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誓いのキス

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 私が生まれ育った町で、奏芽かなめさんと2人、お母さんから頼まれた買い物をするのはとっても不思議な気分だった。

 私という人間を形成する欠片かけらのひとつを、大好きな奏芽さんに知ってもらうのは恥ずかしいような、でも何だか嬉しいような、どこかくすぐったい感じがして……。

 ほわほわとしたシャボン玉のような夢心地なその時間は、私にとってとても掛け替えのないものになったの。

 奏芽さんも、同じことを思ってくださったみたいで、「凜子りんこがこの町でどんな風に生活していたのか垣間見ることが出来て、何かすげぇ得した気分だわ」って頭を撫でてくださって。

 私、実は〝奏芽さんの地元あちら〟では、しょっちゅうそういうの、感じてるんですよ、と今までは隠していたことを告白してみたりしました。

 霧島きりしまさんご夫妻や、奏芽かなめさんのご両親と接する機会が増えてからは特に。

 私の知らない奏芽さんのあれこれを切り貼りしていくみたいに、皆さんからたくさんのエピソードをお聞きするたび、私の中の奏芽さんがどんどん人間味を持って成長していくみたいで。

 私、奏芽さんにも私のこと、過去も含めてそんな風に少しでも身近に感じてもらえたらなって思っていたから。

 だから、ふたりで……私が生まれ育ったこの町にこられて、本当によかったって思ったの。

 実家では私がお母さんと一緒に丹精込めて作った昼食(お母さんと2人で台所に立つのは本当に久しぶりで、すごく楽しかったです!)を3人で一緒に食べて。


 まだ籍こそ入れていないけれど、奏芽かなめさんと、本当の家族みたいな時間が過ごせた気がして、私、じんわり心が温かくなったの。

 おじいちゃんやおばあちゃんが亡くなって、私たち母子おやこはたった2人ぼっちになってしまってたから。

 のぶちゃんはお母さんが留守の時、よく私の相手をしに来てくれていたけれど、お母さんが帰る頃には家で待つご両親の元へ帰宅してて。
 こんな風に食卓を、うちのお母さんも交えて一緒に囲むってことは殆どなかったの。


 ひとりでも家族だと思える人が増えるのはすごく嬉しくて、ましてやその相手が大好きな奏芽さんだと思うと心がほかほかと心地よかったです!
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