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前言撤回
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言って、当たり前のように私の横に腰掛ける奏芽さんに、私はドキッとしてしまう。
思わず条件反射で立ち上がったら、膝に載せていたお弁当が地面に落っこちてしまった。
「あっ」
って叫んだ時には遅くて……。
中身、全部地面にこぼれてしまっていた。
慌てて拾ってみたけど砂とか沢山付いていて食べられそうになくて。
私のお昼ご飯……。
しゅん、としていたら奏芽さんが買ってきたばかりのハンバーガーセットを目の前に突き出してきた。
「これ。びっくりさせたお詫び、な?」
言って、お弁当の残骸の前にしゃがみ込んだ私の頭をクシャリと撫でると、「そんな落ち込むなって」とヨシヨシしてくれる。
いつもなら「やめて!」って跳ね除けるところなのに、ショックで凹んでいたからかな。
そんな気にもなれなくて……そのまま彼に頭を撫でられる。
「なあ、代わりに俺、こっちもらっていい?」
奏芽さんが地面に落っこちた泥まみれのおにぎりなどを、お弁当箱の中に納めて風呂敷で包み直す。
「え、でも……」
そんな泥だらけの食べられないのにどうするの? そう思って戸惑いながら奏芽さんの手から包みを取ろうとしたら、「弁当箱はすぐ返すから」って引っ込められてしまった。
「でも……奏芽さんのお昼……」
困惑しながら言ったら、「俺は大丈夫だって。凜子と違って講義受けなきゃいけないわけじゃねぇし、また学食行けばいいだけだろ? 凜子は時間制限あんだからとりあえず食え」って言われて。
この人は冷たいんだか優しいんだか本当によく分からない。
でもこの感じ……。私、何となく知ってる。
「奏芽さん、弟さんか妹さん、いるでしょ?」
その思いは半ば確信に近い。
だって、のぶちゃんが私に小さい頃あれこれしてくれていたそれに似てる。
「なに、凜子、エスパーか何かなの?」
奏芽さんがクスクス笑って、私も今朝、貴方に同じことを思ったのよ、って思ってつられて笑ってしまった。
「この間の夜、見ただろ。ちっこい女の子」
私の手から学食の紙袋を取り上げると、中身を出して手渡してくれながら、奏芽さんが言う。
「……えっと、和音、ちゃん?」
ハンバーガーを受け取りながら言ったら「よく覚えてんじゃん。そう、和音」って言って。
「あれ、俺の妹の娘」
何でもないことのようにさらりと言った。
「えっ? ……妹さんのっ!?」
ハンバーガーを手にしたまま、驚きのあまり大声でそう叫んで奏芽さんを見つめたら「ちょっ、まさか凜子。和音のこと俺の娘とか思ってたわけじゃ!?」って慌てるの。
ごめんなさい、顔立ちも似てたし……絶対そうだと勝手に思ってました。
思わず条件反射で立ち上がったら、膝に載せていたお弁当が地面に落っこちてしまった。
「あっ」
って叫んだ時には遅くて……。
中身、全部地面にこぼれてしまっていた。
慌てて拾ってみたけど砂とか沢山付いていて食べられそうになくて。
私のお昼ご飯……。
しゅん、としていたら奏芽さんが買ってきたばかりのハンバーガーセットを目の前に突き出してきた。
「これ。びっくりさせたお詫び、な?」
言って、お弁当の残骸の前にしゃがみ込んだ私の頭をクシャリと撫でると、「そんな落ち込むなって」とヨシヨシしてくれる。
いつもなら「やめて!」って跳ね除けるところなのに、ショックで凹んでいたからかな。
そんな気にもなれなくて……そのまま彼に頭を撫でられる。
「なあ、代わりに俺、こっちもらっていい?」
奏芽さんが地面に落っこちた泥まみれのおにぎりなどを、お弁当箱の中に納めて風呂敷で包み直す。
「え、でも……」
そんな泥だらけの食べられないのにどうするの? そう思って戸惑いながら奏芽さんの手から包みを取ろうとしたら、「弁当箱はすぐ返すから」って引っ込められてしまった。
「でも……奏芽さんのお昼……」
困惑しながら言ったら、「俺は大丈夫だって。凜子と違って講義受けなきゃいけないわけじゃねぇし、また学食行けばいいだけだろ? 凜子は時間制限あんだからとりあえず食え」って言われて。
この人は冷たいんだか優しいんだか本当によく分からない。
でもこの感じ……。私、何となく知ってる。
「奏芽さん、弟さんか妹さん、いるでしょ?」
その思いは半ば確信に近い。
だって、のぶちゃんが私に小さい頃あれこれしてくれていたそれに似てる。
「なに、凜子、エスパーか何かなの?」
奏芽さんがクスクス笑って、私も今朝、貴方に同じことを思ったのよ、って思ってつられて笑ってしまった。
「この間の夜、見ただろ。ちっこい女の子」
私の手から学食の紙袋を取り上げると、中身を出して手渡してくれながら、奏芽さんが言う。
「……えっと、和音、ちゃん?」
ハンバーガーを受け取りながら言ったら「よく覚えてんじゃん。そう、和音」って言って。
「あれ、俺の妹の娘」
何でもないことのようにさらりと言った。
「えっ? ……妹さんのっ!?」
ハンバーガーを手にしたまま、驚きのあまり大声でそう叫んで奏芽さんを見つめたら「ちょっ、まさか凜子。和音のこと俺の娘とか思ってたわけじゃ!?」って慌てるの。
ごめんなさい、顔立ちも似てたし……絶対そうだと勝手に思ってました。
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