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気のせい?
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「谷本くん?」
その様子が何だか心をざわつかせて、思わず呼びかけたら「いや、俺の気のせいかもしれないんだけど、一瞬だけ見えたあの人の横顔、すっごい笑って見えたんだよね。それが何か不気味で気になっちゃって……向井さんに声かけたんだけど――」とか。
谷本くんのその言葉に、私は言いようのない不安にかられてゾクッとしてしまった。
「笑ってらしたのって、見間違いとかじゃ……」
ややして自分が安心したくてそう言ったら「うん、そうかもしれないし、そうだといいなって思うんだけど……やっぱり気味悪いし、一応気をつけて。――取り急ぎ今日は帰り、お迎えある?」
心底心配そうに聞かれて、私は小さくうなずいた。
「あ、はい。大丈夫です」
奏芽さんがバイトの終わりの時間を聞いてきてくれたから、多分。
***
“駐車場で待ってる”
21時過ぎに予定通りバイトを終えて携帯を確認したら、奏芽さんからメッセージが入っていた。
言われなくても駐車場に彼の車が入ってきたの、店内から見て知ってる。
思わず顔がほころんで、谷本くんに「幸せそうで何より」ってからかわれてしまった。
「えっ」
その声に思わず谷本くんを見つめたら、「顔、にやけてたよ」って自分の口元をちょんちょん、と指し示された。
思わず両手で口元を隠したら「彼氏できてからの向井さん、すごくいい顔するようになった! 元々美人だなって思ってたけど……最近は少し角が取れて話しかけやすくなったし」ってにっこり微笑まれた。
話しかけやすくも何も、結構谷本くんは奏芽さんとお付き合いする前から話しかけてくれてた気がするんだけどな?
そう思って見つめ返したら「だからっ。その目で俺を見るのやめてってば。マジしんどいっ」って慌てて顔を背けられてしまった。
何のことか分からなくてキョトンとしてから、“艶めいた目”というキーワードが頭に浮かんでハッとする。
そのつもりなんて全くないのに……どう気をつければいいの?
思っていたら「その様子だと今日はちゃんとお迎えありだよね?」って確認されて。
「あ、はいっ」
慌てて答えたら「じゃ、安心だ。お疲れ様。また明日ね」ってひらひらと手を振られた。
「お、お疲れ様ですつ」
慌てて頭を下げて谷本くんを見送ってから、「私も早く帰ろう」って思う。
奏芽さんと会えると思うと、それだけで気持ちがふわりと浮ついた。
その様子が何だか心をざわつかせて、思わず呼びかけたら「いや、俺の気のせいかもしれないんだけど、一瞬だけ見えたあの人の横顔、すっごい笑って見えたんだよね。それが何か不気味で気になっちゃって……向井さんに声かけたんだけど――」とか。
谷本くんのその言葉に、私は言いようのない不安にかられてゾクッとしてしまった。
「笑ってらしたのって、見間違いとかじゃ……」
ややして自分が安心したくてそう言ったら「うん、そうかもしれないし、そうだといいなって思うんだけど……やっぱり気味悪いし、一応気をつけて。――取り急ぎ今日は帰り、お迎えある?」
心底心配そうに聞かれて、私は小さくうなずいた。
「あ、はい。大丈夫です」
奏芽さんがバイトの終わりの時間を聞いてきてくれたから、多分。
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言われなくても駐車場に彼の車が入ってきたの、店内から見て知ってる。
思わず顔がほころんで、谷本くんに「幸せそうで何より」ってからかわれてしまった。
「えっ」
その声に思わず谷本くんを見つめたら、「顔、にやけてたよ」って自分の口元をちょんちょん、と指し示された。
思わず両手で口元を隠したら「彼氏できてからの向井さん、すごくいい顔するようになった! 元々美人だなって思ってたけど……最近は少し角が取れて話しかけやすくなったし」ってにっこり微笑まれた。
話しかけやすくも何も、結構谷本くんは奏芽さんとお付き合いする前から話しかけてくれてた気がするんだけどな?
そう思って見つめ返したら「だからっ。その目で俺を見るのやめてってば。マジしんどいっ」って慌てて顔を背けられてしまった。
何のことか分からなくてキョトンとしてから、“艶めいた目”というキーワードが頭に浮かんでハッとする。
そのつもりなんて全くないのに……どう気をつければいいの?
思っていたら「その様子だと今日はちゃんとお迎えありだよね?」って確認されて。
「あ、はいっ」
慌てて答えたら「じゃ、安心だ。お疲れ様。また明日ね」ってひらひらと手を振られた。
「お、お疲れ様ですつ」
慌てて頭を下げて谷本くんを見送ってから、「私も早く帰ろう」って思う。
奏芽さんと会えると思うと、それだけで気持ちがふわりと浮ついた。
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