【完結】【R18】私のおさげをほどかないで!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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貴方のものだと思えるから

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「本当に大丈夫なのか?」

 奏芽かなめさんが心配そうな顔をして私を見つめてくる。

「だ、大丈夫ですっ」


 ……多分。

 確信はないですけど、そう思います。


***

 あの、奏芽かなめさんとの初体験を済ませた嬉し恥ずかしなお泊まりから帰ってきてすぐの登校日。

 4月も折り返し地点を過ぎ、大分温かくなって来たとはいえ、朝晩はまだ少し肌寒かったりして。

 私は少し考えて、長袖のロング丈ワンピースの上にGジャンを重ねて温度調節ができる服装にした。
 黒地に小花柄のワンピースに、深い藍色のGジャン。
 そこへ歩きやすいように黒と白のツートンカラーのスニーカーを合わせて、薄アイボリーの帆布はんぷのショルダーバッグを手にする。
 髪の毛は2つに分けていつも通り編み込みにした。でも、いつもと少しだけ違うのは、黒いシンプルな髪ゴムではなく、シフォン素材のスカートと似たシュシュで留めたこと。
 奏芽さんが、その方が可愛いよって言ってくださったから。思い切ってほんのちょっとステップアップ。


 それから……もっともっと大きな変化がだけ。


***

 そう言えば奏芽かなめさんと初めて出会ったのも、このぐらいの時節のころだった。

 今日みたいにショルダーバッグに荷物を入れていて、落とした拍子にノートに記名してたのを見られたんだっけ。

 まだほんの1年しか経っていないのに、凄く懐かしい気がして。


「片山さんが無理だってんなら俺、何とか都合つけるぞ?」

 玄関先で「行って来ます」をして振り返った私に、奏芽かなめさんがそんなことを言って眉根を寄せる。

「お守りも持ってますし、スマホのGPSもオンです」

 言って、奏芽さんが前に私のコートに忍ばせておいてくださった、例のBluetoothブルートゥース接続のタグと、スマホを見せる。
 タグは、紐を通してカバンの持ち手につけてある。

「それに――」

 鎖骨のあたりに服越しに触れてから、「もあるので」と上目遣いに奏芽さんを見上げた。


「けど……」

 それでも尚も言い募ろうとなさる奏芽さんに近づくと、私は彼の手を軽く引っ張って、ちょいちょいと手招きをする。

「?」

 突然の、何の脈絡もない手招きに怪訝けげんそうな顔をしながらも、奏芽さんが少しかがんでくれて。

 私はそんな彼の頬に、ちょっぴり背伸びしてチュッとキスを落とした。

 自分からこんなことをしたのは初めてだったから、凄く照れ臭かったけど、何だかそうしないと前に進めない気がして。

 奏芽さんもさすがに驚かれたみたいで、頬を押さえたままフリーズなさった。
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