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前言撤回
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「間に合って良かったじゃん」
奏芽さんはニヤリと笑ってそう言うと、びっくりするぐらいあっさりと手を振って、一緒に乗ってきたタクシーから一歩も降りることなく私の前から姿を消してしまった。
その態度は本当、拍子抜けしてしまうぐらいに呆気なくて。
それって私にとっては願ったり叶ったりだったはずでしょ?
なのに一緒に降りるとか妙なわがままを言われて食い下がられなかったことに、逆に妙な違和感を感じて居心地が悪いとか……正気じゃないよ、凜子。
私自身、結局車内であの女の子――和音ちゃん?――のこと、気になってたくせに聞けなかったし……奏芽さん自身からも何の弁解もなかった。
ん? 弁解?
そこまで考えて、何で彼が私にそんなことしないといけないの?ってハッとした。
私、奏芽さんに、そんなことを求めるような間柄じゃない。
付き合おうって軽いノリで言われたけれど、OKしたわけじゃないし、何より私、不倫はしたくない。
彼の私生活に深く踏み込むつもりのない私に、奏芽さんだって自分の対人関係諸々について、あれこれ説明する義務はないはずで。
私、本当にどうしちゃったんだろう。
自分でも自分の思考回路が意味不明過ぎて戸惑ってしまう。
こういう説明のつかない状態、すごく気持ち悪い。
いつの間に私、あの人にこんなに心かき乱されてしまうようになったの?
***
せっかく頑張って講義に間に合うように教室に入ったのに。
ちっとも教授の話が頭に入ってこなかった。
お昼休み。
作ってきたお弁当を木陰のベンチに座って食べようと、ベンチ近くの手洗い場でポケットからハンカチを取り出したら、朝タクシーの中で奏芽さんから返されたヘアゴムがハンカチと一緒にまろび出て地面に落ちた。
それを拾い上げながら小さく溜め息をつく。
ふと顔を上げると車内で奏芽さんに話したアガパンサスが目に入った。
私の精神状態がどうであろうと、花は変わらず美しく咲き誇っている。
私もあんな風に凛としていられたら。
そんなことを考えて、名前負けしてるなぁって思ってしまう。
地味子で要領の悪い私は、大学生活スタートから2ヶ月ちょっと経つけれど、一緒にお昼を食べられるようなお友達が出来ていない。
話しかければみんな話してくれるけれど、用がすんだらスーッと私のそばから離れていってしまう感じで……未だに誰とも仲良くなれていない。
すでにみんな仲良しグループを形成してしまった今となっては完全に出遅れた感じで……お友達作り、つまずいてしまったと言っても過言ではないと思う。
もともと子供の頃からそんな感じだったし、今更それを取り立てて辛いとは思わないけれど……。
今日みたいに馬鹿なことを考える日は少しだけ人恋しくあったりもして。
奏芽さんはニヤリと笑ってそう言うと、びっくりするぐらいあっさりと手を振って、一緒に乗ってきたタクシーから一歩も降りることなく私の前から姿を消してしまった。
その態度は本当、拍子抜けしてしまうぐらいに呆気なくて。
それって私にとっては願ったり叶ったりだったはずでしょ?
なのに一緒に降りるとか妙なわがままを言われて食い下がられなかったことに、逆に妙な違和感を感じて居心地が悪いとか……正気じゃないよ、凜子。
私自身、結局車内であの女の子――和音ちゃん?――のこと、気になってたくせに聞けなかったし……奏芽さん自身からも何の弁解もなかった。
ん? 弁解?
そこまで考えて、何で彼が私にそんなことしないといけないの?ってハッとした。
私、奏芽さんに、そんなことを求めるような間柄じゃない。
付き合おうって軽いノリで言われたけれど、OKしたわけじゃないし、何より私、不倫はしたくない。
彼の私生活に深く踏み込むつもりのない私に、奏芽さんだって自分の対人関係諸々について、あれこれ説明する義務はないはずで。
私、本当にどうしちゃったんだろう。
自分でも自分の思考回路が意味不明過ぎて戸惑ってしまう。
こういう説明のつかない状態、すごく気持ち悪い。
いつの間に私、あの人にこんなに心かき乱されてしまうようになったの?
***
せっかく頑張って講義に間に合うように教室に入ったのに。
ちっとも教授の話が頭に入ってこなかった。
お昼休み。
作ってきたお弁当を木陰のベンチに座って食べようと、ベンチ近くの手洗い場でポケットからハンカチを取り出したら、朝タクシーの中で奏芽さんから返されたヘアゴムがハンカチと一緒にまろび出て地面に落ちた。
それを拾い上げながら小さく溜め息をつく。
ふと顔を上げると車内で奏芽さんに話したアガパンサスが目に入った。
私の精神状態がどうであろうと、花は変わらず美しく咲き誇っている。
私もあんな風に凛としていられたら。
そんなことを考えて、名前負けしてるなぁって思ってしまう。
地味子で要領の悪い私は、大学生活スタートから2ヶ月ちょっと経つけれど、一緒にお昼を食べられるようなお友達が出来ていない。
話しかければみんな話してくれるけれど、用がすんだらスーッと私のそばから離れていってしまう感じで……未だに誰とも仲良くなれていない。
すでにみんな仲良しグループを形成してしまった今となっては完全に出遅れた感じで……お友達作り、つまずいてしまったと言っても過言ではないと思う。
もともと子供の頃からそんな感じだったし、今更それを取り立てて辛いとは思わないけれど……。
今日みたいに馬鹿なことを考える日は少しだけ人恋しくあったりもして。
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