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気のせい?
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「その――さっきの質問だけど……変じゃないとは言わないよ。健全な男なら好きな女の子前にして抱きたいと思わないとかないだろうし。けど……向井さんのそういう色っぽい表情を見ても何もしてこないんだとしたら……君の彼氏は相当忍耐力があると……思う。――でなきゃ、EDだ」
「いっ!?」
ついでのように付け加えらえた言葉に、私は思わず瞳を見開いてしまった。
「ま、向井さんの彼は多分前者だと思うよ」
谷本くんは硬直した私をほぐすように「ほら、あの人、ゴム、よく買ってたし不能ってことは……」と何でもないことのように言って、ハッとしたように「ごめん」って視線をそらすの。
***
「――で、向井さん、誕生日いつ?」
場の空気を切り替えるように不意に問われて、「し、4月です」って答えたら、「あと3ヶ月か。結構長いね」って言われた。
うん、長い、……よね。きっと。
***
奏芽さんは付き合い始めてすぐ、「説得力ねぇかも知んねーけど、凜子が10代の間は俺、手ぇ出すつもりねぇから」って、改めて宣言して――。
キスだってあんな大人のキスをされたのは付き合うことになったあの日――奏芽さんがのぶちゃんに嫉妬した時だけ。
私はあれからずっと、あの日のことを思い出すたびに身体が熱を帯びてしんどいのに……。
奏芽さんは……平気なの?
***
クリスマスも、一緒に“あまみや”の個室でディナーを食べて、そのあと初めて奏芽さんのお家にお泊まりにだって行ったのに……。
奏芽さんは私をずっとひざの間に座らせて後ろから抱きしめるだけで何にもしてこなかったの。
「あ、あのっ」
私の方が我慢できなくなって、思わず後方の奏芽さんを振り仰いだら、「そうだ凜子。ピアノ弾いてやるよ」ってスッとかわされてしまった。
そこからは奏芽さんのマンションの防音室で、彼が弾くクリスマスの定番ソングや、賛美歌などを何曲か聴いて。
家にグランドピアノがあることにも驚いたけれど、それを奏芽さんが自在に演奏する姿にも私、すごくすごく驚かされた。
試しに私が「ワムのラストクリスマスが聴きたいです」って言った時も、奏芽さん、何でもないことみたいに「OK」って言って、楽譜もなしに弾いてくれて。
彼、どうやら聴いた音をピアノで再現できちゃうみたいなんだけど、音楽に疎い私にはそう言うことが出来てしまえる奏芽さんがただただすごいとしか思えなくて。
「母親がな、ピアノの先生だったから」
小さい頃からピアノには慣れ親しんでいたし、見た目とのギャップがいいのか、弾くと女の子たちに好評でさ、俺もつい夢中になっちまって……とニヤリと笑うの。
そんな奏芽さんに、私はどうしようもなくイライラしてしまった。
「いっ!?」
ついでのように付け加えらえた言葉に、私は思わず瞳を見開いてしまった。
「ま、向井さんの彼は多分前者だと思うよ」
谷本くんは硬直した私をほぐすように「ほら、あの人、ゴム、よく買ってたし不能ってことは……」と何でもないことのように言って、ハッとしたように「ごめん」って視線をそらすの。
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「――で、向井さん、誕生日いつ?」
場の空気を切り替えるように不意に問われて、「し、4月です」って答えたら、「あと3ヶ月か。結構長いね」って言われた。
うん、長い、……よね。きっと。
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奏芽さんは付き合い始めてすぐ、「説得力ねぇかも知んねーけど、凜子が10代の間は俺、手ぇ出すつもりねぇから」って、改めて宣言して――。
キスだってあんな大人のキスをされたのは付き合うことになったあの日――奏芽さんがのぶちゃんに嫉妬した時だけ。
私はあれからずっと、あの日のことを思い出すたびに身体が熱を帯びてしんどいのに……。
奏芽さんは……平気なの?
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クリスマスも、一緒に“あまみや”の個室でディナーを食べて、そのあと初めて奏芽さんのお家にお泊まりにだって行ったのに……。
奏芽さんは私をずっとひざの間に座らせて後ろから抱きしめるだけで何にもしてこなかったの。
「あ、あのっ」
私の方が我慢できなくなって、思わず後方の奏芽さんを振り仰いだら、「そうだ凜子。ピアノ弾いてやるよ」ってスッとかわされてしまった。
そこからは奏芽さんのマンションの防音室で、彼が弾くクリスマスの定番ソングや、賛美歌などを何曲か聴いて。
家にグランドピアノがあることにも驚いたけれど、それを奏芽さんが自在に演奏する姿にも私、すごくすごく驚かされた。
試しに私が「ワムのラストクリスマスが聴きたいです」って言った時も、奏芽さん、何でもないことみたいに「OK」って言って、楽譜もなしに弾いてくれて。
彼、どうやら聴いた音をピアノで再現できちゃうみたいなんだけど、音楽に疎い私にはそう言うことが出来てしまえる奏芽さんがただただすごいとしか思えなくて。
「母親がな、ピアノの先生だったから」
小さい頃からピアノには慣れ親しんでいたし、見た目とのギャップがいいのか、弾くと女の子たちに好評でさ、俺もつい夢中になっちまって……とニヤリと笑うの。
そんな奏芽さんに、私はどうしようもなくイライラしてしまった。
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