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お母さんの秘密
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実家――市営住宅――近くのコインパーキングに車を入れて、徒歩で304号室を目指す。
奏芽さんの手には、お母さんの好みに合わせてあらかじめ2人で買っておいた焼き菓子の詰め合わせが入った紙袋が握られている。
約束の時間の10分前にチャイムを鳴らして、お母さんに出迎えてもらって――。
玄関先で軽く挨拶を済ませてから中に通された。
小さい頃から住み慣れたはずのこの家が、奏芽さんがいらっしゃるというだけで異空間みたいに感じられて変に緊張してしまう。
お母さんが淹れてくれたコーヒーを前に、お母さんの正面に奏芽さん、奏芽さんの左隣に私、という席順で座った。
みんな正座をして畏っていて……壁にかかった時計の秒針が時を刻む、カチカチという音がやけに大きく聞こえて。
そんななか、最初に沈黙を破ったのは奏芽さんだった。
「初めまして。凜子さんとお付き合いさせて頂いています鳥飼奏芽と申します。父が院長をしている小児科で副院長をさせていただいています」
と。
緊張していると、車の中で私を抱きしめてくれた奏芽さんだったけれど、今こうやって自己紹介をなさった彼を見ると、全然物怖じしているようには思えなくて。
ピンと伸ばされた背筋と、真っ直ぐにお母さんを見つめる視線が、本当にかっこいいなって思ったの。
奏芽さんの言葉に、お母さんが「ってことは……鳥飼さんは小児科医でいらっしゃるの?」と問いかけて。
食いつくの、職業!?
奏芽さんが「はい」とうなずくと、心底驚いたように私を見るの。
「小児科の先生がうちの凜子とどうやって――?」
ああ、そう言うことか。
最後までは言われなかったけれど、馴れ初めを聞かれているんだって思った。
確かに内科の先生や外科のお医者様ならまだしも、私もさすがに小児科に通う年齢ではない。
実際は鳥飼小児科医院には大人の患者さんも結構いらっしゃるのだけれど……それは例えばお子さんを診ていただくついでに親御さんが、とか……幼い頃に通っていた延長で、とか……そういう感じで。
新規での大人の患者さんというのはほとんどいない。
お母さんが不思議に思うのも無理はないなって思ったの。
実家――市営住宅――近くのコインパーキングに車を入れて、徒歩で304号室を目指す。
奏芽さんの手には、お母さんの好みに合わせてあらかじめ2人で買っておいた焼き菓子の詰め合わせが入った紙袋が握られている。
約束の時間の10分前にチャイムを鳴らして、お母さんに出迎えてもらって――。
玄関先で軽く挨拶を済ませてから中に通された。
小さい頃から住み慣れたはずのこの家が、奏芽さんがいらっしゃるというだけで異空間みたいに感じられて変に緊張してしまう。
お母さんが淹れてくれたコーヒーを前に、お母さんの正面に奏芽さん、奏芽さんの左隣に私、という席順で座った。
みんな正座をして畏っていて……壁にかかった時計の秒針が時を刻む、カチカチという音がやけに大きく聞こえて。
そんななか、最初に沈黙を破ったのは奏芽さんだった。
「初めまして。凜子さんとお付き合いさせて頂いています鳥飼奏芽と申します。父が院長をしている小児科で副院長をさせていただいています」
と。
緊張していると、車の中で私を抱きしめてくれた奏芽さんだったけれど、今こうやって自己紹介をなさった彼を見ると、全然物怖じしているようには思えなくて。
ピンと伸ばされた背筋と、真っ直ぐにお母さんを見つめる視線が、本当にかっこいいなって思ったの。
奏芽さんの言葉に、お母さんが「ってことは……鳥飼さんは小児科医でいらっしゃるの?」と問いかけて。
食いつくの、職業!?
奏芽さんが「はい」とうなずくと、心底驚いたように私を見るの。
「小児科の先生がうちの凜子とどうやって――?」
ああ、そう言うことか。
最後までは言われなかったけれど、馴れ初めを聞かれているんだって思った。
確かに内科の先生や外科のお医者様ならまだしも、私もさすがに小児科に通う年齢ではない。
実際は鳥飼小児科医院には大人の患者さんも結構いらっしゃるのだけれど……それは例えばお子さんを診ていただくついでに親御さんが、とか……幼い頃に通っていた延長で、とか……そういう感じで。
新規での大人の患者さんというのはほとんどいない。
お母さんが不思議に思うのも無理はないなって思ったの。
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