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特典③ 『Fifty-Fifty?』
半分こ6
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「――俺、さっき言わなかったっけ?」
途端、奏芽さんが私の手をぎゅっと握って、真剣な顔をして見つめてくるの。
私はそれだけでドキドキして思わず目をギュッとつぶってしまった。そのせいで、ポロリと涙が零れ落ちる。
それを人差し指ですくってから、奏芽さんがほんの少し私の方に体を寄せてささやくの。
「凜子に甘いもん食わして、思い切り甘やかしたいって気持ちに変わりはねぇんだけど? なぁ、凜子。クソ真面目なのは凜子の魅力だけどさ、デートの時ぐらい、黙って俺に甘やかされろよ」
な?って声と一緒に「よしよし」って頭を撫でられて、私は照れ臭くて真っ赤になる。
「せっかく買ってきたんだしぃ~、凜子にもきっちり半分食べてもらわなきゃ~、アタシ、困るのよぉ?」
奏芽さんが声音を変えていきなりオネェ言葉になって。私はどう反応したらいいのか分からなくて思わず奏芽さんをじっと見つめた。
そのまましばし沈黙――。
「ちょっ、凜子っ! 今の、笑うか引くかするところなんだけどっ?」
私が無表情でじっと見つめてしまったからかな?
奏芽さんがふいっと視線を逸らして、ボソッとつぶやくの。
その横顔、耳が少し赤らんでいる気がして。
もしかして、照れてる?
そう気づいたら何だかホッとしてしまった。
「奏芽さん。私、奏芽さんの外見も大好きですけど……見た目とギャップのある中身が、もっともっと大好きです」
さっき言いたくて言えなかったこと。
奏芽さんがそっぽを向いてくれて、やっと伝えられた。
「おあいこ、ですね」
2人とも相手のことが大好きで、2人して些細なことで一喜一憂して照れまくって。
私たちは案外お似合いのカップルなのかも?って思ったの。
***
奏芽さんと、交互に小さく一口ずつクレープを齧りながら、私はそんなことを考える。
と、不意にこちらに身を乗り出してきた奏芽さんに、予告無しに唇の端をぺろりと舐められて、私はびっくりして固まってしまう。
「凜子、クチんトコ、クリームついてた」
じっ、事後報告とかっ!
「なっ、」
一生懸命抗議の声をあげようと口を開くんだけど、言葉がうまくつむげなくて。
「な?」
奏芽さんが嬉しそうに私の言葉をおうむ返ししてくるのを聞きながら、私は頑張ってみるんだけど何て言ったらいいのか分からなくて混乱してしまう。
「い、っ……」
「い?」
楽しくてたまらないと言いたげにクスクス笑われて、私、今までは「半分こ」を意識してちびちび食べていたチョコバナナをおおきな口を開けてガブッと齧ると、奏芽さんをじっと見つめて言ったの。
「なっ、舐める前に……い、っ……言ってくださいっ!」
「ん、了解。――なぁ、凜子、クリームついてるよ? 今度は鼻の下」
ニヤリと笑った奏芽さんに、指先でスッとクリームを拭われて、私は恥ずかしくて真っ赤になる。
結局、先に言われても後に言われてもダメみたい。
堪えきれないみたいに肩を震わせて笑い出す奏芽さんを横目に見ながら、どうやってこの現状をもう一度引き分けに持っていこう?って真剣に考えた。
だって、私だけ振り回されるのは悔しいもの!
私、奏芽さんに勝つのは無理でも、せめてFifty-Fiftyくらいは狙いたい!
END(2020/09/16~2020/09/24)
途端、奏芽さんが私の手をぎゅっと握って、真剣な顔をして見つめてくるの。
私はそれだけでドキドキして思わず目をギュッとつぶってしまった。そのせいで、ポロリと涙が零れ落ちる。
それを人差し指ですくってから、奏芽さんがほんの少し私の方に体を寄せてささやくの。
「凜子に甘いもん食わして、思い切り甘やかしたいって気持ちに変わりはねぇんだけど? なぁ、凜子。クソ真面目なのは凜子の魅力だけどさ、デートの時ぐらい、黙って俺に甘やかされろよ」
な?って声と一緒に「よしよし」って頭を撫でられて、私は照れ臭くて真っ赤になる。
「せっかく買ってきたんだしぃ~、凜子にもきっちり半分食べてもらわなきゃ~、アタシ、困るのよぉ?」
奏芽さんが声音を変えていきなりオネェ言葉になって。私はどう反応したらいいのか分からなくて思わず奏芽さんをじっと見つめた。
そのまましばし沈黙――。
「ちょっ、凜子っ! 今の、笑うか引くかするところなんだけどっ?」
私が無表情でじっと見つめてしまったからかな?
奏芽さんがふいっと視線を逸らして、ボソッとつぶやくの。
その横顔、耳が少し赤らんでいる気がして。
もしかして、照れてる?
そう気づいたら何だかホッとしてしまった。
「奏芽さん。私、奏芽さんの外見も大好きですけど……見た目とギャップのある中身が、もっともっと大好きです」
さっき言いたくて言えなかったこと。
奏芽さんがそっぽを向いてくれて、やっと伝えられた。
「おあいこ、ですね」
2人とも相手のことが大好きで、2人して些細なことで一喜一憂して照れまくって。
私たちは案外お似合いのカップルなのかも?って思ったの。
***
奏芽さんと、交互に小さく一口ずつクレープを齧りながら、私はそんなことを考える。
と、不意にこちらに身を乗り出してきた奏芽さんに、予告無しに唇の端をぺろりと舐められて、私はびっくりして固まってしまう。
「凜子、クチんトコ、クリームついてた」
じっ、事後報告とかっ!
「なっ、」
一生懸命抗議の声をあげようと口を開くんだけど、言葉がうまくつむげなくて。
「な?」
奏芽さんが嬉しそうに私の言葉をおうむ返ししてくるのを聞きながら、私は頑張ってみるんだけど何て言ったらいいのか分からなくて混乱してしまう。
「い、っ……」
「い?」
楽しくてたまらないと言いたげにクスクス笑われて、私、今までは「半分こ」を意識してちびちび食べていたチョコバナナをおおきな口を開けてガブッと齧ると、奏芽さんをじっと見つめて言ったの。
「なっ、舐める前に……い、っ……言ってくださいっ!」
「ん、了解。――なぁ、凜子、クリームついてるよ? 今度は鼻の下」
ニヤリと笑った奏芽さんに、指先でスッとクリームを拭われて、私は恥ずかしくて真っ赤になる。
結局、先に言われても後に言われてもダメみたい。
堪えきれないみたいに肩を震わせて笑い出す奏芽さんを横目に見ながら、どうやってこの現状をもう一度引き分けに持っていこう?って真剣に考えた。
だって、私だけ振り回されるのは悔しいもの!
私、奏芽さんに勝つのは無理でも、せめてFifty-Fiftyくらいは狙いたい!
END(2020/09/16~2020/09/24)
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