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■邪魔してごめんなさい/気まぐれ書き下ろし短編
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奏芽さんが、仕事上の関係でどうしても外せない寄り合いがあるとかで不在の夜。
私は四季ちゃんとふたり、二十歳になって初めて。女子会と称した居酒屋デビューを果たした。
アルコール低めの青リンゴサワー酎ハイを1杯だけ飲んで、美味しいだし巻き卵や、焼き鳥、軟骨の唐揚げや揚げ出し豆腐などを四季ちゃんとシェアして食べた。
本当は奏芽さんが帰っていらっしゃるまで一緒にいられたらよかったのだけれど、四季ちゃんは四季ちゃんで彼氏さんが仕事終わりにアパートにいらっしゃる予定になっていて、21時半には解散してマンションに帰宅した。
奏芽さんには、彼が出かけている間、四季ちゃんと過ごす旨は伝えてあったけれど、そんなに早くお開きになるとは言えていなくて。
「ちょっぴり羽目、外しすぎちゃったかな……」
そんなにたくさんお酒を飲んだつもりはないけれど、ふわふわとした浮遊感が全身を包み込んでいる。
奏芽さんも今頃どこかで飲んでいらっしゃるかしらという変な連帯感が、いつもはキツく縛られている私の心のタガを緩めてしまったらしい。
「お酒、甘くて美味しかったなぁ……」
ポツンとつぶやいて、ソファにストンと腰を落とす。
いつもならすぐそばに奏芽さんが座っていらして、ふたりであれこれお喋りしながら笑い合っている時間帯だ。
「静か……」
この部屋はこんなに耳がキンと痛くなってしまうくらい静寂に包まれていたかしら。
リビングからは遠く離れたキッチンに置かれた冷蔵庫のモーター音まで大きく響いてくるようで、私はキュッと身体を縮こめる。
四季ちゃんといる時には感じなかった「ぼっち感」が急速に足元から這い登ってきて、胸のあたりをギュッと掴んできた。
「奏芽さん……」
返事があることはないと分かっていても、寂しさに大好きな彼の名を呼ばずにはいられない。
無意識に胸元に手をやって、ダンシングストーンがあしらわれた、小さな三日月型のネックレスに触れる。
ピンクゴールドのプチっとしたそれには、〝BESIDE YOU(いつもあなたのそばに)〟という文言ととも〝with K〟という文字が刻まれている。
奏芽さんとペアになったネックレスだ。
「――お願い。早く帰ってきて……私を抱きしめて……」
ポツンとつぶやいたら、一層奏芽さんに会いたくて堪らなくなった。
奏芽さんと初体験を済ませて、あんなに怖かったひとりで過ごすことが、何とか日常生活を営むには問題ないレベルまで回復した私だったけれど。
それでもまだ、こんな風にひとりの夜は、ちょっぴり怖くて落ち着かないの。
私は四季ちゃんとふたり、二十歳になって初めて。女子会と称した居酒屋デビューを果たした。
アルコール低めの青リンゴサワー酎ハイを1杯だけ飲んで、美味しいだし巻き卵や、焼き鳥、軟骨の唐揚げや揚げ出し豆腐などを四季ちゃんとシェアして食べた。
本当は奏芽さんが帰っていらっしゃるまで一緒にいられたらよかったのだけれど、四季ちゃんは四季ちゃんで彼氏さんが仕事終わりにアパートにいらっしゃる予定になっていて、21時半には解散してマンションに帰宅した。
奏芽さんには、彼が出かけている間、四季ちゃんと過ごす旨は伝えてあったけれど、そんなに早くお開きになるとは言えていなくて。
「ちょっぴり羽目、外しすぎちゃったかな……」
そんなにたくさんお酒を飲んだつもりはないけれど、ふわふわとした浮遊感が全身を包み込んでいる。
奏芽さんも今頃どこかで飲んでいらっしゃるかしらという変な連帯感が、いつもはキツく縛られている私の心のタガを緩めてしまったらしい。
「お酒、甘くて美味しかったなぁ……」
ポツンとつぶやいて、ソファにストンと腰を落とす。
いつもならすぐそばに奏芽さんが座っていらして、ふたりであれこれお喋りしながら笑い合っている時間帯だ。
「静か……」
この部屋はこんなに耳がキンと痛くなってしまうくらい静寂に包まれていたかしら。
リビングからは遠く離れたキッチンに置かれた冷蔵庫のモーター音まで大きく響いてくるようで、私はキュッと身体を縮こめる。
四季ちゃんといる時には感じなかった「ぼっち感」が急速に足元から這い登ってきて、胸のあたりをギュッと掴んできた。
「奏芽さん……」
返事があることはないと分かっていても、寂しさに大好きな彼の名を呼ばずにはいられない。
無意識に胸元に手をやって、ダンシングストーンがあしらわれた、小さな三日月型のネックレスに触れる。
ピンクゴールドのプチっとしたそれには、〝BESIDE YOU(いつもあなたのそばに)〟という文言ととも〝with K〟という文字が刻まれている。
奏芽さんとペアになったネックレスだ。
「――お願い。早く帰ってきて……私を抱きしめて……」
ポツンとつぶやいたら、一層奏芽さんに会いたくて堪らなくなった。
奏芽さんと初体験を済ませて、あんなに怖かったひとりで過ごすことが、何とか日常生活を営むには問題ないレベルまで回復した私だったけれど。
それでもまだ、こんな風にひとりの夜は、ちょっぴり怖くて落ち着かないの。
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