143 / 283
奏芽の覚悟
7
しおりを挟む
***
「――?」
見慣れた白のボルボの横に長身の男性が立っていて。
外はすっかり夜の闇の中。
でも、街灯やAria店内からの明かりで駐車場の敷地内はそれなりに明るくて。
道路をひっきりなしに行き交う車からのヘッドライトの灯りもあるので、モノの姿形はもちろん、色彩まで割としっかり視認出来るのだけど……。
思わずフリーズした私の手を、四季ちゃんが引っ張る。
「鳥飼さん、雰囲気変わったね」
言われて、やはりあれは奏芽さんで間違いないんだよね?と思った。
分かっているのに戸惑いで身動きが取れない私に、先に動いたのは奏芽さんだった。
「凜子、平気か?」
奏芽さんは恐る恐るといった風に私に触れようとして……躊躇うみたいに寸前でその手を止めた。
「――驚かせちまってすまん。イメチェンしたんだ」
って……変わりすぎ……です……。
出会った時から男性にしては長めの髪を、キラキラと光を跳ね返すような鮮やかな金色に染めていた奏芽さんが……。
今は濃いめのブルー系統の、パッと見は黒にしか見えない落ち着いた髪色にしていらして。
いわゆる〝黒染め〟をしたんだと一目で分かった。
そればかりか……。
「……」
奏芽さんのあまりの激変ぶりに、何て言ったらいいのか分からなくてただただ戸惑って固まってしまった私の反応に、四季ちゃんが奏芽さんの変化、私も今まさに初見なのだと思い至ったみたい。
何も言わずに彼が私に話しかけるのを見守ってくれている。
***
「ごめんな、片山さん。凜子もコレ見んの、初めてなんだ」
奏芽さんがそんな四季ちゃんを気遣って、自分の横髪に触れながらそう言って――。
奏芽さん、髪色だけじゃなくてかなり大胆にカットもしてらして……後ろの方なんて結べそうなほど長かったのに、今は到底そんなことできそうにないの。
ともすると奏芽さんの親友の霧島さんに近い長さで。
私立の小学校で教師をしていらっしゃる霧島さんと同じくらい――それこそ襟足が生え際あたりまで短くなった奏芽さんを、私は今まで見たことがない。
奏芽さん、急にどうしちゃったの?
***
「あ、私は大丈夫です。あの、車、見せてもらってても構いませんか?」
四季ちゃんもそれを察したみたいに奏芽さんの愛車を指さすの。
奏芽さんはそれにホッとしたみたいに「もちろん。何なら先に乗っててくれても構わねぇよ」って四季ちゃんに鍵を手渡した。
「――?」
見慣れた白のボルボの横に長身の男性が立っていて。
外はすっかり夜の闇の中。
でも、街灯やAria店内からの明かりで駐車場の敷地内はそれなりに明るくて。
道路をひっきりなしに行き交う車からのヘッドライトの灯りもあるので、モノの姿形はもちろん、色彩まで割としっかり視認出来るのだけど……。
思わずフリーズした私の手を、四季ちゃんが引っ張る。
「鳥飼さん、雰囲気変わったね」
言われて、やはりあれは奏芽さんで間違いないんだよね?と思った。
分かっているのに戸惑いで身動きが取れない私に、先に動いたのは奏芽さんだった。
「凜子、平気か?」
奏芽さんは恐る恐るといった風に私に触れようとして……躊躇うみたいに寸前でその手を止めた。
「――驚かせちまってすまん。イメチェンしたんだ」
って……変わりすぎ……です……。
出会った時から男性にしては長めの髪を、キラキラと光を跳ね返すような鮮やかな金色に染めていた奏芽さんが……。
今は濃いめのブルー系統の、パッと見は黒にしか見えない落ち着いた髪色にしていらして。
いわゆる〝黒染め〟をしたんだと一目で分かった。
そればかりか……。
「……」
奏芽さんのあまりの激変ぶりに、何て言ったらいいのか分からなくてただただ戸惑って固まってしまった私の反応に、四季ちゃんが奏芽さんの変化、私も今まさに初見なのだと思い至ったみたい。
何も言わずに彼が私に話しかけるのを見守ってくれている。
***
「ごめんな、片山さん。凜子もコレ見んの、初めてなんだ」
奏芽さんがそんな四季ちゃんを気遣って、自分の横髪に触れながらそう言って――。
奏芽さん、髪色だけじゃなくてかなり大胆にカットもしてらして……後ろの方なんて結べそうなほど長かったのに、今は到底そんなことできそうにないの。
ともすると奏芽さんの親友の霧島さんに近い長さで。
私立の小学校で教師をしていらっしゃる霧島さんと同じくらい――それこそ襟足が生え際あたりまで短くなった奏芽さんを、私は今まで見たことがない。
奏芽さん、急にどうしちゃったの?
***
「あ、私は大丈夫です。あの、車、見せてもらってても構いませんか?」
四季ちゃんもそれを察したみたいに奏芽さんの愛車を指さすの。
奏芽さんはそれにホッとしたみたいに「もちろん。何なら先に乗っててくれても構わねぇよ」って四季ちゃんに鍵を手渡した。
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる