274 / 283
■ひとりで気負い過ぎんなよ(オマケ的短編)
2
しおりを挟む
「日中俺が仕事に行ってる間、凜子はずっと拓斗の面倒見てくれてんだろ? その分、俺も家にいる時くらいは父親らしいことしてぇし、風呂も俺が入れるんで問題ねぇだろ」
何でもかんでも母親のみが背負い込む必要はないのだと言いながら、ヨシヨシと頭を撫でてくださる奏芽さんの大きな手がすごく心地いい。
奏芽さんの手に触れられるたび、今日1日拓斗があまり眠ってくれなくて、疲れ気味だった身体が癒されていくようで。
拓斗の親は凜子1人じゃないのだからと奏芽さんから噛んで含めるように諭されて、私は自分がどれだけ「母親なんだから」という思いに囚われてアレコレ気負いすぎていたのかを思い知った。
「奏芽さん。お疲れのところ申し訳ないのですが……拓斗のお風呂、お願いしたいです」
ギュッと奏芽さんにしがみつきながら彼を見上げたら、
「申し訳ないとか……なし、な? 凜子が拓斗の面倒を見ないとって思うのと同じくらい、俺もそう思ってんだし」
親としての思いに差はないのだから、私だけが奏芽さんに対して引け目を感じる必要はないのだと、再度やんわりと嗜められる。
「――あ、風呂上がりのあれこれは凜子にやってもらえると助かるんだけど……頼めるか?」
そう問いかけられて、私はコクン、とうなずいた。
奏芽さんはきっと、拓斗の沐浴後のタオルドライや保湿、着替えに至るまで全て1人でそつなくこなせる人だと思う。
だけど、あえてそこを私にお願いしてくれるのが彼らしいなって思うのと同時に有難くて。
奏芽さんは私の性格を本当に熟知しておられる。
私、奏芽さんに拓斗のお風呂の一切合切を任せっきりにして何もしなくてもいいって言われていたら、きっと居た堪れなかったもの。
奏芽さんは本当に周りに対する気配りが出来る魅力的な人だ。
こんな素敵な人が私の夫だなんて、何て幸せなんだろう。
そう気づいた途端、大好きって気持ちが溢れて、胸がキュンと切なく疼いた。
考えてみれば、奏芽さんは拓斗のお世話に関して何ひとつ嫌がったりする素振りを見せられたことすらなかった。
よく男の人は出来ないと聞く、うんちの時のおむつ替えでさえ、私に何かを言うわけでもなく当然のようにサラリと済ませてしまわれるし、何なら「拭くより洗った方が気持ちいいからな」って拓斗のお尻をお湯で綺麗に洗い流してくださったりもして。
その奏芽さんが、拓斗の沐浴に協力してくださらないわけなかったのに。
どうして私、奏芽さんの帰宅を待たずにそれを済ませないといけないとか思ってしまったんだろう。
さっきまでの気負いすぎていた私は本当におバカさんだ。
奏芽さんに頼られて嬉しいと私が感じたように、きっと奏芽さんも。
何でもかんでも母親のみが背負い込む必要はないのだと言いながら、ヨシヨシと頭を撫でてくださる奏芽さんの大きな手がすごく心地いい。
奏芽さんの手に触れられるたび、今日1日拓斗があまり眠ってくれなくて、疲れ気味だった身体が癒されていくようで。
拓斗の親は凜子1人じゃないのだからと奏芽さんから噛んで含めるように諭されて、私は自分がどれだけ「母親なんだから」という思いに囚われてアレコレ気負いすぎていたのかを思い知った。
「奏芽さん。お疲れのところ申し訳ないのですが……拓斗のお風呂、お願いしたいです」
ギュッと奏芽さんにしがみつきながら彼を見上げたら、
「申し訳ないとか……なし、な? 凜子が拓斗の面倒を見ないとって思うのと同じくらい、俺もそう思ってんだし」
親としての思いに差はないのだから、私だけが奏芽さんに対して引け目を感じる必要はないのだと、再度やんわりと嗜められる。
「――あ、風呂上がりのあれこれは凜子にやってもらえると助かるんだけど……頼めるか?」
そう問いかけられて、私はコクン、とうなずいた。
奏芽さんはきっと、拓斗の沐浴後のタオルドライや保湿、着替えに至るまで全て1人でそつなくこなせる人だと思う。
だけど、あえてそこを私にお願いしてくれるのが彼らしいなって思うのと同時に有難くて。
奏芽さんは私の性格を本当に熟知しておられる。
私、奏芽さんに拓斗のお風呂の一切合切を任せっきりにして何もしなくてもいいって言われていたら、きっと居た堪れなかったもの。
奏芽さんは本当に周りに対する気配りが出来る魅力的な人だ。
こんな素敵な人が私の夫だなんて、何て幸せなんだろう。
そう気づいた途端、大好きって気持ちが溢れて、胸がキュンと切なく疼いた。
考えてみれば、奏芽さんは拓斗のお世話に関して何ひとつ嫌がったりする素振りを見せられたことすらなかった。
よく男の人は出来ないと聞く、うんちの時のおむつ替えでさえ、私に何かを言うわけでもなく当然のようにサラリと済ませてしまわれるし、何なら「拭くより洗った方が気持ちいいからな」って拓斗のお尻をお湯で綺麗に洗い流してくださったりもして。
その奏芽さんが、拓斗の沐浴に協力してくださらないわけなかったのに。
どうして私、奏芽さんの帰宅を待たずにそれを済ませないといけないとか思ってしまったんだろう。
さっきまでの気負いすぎていた私は本当におバカさんだ。
奏芽さんに頼られて嬉しいと私が感じたように、きっと奏芽さんも。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
愛のカタチ
如月あこ
ライト文芸
ビアンである姉が、偽装結婚をすると言いだした。
「偽装結婚」に納得のできない愛花だったが、そんなとき、高校の同級生且つ友人である琴音に妊娠の可能性が!
付き添いで向かった病院にいたのは、愛想のいいお医者さん。
その医者こそ義姉の「偽装結婚」の相手で、実は無愛想な人だった。
メインは、姉の偽装結婚相手の医者×ヒロイン。
愛とは何か、をテーマにしています。
物語としてお楽しみください。
追記:迷ったのですが、カテゴリーを変更しました。
※性癖、関係性など、話に出てくる諸々を否定しているわけではありません。
※一部、性的な表現があります
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
好きすぎて、壊れるまで抱きたい。
すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。
「はぁ・・はぁ・・・」
「ちょっと待ってろよ?」
息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。
「どこいった?」
また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。
「幽霊だったりして・・・。」
そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。
だめだと思っていても・・・想いは加速していく。
俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。
※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。
※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。
※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。
いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる