70 / 169
(14)その女性は誰ですか?
サイン会のお知らせ
しおりを挟む
『立神信武先生サイン会のお知らせ』
そんな貼り紙が、勤め先書店のあちこちに掲示されたのは日和美が信武に〝女の子の日なんです〟発言をした翌日のことだった。
(信武さんがうちのお店に……?)
そんなこと聞いてないよ?と思いつつ。
でもいつだったか信武が『大体俺、お前んトコの勤め先に近々……』とか口走ったのを思い出してあれはこれのことだったのかも、と思い至った日和美だ。
日和美がポスターの前で呆然と立ち尽くしていたら、これを主催するために奔走したであろう影の立役者・立神信武フリークの多賀谷先輩がやって来て、「あれ? 山中さん。もしかして知らなかった?」と聞いてきたのでコクコクとうなずいた。
「わぁー。灯台下暗し! みんなに告知したつもりでいたけど……新入社員の山中さんには告知漏れしてたんだね。そういえばこれの企画発表したの先月だったわ! ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝られて……いや、悪いのは先輩じゃなくてきっと店長ですよ?と思った日和美だ。
バタバタしていてみんなそこまで気が回らなかったのかも知れない。
何せ今年新卒採用で新入社員として新たにこの『三つ葉書店学園町店』に入社したのは日和美だけだったから。
ついうっかり他部署担当の日和美一人に告知漏れがあったからと言って、大勢に影響はないだろう。
それに、ポスターで告知された日まではまだあと一ヶ月近くある。
どうやら先週発売されたばかりの新刊を買った人に、サイン会に参加する抽選権が与えられるらしい。
「知ってたら昨日、サイン会の権利がある本買ってた?」
なおもポスターを見続けていたからだろう。
多賀谷が心配そうに聞いてくるから。
日和美はキョトンとした。
「ほら、私が別の本を勧めちゃったから。てっきり山中さん、サイン会のこと知ってると思ってたし……新刊はあえて勧めなくても興味があれば自分で買うかなって、つい」
言われて、新刊……とつぶやいて。
対象書籍の題名を見て、日和美は思わず苦笑した。
(信武さんのすっごくエッチそうなタイトルの本、新刊だったんだ)
Webpediaに載っていた『誘いかける蜜口』は割と最近発売されたばかりの本だったのだと知って、何だか妙に驚いてしまった日和美だ。
「ウェブペって情報の更新、すっごく早いんですね」
先日見たWebpediaに、すでに新刊『誘いかける蜜口』のことが詳細に上がっていたことを思い出しながら感心の吐息まじりに言ったら、「あれ、更新したの私なの」と多賀谷がはにかんだ。
「え⁉︎ すごい! 多賀谷先輩、ウェブぺの関係者か何かなんですか⁉︎」
思わずポスターから視線を外してキラキラした目で多賀谷を見つめたら、彼女は「えっ」と口走って驚いた顔をする。
そんな貼り紙が、勤め先書店のあちこちに掲示されたのは日和美が信武に〝女の子の日なんです〟発言をした翌日のことだった。
(信武さんがうちのお店に……?)
そんなこと聞いてないよ?と思いつつ。
でもいつだったか信武が『大体俺、お前んトコの勤め先に近々……』とか口走ったのを思い出してあれはこれのことだったのかも、と思い至った日和美だ。
日和美がポスターの前で呆然と立ち尽くしていたら、これを主催するために奔走したであろう影の立役者・立神信武フリークの多賀谷先輩がやって来て、「あれ? 山中さん。もしかして知らなかった?」と聞いてきたのでコクコクとうなずいた。
「わぁー。灯台下暗し! みんなに告知したつもりでいたけど……新入社員の山中さんには告知漏れしてたんだね。そういえばこれの企画発表したの先月だったわ! ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝られて……いや、悪いのは先輩じゃなくてきっと店長ですよ?と思った日和美だ。
バタバタしていてみんなそこまで気が回らなかったのかも知れない。
何せ今年新卒採用で新入社員として新たにこの『三つ葉書店学園町店』に入社したのは日和美だけだったから。
ついうっかり他部署担当の日和美一人に告知漏れがあったからと言って、大勢に影響はないだろう。
それに、ポスターで告知された日まではまだあと一ヶ月近くある。
どうやら先週発売されたばかりの新刊を買った人に、サイン会に参加する抽選権が与えられるらしい。
「知ってたら昨日、サイン会の権利がある本買ってた?」
なおもポスターを見続けていたからだろう。
多賀谷が心配そうに聞いてくるから。
日和美はキョトンとした。
「ほら、私が別の本を勧めちゃったから。てっきり山中さん、サイン会のこと知ってると思ってたし……新刊はあえて勧めなくても興味があれば自分で買うかなって、つい」
言われて、新刊……とつぶやいて。
対象書籍の題名を見て、日和美は思わず苦笑した。
(信武さんのすっごくエッチそうなタイトルの本、新刊だったんだ)
Webpediaに載っていた『誘いかける蜜口』は割と最近発売されたばかりの本だったのだと知って、何だか妙に驚いてしまった日和美だ。
「ウェブペって情報の更新、すっごく早いんですね」
先日見たWebpediaに、すでに新刊『誘いかける蜜口』のことが詳細に上がっていたことを思い出しながら感心の吐息まじりに言ったら、「あれ、更新したの私なの」と多賀谷がはにかんだ。
「え⁉︎ すごい! 多賀谷先輩、ウェブぺの関係者か何かなんですか⁉︎」
思わずポスターから視線を外してキラキラした目で多賀谷を見つめたら、彼女は「えっ」と口走って驚いた顔をする。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる