【完結】【R18】私のおさげをほどかないで!

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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大嫌いな常連客

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 私より6つ上の彼は、今や立派な社会人。

 公立の小学校で先生をやっている彼――本間ほんま信昭のぶあき――に憧れて、私は大学で学校の先生を目指して日夜勉学に励んでいると言っても過言ではない。

 生活費の足しにしたくてアパート近くのコンビニでバイトはしているけれど、それ以外はちゃんと真面目に勉強しているの。

 それもこれも、憧れの人の背中に少しでも近づきたかったから。

(のぶちゃん、会えてないけど元気かな……)

 とか考えていたら、眼前の最低男が、頬に触れていた手を髪に移動させてグイッとおさげを引っ張り上げてきた。

「痛いっ!」

 未だ触れたままだった彼の手にギュッと力を込めて抗議の声を発したら、「、今、別の男のこと考えてただろ?」って睨まれる。

 私の何をそんなに気に入ってくれたのか分からないけれど、ひとつだけ言えることがある――。

「そんなのあなたには関係ないっ」

 そもそも名前を呼び捨てにされる覚えなんてない。

「なぁ、今、凜子の前にいるのは誰だ?」

 私の抗議なんて聞く耳を持たないみたいに、自分の言いたいことをガンガン押し付けてくる彼がすごく苦手。
 嫌で嫌でたまらないのに、私は何故か気がつくといつも彼のペースに巻き込まれてしまっている。

「あなただけど……」
「名前」

 あなた、と呼んだら再度おさげを引っ張られて名を呼べ、と要求された。

「と、鳥飼とりかいさん」
 ちゃんと要求通り言ってあげたのに、盛大な溜め息をつかれた。

凜子りんこ鳥飼とりかいはうちの一族みんなの称号な? 俺は呼べって言ってんだけど?」

 言われて、キョトンとしてしまう。

 チャラチャラしているくせに、変なところにこだわるんだなっておかしくなった。
 一族の名前だろうと何だろうと、私の周りにいる鳥飼とりかいさんは眼前の彼だけなんだけどな?
 私がそれ想定であなたを指して「鳥飼さん」って呼ぶんじゃ、ダメなの?

 ああ、だからか。
 だからこの人は私の下の名前をあんなに執拗に知りたがったのね。
 自分に対してそう思うってことは、多分他者に対してもそう。
 私は「向井」って呼ばれるんで一向に構わないのに、変な人。
 そう思ったら急にストンとあれこれが腑に落ちて、パズルのピースが全部揃ったみたいな爽快感を覚えた。

 曲がったことが嫌いな私は、こんなふうに理由付けが得られると妙に安心してしまう。

 自分でも難儀な性格だなって思うけど、それが私なんだから仕方ない。

 私の目の前にいる彼同様、私も見た目に見合った性格の、四角四面な面白味のない女です。
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