼女の右手が勢いよく振り上げられる。それを目端に捉えた瞬間、振り下ろされたその手を捕まえて、僕は彼女の反撃を封じた。
「……バカ理人! いきなり何すんのよっ!」
僕の頬を張ることに失敗した彼女が、せめてもの抵抗か、声に怒気をにじませる。それでも熱を帯びて潤んだ瞳は、怖いというよりむしろ扇情的で。
いくらなんでもその可愛さは反則過ぎるだろ?
そんな彼女の視線を真っ向から受けて、僕は静かに問いかけた。
「葵咲ちゃんこそ、どうして僕を避けるの?」
声こそ荒げなかったけれど、底知れぬ僕の怒りを感じたんだろう。
葵咲ちゃんが、息を呑むのが分かった。
幼いころ、二人でよく待ち合わせした神社の鳥居の陰。
そこから突然現れた僕に、明らかに動揺する彼女。
「理人……」
長く伸ばした艶やかな黒髪を、ポニーテールにした葵咲ちゃん。
彼女の通う高校の夏服は、半そでのセーラーに、黒のプリーツスカート。胸元には臙脂のセーラースカーフを巻くスタイルだ。
セーラーブラウスは白地が基調だが、襟の部分だけ黒布になっていて、そこに3本の白い縁取りのラインが引かれているのが目を惹く。
彼女を一目見て、スカート丈が極端に短くなっていないことに安堵した僕だったが、髪を1つに束ねてアップにしているせいで、うなじが丸見えだったのには、言いようもない不安を感じた。僕以外の男たちが、彼女をどんな目で見ているんだろう?と思うと胃の奥から苦いものが込み上げる。
だが、とりあえず今は彼女の美しい首筋が見られてラッキーだと思うことにした。
僕の呼び声を受けて振り向きざまに見開かれた大きな瞳と、急に立ち止まった衝撃で揺れるポニーテール。
少し汗ばんだ首筋に張り付いた後れ毛……。
葵咲ちゃんの髪が揺れた瞬間、ふわりと彼女の芳しい体臭が鼻孔をくすぐった。僕が知っている彼女の香りとは少し違う、だけれどとても甘美な芳香。多分、シャンプーの銘柄を変えたんだろう。
素直に告白しよう。
僕は、初めて見る夏服姿の葵咲ちゃんに、すごく興奮した。
少し見ない間に、何て魅惑的に成長したんだろう!
白いセーラーブラウスをツンと突き上げる女性らしい丸いふくらみの双丘。あれに触れられたなら、どんなに心地いいだろう。
彼女の色香に吸い寄せられるように、僕は思わず葵咲ちゃんを抱き寄せてしまっていた。
頭上から降り注ぐ蝉時雨が、耳の奥でわんわん響いている。
つい今し方まで身を潜めていた鳥居の陰に葵咲ちゃんを連れ込むと、柱に彼女の背中を押し付けて退路を断つ。
突然の僕の暴挙に驚いた彼女が、僕を見上げながらキッと睨みつけてきた。
例えその表情がどんなものであったとしても、今この時、間違いなく彼女は僕を見てくれている。そう思うと、その視線が堪らなく僕を奮い立たせた。
睨んでも僕がひるまなかったからか、彼女の愛らしい口が、抗議の声をあげようと息を吸い込む。
だが、僕は、彼女が声を発するのを許さなかった。
刹那、彼女の顎に指をかけると、少し開かれた瑞々しい唇を、角度をつけて深くふさぐ。
「……ンっ!」
そのまま口中を貪るように彼女の舌に自分のそれを絡めると、彼女がイヤイヤをするように首を振って、僕の口付けから逃れようとする。
顎に絡めた指でそれを封じると、同時に腰にまわした腕に力を込めて彼女の肢体をさらに自分に密着させる。
と、次の瞬間、舌先に鋭い痛みが走った。
驚いて思わず唇を放したのと同時に、彼女の右手が勢いよく振り上げられる。それを目端に捉えた瞬間、振り下ろされたその手を捕まえて、僕は彼女の反撃を封じた。
「……バカ理人! いきなり何すんのよっ!」
僕の頬を張ることに失敗した彼女が、せめてもの抵抗か、声に怒気をにじませる。それでも熱を帯びて潤んだ瞳は、怖いというよりむしろ扇情的で。
いくらなんでもその可愛さは反則過ぎるだろ?
そんな彼女の視線を真っ向から受けて、僕は静かに問いかけた。
「葵咲ちゃんこそ、どうして僕を避けるの?」
声こそ荒げなかったけれど、底知れぬ僕の怒りを感じたんだろう。
葵咲ちゃんが、息を呑むのが分かった。
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