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お母さんの秘密
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うちの実家まで新幹線で約50分。
奏芽さんは「そんなに遠くないし、車で行こうぜ」とおっしゃって。
車だとどのくらい時間がかかるんだろうって調べてみたら、高速を使っても2~3時間って出て。
「これ、絶対新幹線の方が楽じゃないですか?」ってお聞きしたら、奏芽さんってば「ふたりきりでのんびり行きたいんだよ、俺は」って言うの。
私が免許を持っていて、途中で運転を交代することが出来るならまだしもそれは無理だし、奏芽さんにばかり往復の道中ご負担をおかけすると思うと心配で堪らなくて。
どんなに奏芽さんに「そのくらい何てことないから」と言われても、私、納得できなかったの。
結局、奏芽さんが大幅に折れた形の折衷案で、新幹線とレンタカーを組み合わせるプランで行くことになりました。
奏芽さんも私も、病院の休み自体が木曜と日曜しかないから。とりあえず土曜の仕事後すぐに家を出て、タクシーで新幹線の駅へ向かったの。
そこからうちの実家の最寄り駅までは新幹線に乗って移動。あちらで駅に付随したレンタカーショップで予め手配しておいた車――アクセラ――に乗り換えて。
今まさにホテルに向かって移動中です。
とりあえず今夜はホテルで一泊してから、明朝11時頃にうちの実家へ顔を出すことになっています。
「凜子は実家に泊まってもいいんだぞ?」
ギリギリまで奏芽さんにそう言われたけれど、私は彼と離れたくなくて、「一緒にホテルがいいです」と言い張って。
移動方法にしてもそうだったけれど、今回私は奏芽さんにわがままばかり言っています。
なのに奏芽さんは結局私の意思を尊重してくださるの。
「わがままで……すみません」
もしかしたら奏芽さん、今夜ぐらいは私から離れてゆっくりしたかったのかもしれない。
ホテルの部屋に入ってすぐ、恐る恐るそう言ったら「俺も出来た人間じゃないからな。本当に嫌なら突っぱねてるよ」って頭を軽くぽんぽんと撫でられた。
そのあとギュッと抱きしめられて、
「それに――正直な話、俺も凜子と離れたくなかったから……」
一応大人の余裕を見せようと、実家に戻ってもって言ったけど、本心は違ったからなって私の顔を胸に押し付けたまま言うの。
私はそれを言う奏芽さんのお顔が見たいのに、後頭部をギュッと押さえられていて上向かせてもらえなくて。
きっと恥ずかしくて照れていらっしゃるんだろうなと思う。奏芽さんは気付いていないのかもしれないけれど、胸に押し当てられているから私、奏芽さんの心臓がドキドキいってるの、知ってるの。
「奏芽さん、大好きです……」
小さくつぶやくように言ったら、「それ、俺のセリフな?」って、抑えめな低音ボイスでささやくように返された。
奏芽さんは「そんなに遠くないし、車で行こうぜ」とおっしゃって。
車だとどのくらい時間がかかるんだろうって調べてみたら、高速を使っても2~3時間って出て。
「これ、絶対新幹線の方が楽じゃないですか?」ってお聞きしたら、奏芽さんってば「ふたりきりでのんびり行きたいんだよ、俺は」って言うの。
私が免許を持っていて、途中で運転を交代することが出来るならまだしもそれは無理だし、奏芽さんにばかり往復の道中ご負担をおかけすると思うと心配で堪らなくて。
どんなに奏芽さんに「そのくらい何てことないから」と言われても、私、納得できなかったの。
結局、奏芽さんが大幅に折れた形の折衷案で、新幹線とレンタカーを組み合わせるプランで行くことになりました。
奏芽さんも私も、病院の休み自体が木曜と日曜しかないから。とりあえず土曜の仕事後すぐに家を出て、タクシーで新幹線の駅へ向かったの。
そこからうちの実家の最寄り駅までは新幹線に乗って移動。あちらで駅に付随したレンタカーショップで予め手配しておいた車――アクセラ――に乗り換えて。
今まさにホテルに向かって移動中です。
とりあえず今夜はホテルで一泊してから、明朝11時頃にうちの実家へ顔を出すことになっています。
「凜子は実家に泊まってもいいんだぞ?」
ギリギリまで奏芽さんにそう言われたけれど、私は彼と離れたくなくて、「一緒にホテルがいいです」と言い張って。
移動方法にしてもそうだったけれど、今回私は奏芽さんにわがままばかり言っています。
なのに奏芽さんは結局私の意思を尊重してくださるの。
「わがままで……すみません」
もしかしたら奏芽さん、今夜ぐらいは私から離れてゆっくりしたかったのかもしれない。
ホテルの部屋に入ってすぐ、恐る恐るそう言ったら「俺も出来た人間じゃないからな。本当に嫌なら突っぱねてるよ」って頭を軽くぽんぽんと撫でられた。
そのあとギュッと抱きしめられて、
「それに――正直な話、俺も凜子と離れたくなかったから……」
一応大人の余裕を見せようと、実家に戻ってもって言ったけど、本心は違ったからなって私の顔を胸に押し付けたまま言うの。
私はそれを言う奏芽さんのお顔が見たいのに、後頭部をギュッと押さえられていて上向かせてもらえなくて。
きっと恥ずかしくて照れていらっしゃるんだろうなと思う。奏芽さんは気付いていないのかもしれないけれど、胸に押し当てられているから私、奏芽さんの心臓がドキドキいってるの、知ってるの。
「奏芽さん、大好きです……」
小さくつぶやくように言ったら、「それ、俺のセリフな?」って、抑えめな低音ボイスでささやくように返された。
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