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(9)そのまま俺に尽くせよ
ひょっとして双子のご兄弟がいらしたりしますか?
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記憶が戻ったのに自分のことを覚えてくれているらしい不破――もとい立神に、日和美はほんの少しホッとして。
だけどこの状態はいただけませんね⁉︎とも思ってしまった。
「あ、の……たつ、が、みさん……。色々お話をうかがいたいので手、放して頂いてもいいですか?」
日和美の大好きなTLなんかにはよくある展開だけれど、いかんせん日和美は実際の恋愛においては呆れるくらいに初心者なのだ。
彼氏は過去に二人。高校生の頃と大学生の頃にいないこともなかったけれど、日和美のスキルが低すぎてどちらも深いお付き合いには至らず、処女なまま現在に至る。
交際期間一週間とか十日とかを〝彼氏がいた〟にカウントしてもよい場合の話ではあるのだけれども。
物語の中ではあんなにときめくことが出来るキスですら、どうしたらそういう雰囲気になれるのかさえ全く分からない。
いや、相手がそういう雰囲気に持ち込んでくれても、恥ずかしさが勝って思わずムードをぶち壊したくなってしまって。
ハッキリ言って、日和美は若葉マークを付けるのもおこがましいような仮免許状態なのだ。
そんな日和美の腰を、立神がグッと握ったまま離さない。
これは由々しき事態ではないか。
な、何とかして離れて頂かなくては!
そう思う日和美なのだが。
「なぁ日和美。折角一緒に住んでるんだ。苗字で呼ぶとかもったいないと思わねぇ?」
立神信武という男は宇宙人か何かなのだろうか。
「俺も慣れねぇながらお前のこと下の名で呼んでやってんだ。日和美もそうしろよ」
日和美の言葉を完全にスルーして、関係のない要求を突き付けてくる。
(そんな呼び方して欲しいなんて微塵も頼んでませんけどね⁉︎)
これが、今朝「いってらっしゃい」と笑顔で自分を送り出してくれたふわふわ王子と同一人物だなんて思いたくない。
「たつ……」
「信武」
「……し、のぶさん……ひょっとして双子のご兄弟がいらしたりしますか?」
多分そうだ。
朝まで一緒だった不破 譜和さんは、いま目の前にいる立神何某とは違う人間に違いない。
言いながら腰に回された腕を引き剥がそうと頑張ってみる日和美だったけれど、残念なことにびくともしなくて。
ばかりか――。
「まぁ実際んトコよく覚えてねぇんだけど……あんた、俺のためにアレコレしてくれたみてぇじゃん?」
言われて(えっ? 覚えて……ない?)と思いながらソワソワして彼を見上げたら目の前で写真をチラ付かされた。
「写真裏のメモ。全部俺の字だから間違いねぇと思うんだけど……何かすっげぇ色々世話になってたみたいで驚いたわ。――なぁ女ってさ、実際出会ってたかだか数日で……普通あそこまで出来るもんなの? 少なくとも俺の知ってる限りじゃアンタみたいなタイプ、いねぇんだけど」
存外真剣な目で食い入るように見つめられて、ドキッとさせられてしまう。
「あそこまで……って」
「治療費とか飯の世話とか宿の心配とか……まぁそういうの諸々」
だけどこの状態はいただけませんね⁉︎とも思ってしまった。
「あ、の……たつ、が、みさん……。色々お話をうかがいたいので手、放して頂いてもいいですか?」
日和美の大好きなTLなんかにはよくある展開だけれど、いかんせん日和美は実際の恋愛においては呆れるくらいに初心者なのだ。
彼氏は過去に二人。高校生の頃と大学生の頃にいないこともなかったけれど、日和美のスキルが低すぎてどちらも深いお付き合いには至らず、処女なまま現在に至る。
交際期間一週間とか十日とかを〝彼氏がいた〟にカウントしてもよい場合の話ではあるのだけれども。
物語の中ではあんなにときめくことが出来るキスですら、どうしたらそういう雰囲気になれるのかさえ全く分からない。
いや、相手がそういう雰囲気に持ち込んでくれても、恥ずかしさが勝って思わずムードをぶち壊したくなってしまって。
ハッキリ言って、日和美は若葉マークを付けるのもおこがましいような仮免許状態なのだ。
そんな日和美の腰を、立神がグッと握ったまま離さない。
これは由々しき事態ではないか。
な、何とかして離れて頂かなくては!
そう思う日和美なのだが。
「なぁ日和美。折角一緒に住んでるんだ。苗字で呼ぶとかもったいないと思わねぇ?」
立神信武という男は宇宙人か何かなのだろうか。
「俺も慣れねぇながらお前のこと下の名で呼んでやってんだ。日和美もそうしろよ」
日和美の言葉を完全にスルーして、関係のない要求を突き付けてくる。
(そんな呼び方して欲しいなんて微塵も頼んでませんけどね⁉︎)
これが、今朝「いってらっしゃい」と笑顔で自分を送り出してくれたふわふわ王子と同一人物だなんて思いたくない。
「たつ……」
「信武」
「……し、のぶさん……ひょっとして双子のご兄弟がいらしたりしますか?」
多分そうだ。
朝まで一緒だった不破 譜和さんは、いま目の前にいる立神何某とは違う人間に違いない。
言いながら腰に回された腕を引き剥がそうと頑張ってみる日和美だったけれど、残念なことにびくともしなくて。
ばかりか――。
「まぁ実際んトコよく覚えてねぇんだけど……あんた、俺のためにアレコレしてくれたみてぇじゃん?」
言われて(えっ? 覚えて……ない?)と思いながらソワソワして彼を見上げたら目の前で写真をチラ付かされた。
「写真裏のメモ。全部俺の字だから間違いねぇと思うんだけど……何かすっげぇ色々世話になってたみたいで驚いたわ。――なぁ女ってさ、実際出会ってたかだか数日で……普通あそこまで出来るもんなの? 少なくとも俺の知ってる限りじゃアンタみたいなタイプ、いねぇんだけど」
存外真剣な目で食い入るように見つめられて、ドキッとさせられてしまう。
「あそこまで……って」
「治療費とか飯の世話とか宿の心配とか……まぁそういうの諸々」
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