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(11)攻防戦的なアレコレ
語るに落ちる
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言えば言うほど信武の目が眇められて不穏な空気を漂わせているのに気付けないまま、日和美はどんどん墓穴を掘り進める。
「――お前さぁ、俺が強引な感じで迫るのがダメって口振りだけど……不破だった頃の俺に対する日和美の態度んが、よっぽど今の俺以上じゃねぇか」
日和美の伝え方が悪かったんだろうか。
もちろん自分は不破に対して全然強引なんかじゃなかったし、絶対に信武以上の押しの強さだってなかったのに。
なのに――。
「結局んトコ、不破だったころの俺だって据え膳食わぬは男の恥って感じでお前のこと布団に引きずり込んだわけだろ? ――今の俺とどう違うのか、俺が納得いくようちゃんと説明してみ?」
「ぜっ、全然違うもんっ!」
「だからそこ、具体的に」
思わず否定してみたけれど、すさかず信武に先を促されて。
日和美はどう口を開いてもドツボにはまる気がして、うまく説明できないもどかしさにグッと言葉に詰まった。
「ほらみろ。結局説明出来ねぇじゃんよ。――で、何だっけ? 〝不破さんは付き合ってもいない女の子にそういう下世話なことをする人じゃありません!〟だっけか」
オマケにこの記憶力の良さ。
日和美は、自分が大きくて強い女郎蜘蛛の仕掛けた巣に絡めとられた非力な羽虫にでもなったような気持ちでオロオロと信武を見上げる。
「じゃあさ――」
先程日和美が勢いに任せて口走った言葉を一言一句違わずスラスラと続けると、信武が含みをたっぷり感じさせる表情でニヤリと嘲笑うから。
その笑顔にゾクッと身体をすくませたと同時、グッと腰を引き寄せられて「俺たち、もう付き合ってるし、そういう下世話なことしても許されるんじゃね?」とか。
語るに落ちるとは正にこのことなのではないかと、日和美は自分の軽率な発言に歯噛みした。
それでもやっぱり不破と違って信武が相手だと添い寝だけではすみそうにない気がするから。
「でも……でも……でも……。私……」
上手い逃げが見つけられなくて涙目で信武を見上げたら、「……そこまでイヤかよ」と至極悲しそうな顔をした信武に小さく吐息を落とされた。
日和美はその表情と声音に、何だか自分が信武に物凄く酷いことをしている気持ちになってしまう。
「――ま、俺も嫌がる女を無理矢理抱く趣味はねぇからな。とりあえず今夜は添い寝だけで許してやるよ」
それでもどうしても日和美のことを離したくないみたいにギュウッと腰を抱く腕に力を込められたから。
日和美は先程感じた罪悪感のせいでそれを振りほどくことが出来ないまま、グッと下唇を噛んで「……リビングでもいいですか?」と妥協案を提示した――のだけれど。
「――お前さぁ、俺が強引な感じで迫るのがダメって口振りだけど……不破だった頃の俺に対する日和美の態度んが、よっぽど今の俺以上じゃねぇか」
日和美の伝え方が悪かったんだろうか。
もちろん自分は不破に対して全然強引なんかじゃなかったし、絶対に信武以上の押しの強さだってなかったのに。
なのに――。
「結局んトコ、不破だったころの俺だって据え膳食わぬは男の恥って感じでお前のこと布団に引きずり込んだわけだろ? ――今の俺とどう違うのか、俺が納得いくようちゃんと説明してみ?」
「ぜっ、全然違うもんっ!」
「だからそこ、具体的に」
思わず否定してみたけれど、すさかず信武に先を促されて。
日和美はどう口を開いてもドツボにはまる気がして、うまく説明できないもどかしさにグッと言葉に詰まった。
「ほらみろ。結局説明出来ねぇじゃんよ。――で、何だっけ? 〝不破さんは付き合ってもいない女の子にそういう下世話なことをする人じゃありません!〟だっけか」
オマケにこの記憶力の良さ。
日和美は、自分が大きくて強い女郎蜘蛛の仕掛けた巣に絡めとられた非力な羽虫にでもなったような気持ちでオロオロと信武を見上げる。
「じゃあさ――」
先程日和美が勢いに任せて口走った言葉を一言一句違わずスラスラと続けると、信武が含みをたっぷり感じさせる表情でニヤリと嘲笑うから。
その笑顔にゾクッと身体をすくませたと同時、グッと腰を引き寄せられて「俺たち、もう付き合ってるし、そういう下世話なことしても許されるんじゃね?」とか。
語るに落ちるとは正にこのことなのではないかと、日和美は自分の軽率な発言に歯噛みした。
それでもやっぱり不破と違って信武が相手だと添い寝だけではすみそうにない気がするから。
「でも……でも……でも……。私……」
上手い逃げが見つけられなくて涙目で信武を見上げたら、「……そこまでイヤかよ」と至極悲しそうな顔をした信武に小さく吐息を落とされた。
日和美はその表情と声音に、何だか自分が信武に物凄く酷いことをしている気持ちになってしまう。
「――ま、俺も嫌がる女を無理矢理抱く趣味はねぇからな。とりあえず今夜は添い寝だけで許してやるよ」
それでもどうしても日和美のことを離したくないみたいにギュウッと腰を抱く腕に力を込められたから。
日和美は先程感じた罪悪感のせいでそれを振りほどくことが出来ないまま、グッと下唇を噛んで「……リビングでもいいですか?」と妥協案を提示した――のだけれど。
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