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(16)やましいことなんてひとつもねぇから
素直に話せ
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「……おはようございます」
日和美の要望通り、一人で寝かせてやったはずなのに、襖がずるずると緩慢に開いて、力なく朝の挨拶をしてきた彼女を見れば、物凄く顔色が悪くて。
実際信武自身も、今朝は日和美のことが気になって寝不足で頭痛がしていた。
だが、彼女の様子を見た途端、そんなこと一気に吹っ飛んでしまう。
信武は日和美におはようと返すことすら忘れて彼女に詰め寄ると、問い詰めずにはいられない。
「お前っ! 何でそんな顔色悪いんだよ! 俺、お前の言いつけを守って昨夜は別々に寝てやっただろ!? なのに何で昨日より悪化さしてんだよ。バカなのか!?」
勢い込んで喋り過ぎて、自分の声がズキッと頭に響いて。
思わず一瞬顔をしかめた信武だったけれど、日和美は日和美でそっちに目ざとく気が付くとか。
「信武さんこそ……頭が痛いんじゃないですか?」
お互い相手のことばかりを気にかけて、自分の体調については言明しない。
しばし実りのない押し問答をした二人だったけれど、最初に不調を認めたのは信武の方だった。
「ああ、お前の様子がおかしくて気になって眠れなかったからな! コンディション最悪だわ! そっちこそ何でそんなに目ぇ、泣き腫らして隈まで作ってんだよ。何が気に入らねぇ? 俺、お前になんかしたか?」
とりあえず、とソファーに日和美を座らせて。自分はそんな彼女の前にひざを折る形で視線を合わせると、信武は声のトーンを少し落とす。
「なぁ日和美。俺、鈍いから……言ってくんなきゃ分かんねぇんだよ。頼むから素直に話せ。――な?」
日和美の顔を覗き込む信武の背後。
布団が綺麗に部屋の片隅に畳まれていて、リビングは一応に使える感じになっていて。
畳まれた布団の上にはA4サイズくらいの紙袋が置かれていた。
「……じゃあ聞きますけど――。昨日の昼、信武さん、どこにいましたか?」
紙袋にちらりと視線を流した日和美が、震える声でか細く問い掛けてくるから。
信武はその様子を見て、やっと全てが繋がったように感じた。
「――なぁ日和美。お前、ひょっとして……俺があいつといたトコ、見たのか?」
どこにいたかの質問には答えず、単刀直入にそう問いかけたら、日和美がひざの上に載せていた小さな手をギュッと握りしめたのが見えて。
信武はそれを視界の端に収めるなり無言でスッと立ち上がると、日和美のそばを離れた。
日和美の要望通り、一人で寝かせてやったはずなのに、襖がずるずると緩慢に開いて、力なく朝の挨拶をしてきた彼女を見れば、物凄く顔色が悪くて。
実際信武自身も、今朝は日和美のことが気になって寝不足で頭痛がしていた。
だが、彼女の様子を見た途端、そんなこと一気に吹っ飛んでしまう。
信武は日和美におはようと返すことすら忘れて彼女に詰め寄ると、問い詰めずにはいられない。
「お前っ! 何でそんな顔色悪いんだよ! 俺、お前の言いつけを守って昨夜は別々に寝てやっただろ!? なのに何で昨日より悪化さしてんだよ。バカなのか!?」
勢い込んで喋り過ぎて、自分の声がズキッと頭に響いて。
思わず一瞬顔をしかめた信武だったけれど、日和美は日和美でそっちに目ざとく気が付くとか。
「信武さんこそ……頭が痛いんじゃないですか?」
お互い相手のことばかりを気にかけて、自分の体調については言明しない。
しばし実りのない押し問答をした二人だったけれど、最初に不調を認めたのは信武の方だった。
「ああ、お前の様子がおかしくて気になって眠れなかったからな! コンディション最悪だわ! そっちこそ何でそんなに目ぇ、泣き腫らして隈まで作ってんだよ。何が気に入らねぇ? 俺、お前になんかしたか?」
とりあえず、とソファーに日和美を座らせて。自分はそんな彼女の前にひざを折る形で視線を合わせると、信武は声のトーンを少し落とす。
「なぁ日和美。俺、鈍いから……言ってくんなきゃ分かんねぇんだよ。頼むから素直に話せ。――な?」
日和美の顔を覗き込む信武の背後。
布団が綺麗に部屋の片隅に畳まれていて、リビングは一応に使える感じになっていて。
畳まれた布団の上にはA4サイズくらいの紙袋が置かれていた。
「……じゃあ聞きますけど――。昨日の昼、信武さん、どこにいましたか?」
紙袋にちらりと視線を流した日和美が、震える声でか細く問い掛けてくるから。
信武はその様子を見て、やっと全てが繋がったように感じた。
「――なぁ日和美。お前、ひょっとして……俺があいつといたトコ、見たのか?」
どこにいたかの質問には答えず、単刀直入にそう問いかけたら、日和美がひざの上に載せていた小さな手をギュッと握りしめたのが見えて。
信武はそれを視界の端に収めるなり無言でスッと立ち上がると、日和美のそばを離れた。
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