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(21)ふたりで一緒に暮らしたい
タチの悪い女
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***
『前に信武が茉莉奈さんと打ち合わせをしてた喫茶店があるでしょ? 私の職場近くの――』
『喫茶まちかど?』
『そう、そこ! 私、あそこに行くの、ずっと憧れてたんだけど一人じゃどうしても敷居が高く感じられて行けてなくて。そう話したら茉莉奈さんが一緒にランチ行こうって誘ってくれたの。今日のお昼はそこだったんだけどね、コーヒーはもちろん、ナポリタンが凄く美味しくて感動しちゃった! 信武も仕事が落ち着いたら一緒に行こうね?』
以前そんな風に日和美に語られた時には、内心(何で俺じゃなくて茉莉奈と行ったんだよ! 簡単に俺以外のやつに初めてを奪わせてんじゃねぇよ!)と思ってしまった信武だ。
それに――。
ただ単に日和美が信武以外の人間と仲良くなるというだけでも何だか腹立たしいと言うのに、茉莉奈はちょいちょい信武の仕事上の愚痴を日和美にこぼすらしく、それが何とも性質が悪いのだ。
恐らく意図的に日和美から信武へ発破を掛けさせるための茉莉奈の作戦なのだが、日和美はそんな茉莉奈の思惑なんて気付かないんだろう。
純粋に信武の仕事の進み具合を心配してくるから、信武としては物凄くやりづらい。
***
「いや、だから! お前は俺の仕事のことなんて気にしなくていいんだよ。茉莉奈の言うことはハッタリも多いし……とにかく気にすんな」
「無理! だってすっごく気になっちゃうんだもん! 私、貴方の大ファンなんだからね⁉︎」
それは萌風もふとしてはもちろんのこと、立神信武としても同等なのだと日和美が熱い視線を送ってくるから。
信武はグッと言葉に詰まってしまう。
「お、お前が! 一緒に住んでくれたら俺、すっげぇ〝ヤル気〟が湧いてくんだけどな?」
一呼吸置いて苦しまぎれ。そんな風に言ってみた信武だったのだけれど。
「前からずっとそれ言われてるけど……信武の言う〝ヤル気〟って仕事だけにかかってるように思えないから却下ね? それに……私の職場、うちのアパートからの方が近いんだよ? 信武ん家からだと距離が倍になるからイヤだ。最近梅雨入りして雨降りの日が多いし、歩く距離が伸びたら足元びしょ濡れになっちゃう!」
「そんなん! 俺が送り迎えしてやりゃー解決だろ!?」
日和美の言葉に、思わずそんな風に返してしまった信武だ。
「はいアウト! それ、本末転倒だからね⁉︎ 信武にそんな無駄な時間過ごさせたら私、ますます茉莉奈さんに合わせる顔がなくなっちゃう!」
だが即座に至極まともな反論をされて、信武は悔しまぎれ。半ば駄々っ子のように言葉を紡いだ。
「茉莉奈は俺が黙らせるし問題ねぇわ」
「いや、問題しかないでしょ! 貴方の熱烈なファンの一人としても、先生の執筆の妨げになるようなことは断固拒否します!」
日和美の意志は岩より固かった。
『前に信武が茉莉奈さんと打ち合わせをしてた喫茶店があるでしょ? 私の職場近くの――』
『喫茶まちかど?』
『そう、そこ! 私、あそこに行くの、ずっと憧れてたんだけど一人じゃどうしても敷居が高く感じられて行けてなくて。そう話したら茉莉奈さんが一緒にランチ行こうって誘ってくれたの。今日のお昼はそこだったんだけどね、コーヒーはもちろん、ナポリタンが凄く美味しくて感動しちゃった! 信武も仕事が落ち着いたら一緒に行こうね?』
以前そんな風に日和美に語られた時には、内心(何で俺じゃなくて茉莉奈と行ったんだよ! 簡単に俺以外のやつに初めてを奪わせてんじゃねぇよ!)と思ってしまった信武だ。
それに――。
ただ単に日和美が信武以外の人間と仲良くなるというだけでも何だか腹立たしいと言うのに、茉莉奈はちょいちょい信武の仕事上の愚痴を日和美にこぼすらしく、それが何とも性質が悪いのだ。
恐らく意図的に日和美から信武へ発破を掛けさせるための茉莉奈の作戦なのだが、日和美はそんな茉莉奈の思惑なんて気付かないんだろう。
純粋に信武の仕事の進み具合を心配してくるから、信武としては物凄くやりづらい。
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「いや、だから! お前は俺の仕事のことなんて気にしなくていいんだよ。茉莉奈の言うことはハッタリも多いし……とにかく気にすんな」
「無理! だってすっごく気になっちゃうんだもん! 私、貴方の大ファンなんだからね⁉︎」
それは萌風もふとしてはもちろんのこと、立神信武としても同等なのだと日和美が熱い視線を送ってくるから。
信武はグッと言葉に詰まってしまう。
「お、お前が! 一緒に住んでくれたら俺、すっげぇ〝ヤル気〟が湧いてくんだけどな?」
一呼吸置いて苦しまぎれ。そんな風に言ってみた信武だったのだけれど。
「前からずっとそれ言われてるけど……信武の言う〝ヤル気〟って仕事だけにかかってるように思えないから却下ね? それに……私の職場、うちのアパートからの方が近いんだよ? 信武ん家からだと距離が倍になるからイヤだ。最近梅雨入りして雨降りの日が多いし、歩く距離が伸びたら足元びしょ濡れになっちゃう!」
「そんなん! 俺が送り迎えしてやりゃー解決だろ!?」
日和美の言葉に、思わずそんな風に返してしまった信武だ。
「はいアウト! それ、本末転倒だからね⁉︎ 信武にそんな無駄な時間過ごさせたら私、ますます茉莉奈さんに合わせる顔がなくなっちゃう!」
だが即座に至極まともな反論をされて、信武は悔しまぎれ。半ば駄々っ子のように言葉を紡いだ。
「茉莉奈は俺が黙らせるし問題ねぇわ」
「いや、問題しかないでしょ! 貴方の熱烈なファンの一人としても、先生の執筆の妨げになるようなことは断固拒否します!」
日和美の意志は岩より固かった。
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