【完結】【R18】私のおさげをほどかないで!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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Epilogue

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「俺は40までに結婚できれば良いと思ってんだよ」
 って奏芽かなめさんは笑ったけれど、私は一回り以上も歳の離れた彼をお待たせしているという自覚があるからだろうな。「じゃあ、あと数年は大丈夫ですね」という気にはなれなくて。

 大学の方の書類上の手続きさえなかったら、二十歳はたちを迎えた2年生の時に籍を入れても良いと思ったくらい。

 でも、奏芽さんが、大学に入れてくれたお母さん親御さんのためにも、〝向井凜子りんこ〟として卒業すべきだって仰って。

 私が成人を迎えるまで頑なに性交渉を拒まれたのもそうだし、大学卒業時の名前の件にしてもそう。

 奏芽かなめさんは私のことを真面目だっておっしゃるけれど、ある意味彼の方がお堅いと感じることも多々あって。

 それはやはり年齢の差なのかな?と思う一方で、ある程度は素地みたいなものがあったのかな?とも思ったの。
 結局その度に私たちは似たもの同士なんだろうなって痛感させられたのだけれど。


***


 初めてを奏芽かなめさんに捧げて以来、入籍の件を気にしてソワソワしていたら、焦る必要はねぇんだよ、って何度も何度も奏芽かなめさんになだめられた。それでも落ち着かなかった私に、
「だったら絶対俺から離れないって証に次の誕生日には婚約指輪を受け取って欲しい」
 って言われて、21歳の誕生日。

 春に出会った私たちだからと、ピンクダイヤとダイヤで作られた薄紅うすくれないの桜の花が、枝に咲き誇るみたいに美しいデザインの婚約指輪を渡された。

 奏芽さんが、私の左手薬指にそれをはめてくださいながら、「凜子りんこ、もう俺から逃げらんねぇな?」って照れ隠しみたいに笑ったのがすごく印象的だった。

 プラチナの台座にキラキラと輝くダイヤモンドがはまった私の手をぎゅっと握りながら、「凜子のこれからの人生、俺にくれるか?」ってじっと見つめられたのを、私は一生忘れません。


***


 そうして今――。
 奏芽かなめさんの左手と、私の左手には婚約指輪とは別の、隣り合う面と面が、支え合うようにデザインされたシンプルなプラチナリングがはまっているの。

 お互いに支え合うことで成り立つようにデザインされた結婚指輪は、寄り添い助け合うふたりの心を表していて、双方ともに無くてはならない関係を表現しているのだと、ジュエリー職人の方に説明された。

 奏芽さんにとっての私はまだまだそんな域には達していないかもしれないけれど、私にとっての奏芽さんは間違いなくかけがえのない存在だから。
 いつか私も、奏芽さんにそんな風に思ってもらえる伴侶になれたら。

 そう思って、結婚式の日から――入籍はまだだったけれど、その指輪とともに奏芽さんと歩んできて。
 妊娠後手足が浮腫むくみやすくなってからは、外して例のペアネックレスのチェーンに通すようになったけれど、いつも肌身離さず持っています。


 入籍から十数ヶ月を経て鳥飼とりかいさん、と呼ばれることに違和感を感じなくなったのはやっと最近のことだ。
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