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貴方のものだと思えるから
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「はい」って応じると扉が開いて、奏芽さんが立っていた。
思わず立ち上がって彼の方へ駆け寄った私に、
「凜子、大学にいるんじゃなかったのかよ?」
って問いかけられてソワソワする。
「まさか、1人で来たのか?」
静かな声音で責めるように問われて、私は恐る恐るコクン、とうなずいた。
「ごめんなさいっ。でも……私っ、どうしても――」
日常を取り戻したかったんです、と小声で付け加えたら、途端ぎゅっと抱きしめられた。
休憩室の扉、開きっぱなしだし、誰かに見られてしまいそうでドキドキしてしまう。
でも、それ以上に大好きな奏芽さんの香りに包まれたことが嬉しくて。
「大丈夫……だったんだな?」
今、ここで普通に過ごせているということは、1人でこの町に来ても動けなくなったりしなかったんだな?と言外に含められて、私は抱きしめられたまましっかりとうなずく。
奏芽さんはそれにホッとしたように私を抱く腕を緩めると、
「無茶すんなって言ったのに、凜子のアホ」
ポツンと落とされた言葉に、私は思わず瞳を見開いた。
でも見上げた奏芽さんのお顔はどこか泣きそうな、でも何だか嬉しそうな表情に見えて。
私はそんな彼の頬にそっと触れる。
「はい、奏芽さんのおかげです」
そうして、少しズレたことを言って笑われてしまった。
でも、私をこんな風に強くしてくださったのは紛れもなく奏芽さんなんです。
だから、私の中では今こうして今まで通りを取り戻せつつあるのは、みんなみんな〝奏芽さんのおかげ〟です。
そこで、「次の方どうぞー」という、おそらく第一診察室――院長先生側――の方の声が聞こえてきて。その気配に、私はハッとする。
大好きな奏芽さんのお顔が見られて、嬉しさで失念するところだった。
「奏芽さんっ、今って診察中じゃないんですか?」
ソワソワしながらそう言ったら、奏芽さんってばニヤッと笑って「トイレ休憩」とか。
だったらこんなところに寄り道してたらダメじゃないですかっ。
「トイレ、早く行ってきてください。――我慢したら病気になっちゃいますっ!」
奥の職員用トイレを指差して、眉根を寄せながら彼の背中を押したら、何故かククッと笑われて。
「本ッ当、そういうところ、凜子らしくていいな」
くるりと振り向いて、かがみ込むようにして頭をふんわり撫でられた。
途端、前屈みになられた奏芽さんの胸元にキラリと黒光りするチェーンが垣間見えて、心臓がトクンと小さく踊る。
普通にされている分には白衣とシャツに隠れて見えないけれど、私はその鎖の先に自分と対になった三日月型のペンダントトップがあることを知っている。
「とりあえず元気そうで安心した。――仕事終わったら一緒に飯でも食いに行って、ゆっくり話そうな?」
言って、そのままクルリと踵を返すと、奏芽さんったらトイレではなく診察室の方へ戻って行くの。
私はそんな奏芽さんを呆然と見送りながら「トイレは⁉︎」って思って、そこでやっと「もしかしてトイレは口実だったの?」と気がついた。
――私のこと、心配して顔を見にきて下さっただけ?
そう分かったら、嬉しさと恥ずかしさで身体がブワッと熱くなった。
私は思い出したように服の中に隠れているネックレスをギュッと握って。
奏芽さんの残り香に包まれながら、彼と繋がれていることを切ないくらいに愛しく思った。
思わず立ち上がって彼の方へ駆け寄った私に、
「凜子、大学にいるんじゃなかったのかよ?」
って問いかけられてソワソワする。
「まさか、1人で来たのか?」
静かな声音で責めるように問われて、私は恐る恐るコクン、とうなずいた。
「ごめんなさいっ。でも……私っ、どうしても――」
日常を取り戻したかったんです、と小声で付け加えたら、途端ぎゅっと抱きしめられた。
休憩室の扉、開きっぱなしだし、誰かに見られてしまいそうでドキドキしてしまう。
でも、それ以上に大好きな奏芽さんの香りに包まれたことが嬉しくて。
「大丈夫……だったんだな?」
今、ここで普通に過ごせているということは、1人でこの町に来ても動けなくなったりしなかったんだな?と言外に含められて、私は抱きしめられたまましっかりとうなずく。
奏芽さんはそれにホッとしたように私を抱く腕を緩めると、
「無茶すんなって言ったのに、凜子のアホ」
ポツンと落とされた言葉に、私は思わず瞳を見開いた。
でも見上げた奏芽さんのお顔はどこか泣きそうな、でも何だか嬉しそうな表情に見えて。
私はそんな彼の頬にそっと触れる。
「はい、奏芽さんのおかげです」
そうして、少しズレたことを言って笑われてしまった。
でも、私をこんな風に強くしてくださったのは紛れもなく奏芽さんなんです。
だから、私の中では今こうして今まで通りを取り戻せつつあるのは、みんなみんな〝奏芽さんのおかげ〟です。
そこで、「次の方どうぞー」という、おそらく第一診察室――院長先生側――の方の声が聞こえてきて。その気配に、私はハッとする。
大好きな奏芽さんのお顔が見られて、嬉しさで失念するところだった。
「奏芽さんっ、今って診察中じゃないんですか?」
ソワソワしながらそう言ったら、奏芽さんってばニヤッと笑って「トイレ休憩」とか。
だったらこんなところに寄り道してたらダメじゃないですかっ。
「トイレ、早く行ってきてください。――我慢したら病気になっちゃいますっ!」
奥の職員用トイレを指差して、眉根を寄せながら彼の背中を押したら、何故かククッと笑われて。
「本ッ当、そういうところ、凜子らしくていいな」
くるりと振り向いて、かがみ込むようにして頭をふんわり撫でられた。
途端、前屈みになられた奏芽さんの胸元にキラリと黒光りするチェーンが垣間見えて、心臓がトクンと小さく踊る。
普通にされている分には白衣とシャツに隠れて見えないけれど、私はその鎖の先に自分と対になった三日月型のペンダントトップがあることを知っている。
「とりあえず元気そうで安心した。――仕事終わったら一緒に飯でも食いに行って、ゆっくり話そうな?」
言って、そのままクルリと踵を返すと、奏芽さんったらトイレではなく診察室の方へ戻って行くの。
私はそんな奏芽さんを呆然と見送りながら「トイレは⁉︎」って思って、そこでやっと「もしかしてトイレは口実だったの?」と気がついた。
――私のこと、心配して顔を見にきて下さっただけ?
そう分かったら、嬉しさと恥ずかしさで身体がブワッと熱くなった。
私は思い出したように服の中に隠れているネックレスをギュッと握って。
奏芽さんの残り香に包まれながら、彼と繋がれていることを切ないくらいに愛しく思った。
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