168 / 283
ル・ラパン・エレ
4
しおりを挟む
そうして何より私をソワソワさせたのは、ベッドがひとつしかないことっ!
き、キングサイズっていうのかな。
確かに大人がふたりで寝そべっても、全然狭さは感じさせない大きなベッドだと思う。
でも――。
実家に戻った際、奏芽さんとふたり、ツインのお部屋に泊まって。
ベッドは別々でも、大好きな奏芽さんと同室にいるんだと思っただけで意識しまくって眠れなかったのをふと思い出した私は、心臓が破裂しそうに騒ぎ始めてしまう。
ベッドを見て固まった私をそっと抱き寄せて、奏芽さんが小声で問いかけてくるの。
「ツインのほうが良かった?」
って。
私は、気遣うような……どこか不安そうなその声音に、戸惑いに揺れる瞳で、でもしっかりと奏芽さんを見上げた。
「今、夜は……、いっ、一緒が……いい、です」
ひとつの布団で奏芽さんとふたりで一夜を明かすというのがどういう意味を持つのか……実際にはよく分からない。
けれど……。
でも……。
奏芽さんとならば、越えてみたい〝一線〟だと思ったの。
奏芽さんが、私の言葉に一瞬息を飲んだ気配がして……。
ギュッと私を抱きしめてから、
「――とりあえず、荷物置いたし、下、降りよっか」
と……どこか必死に気持ちを切り替えるみたいにつぶやいた。
もしかして奏芽さん、18時11分の壁、意識してる?
***
チェックインをしたのは15時過ぎ。
時間的に、3時のおやつにあたる時刻だったのだけれど、それとは関係なくここのホテルではチェックインしてお部屋に荷物を置いた後、1階のカフェでウェルカムサービスのドリンクとスイーツが食べられるみたいで。
ベルボーイさんから道すがらそんなサービスがあるのだと説明を受けた際、私、すごくワクワクしたのを思い出した。
お部屋に圧倒されて危うく忘れかけていたけれど、奏芽さんの言葉でハッと我に返る。
そんなサービスがあるホテルなんて初めてだったので、聞いたとき私、何だか凄く新鮮で楽しみだって思ったの。
奏芽さんと早くそこに行きたい!って。
***
「ここも天井、高いですね」
部屋もそうだったけれど、1階全体も船底天井になっていて、凄くゆったりして感じられる。
お部屋よりかなり大きめの羽うさぎモチーフのシャンデリアがぶら下がっていて、扉が開くたびに空気の流れが出来るのか微かに揺れてキラキラと光を跳ね返すの。
「ウサギしかいねぇのな」
奏芽さんがポツンとつぶやいて……何故か私をじっと見つめてきて。
「――?」
キョトンとしたら、「ウサギを狙うキツネとか……1匹くらいいてもいいと思わねぇ?」って残念そうに溜め息をつくの。
その言葉に私はハッとする。
私たちのアイコン!
気づいた瞬間おかしくてクスクス笑ったら、奏芽さんが嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱ凜子は笑顔がいいな」
き、キングサイズっていうのかな。
確かに大人がふたりで寝そべっても、全然狭さは感じさせない大きなベッドだと思う。
でも――。
実家に戻った際、奏芽さんとふたり、ツインのお部屋に泊まって。
ベッドは別々でも、大好きな奏芽さんと同室にいるんだと思っただけで意識しまくって眠れなかったのをふと思い出した私は、心臓が破裂しそうに騒ぎ始めてしまう。
ベッドを見て固まった私をそっと抱き寄せて、奏芽さんが小声で問いかけてくるの。
「ツインのほうが良かった?」
って。
私は、気遣うような……どこか不安そうなその声音に、戸惑いに揺れる瞳で、でもしっかりと奏芽さんを見上げた。
「今、夜は……、いっ、一緒が……いい、です」
ひとつの布団で奏芽さんとふたりで一夜を明かすというのがどういう意味を持つのか……実際にはよく分からない。
けれど……。
でも……。
奏芽さんとならば、越えてみたい〝一線〟だと思ったの。
奏芽さんが、私の言葉に一瞬息を飲んだ気配がして……。
ギュッと私を抱きしめてから、
「――とりあえず、荷物置いたし、下、降りよっか」
と……どこか必死に気持ちを切り替えるみたいにつぶやいた。
もしかして奏芽さん、18時11分の壁、意識してる?
***
チェックインをしたのは15時過ぎ。
時間的に、3時のおやつにあたる時刻だったのだけれど、それとは関係なくここのホテルではチェックインしてお部屋に荷物を置いた後、1階のカフェでウェルカムサービスのドリンクとスイーツが食べられるみたいで。
ベルボーイさんから道すがらそんなサービスがあるのだと説明を受けた際、私、すごくワクワクしたのを思い出した。
お部屋に圧倒されて危うく忘れかけていたけれど、奏芽さんの言葉でハッと我に返る。
そんなサービスがあるホテルなんて初めてだったので、聞いたとき私、何だか凄く新鮮で楽しみだって思ったの。
奏芽さんと早くそこに行きたい!って。
***
「ここも天井、高いですね」
部屋もそうだったけれど、1階全体も船底天井になっていて、凄くゆったりして感じられる。
お部屋よりかなり大きめの羽うさぎモチーフのシャンデリアがぶら下がっていて、扉が開くたびに空気の流れが出来るのか微かに揺れてキラキラと光を跳ね返すの。
「ウサギしかいねぇのな」
奏芽さんがポツンとつぶやいて……何故か私をじっと見つめてきて。
「――?」
キョトンとしたら、「ウサギを狙うキツネとか……1匹くらいいてもいいと思わねぇ?」って残念そうに溜め息をつくの。
その言葉に私はハッとする。
私たちのアイコン!
気づいた瞬間おかしくてクスクス笑ったら、奏芽さんが嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱ凜子は笑顔がいいな」
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる