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(6)やぶをつついてヘビを出す?
出来れば閉じ込めてしまいたい
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***
あれから数日。
「じゃあ、行ってきますね」
いよいよ日和美が社会人としての第一歩を踏み出す日がやってきた。
身元は定かでないまでも、そんな自分でも出来る仕事を探したいと申し出てきた不破に、そんなに焦って無理なさらなくてもいいのにと思いつつも、不破自身に直で繋がる連絡先の必要性は感じた日和美だ。
思い立ったら動かずにはいられない性分。
日和美は、写真を撮った翌日には不破とともに自分が使っている携帯キャリア――doconoショップに出向いて、もう一台携帯電話を契約したのだけれど。
機種はほぼ無料に近いもので勘弁してもらった日和美だったのに、実際与えられてばかりの不破からは恐縮されまくりで。
「本当にすみません」
そう眉根を寄せられた時にはびっくりしてしまった。
「私が不破さんと連絡取りたくて勝手にしてることです。謝らないで?」
不破をなだめながらも、彼の言いたいことが痛いほど分かる日和美だ。
もし逆の立場だったなら、日和美だって相手に対して負い目ばかり感じてしまっただろうから。
「本当、一日でも早く何か仕事をみつけないと、今の僕って、完全に日和美さんのヒモ状態ですもんね」
(ひ、ヒモ!?)
ちょいちょい思うのだが、不破は彼の外観イメージに合わない意外な言葉を結構知っている。
(王子、日本に来て長いのかなぁ)
勝手に不破のことを外国人だと決めつけている日和美は、ぼんやりとそんなことを思って。
「あの……くれぐれも無理だけはしないでくださいね? 私、不破さんに何かあったらめちゃくちゃ泣いちゃいます」
出先で不意に記憶が戻って、そのままアパートに帰って来なくなってしまったら……とか思ったら、不安でたまらない。
(出来ることなら閉じ込めてしまいたいくらいですっ!)
などと過激なことを考えているだなんて、バレるわけにはいかないではないか。
「はい。気を付けます。出かける時は電話を絶対持って出ますし、それに――」
そこでカバンからゴソゴソと小さなアルバムを取り出した不破に、日和美は思わず目を瞠った。
それを見せてくれながら、スマートフォンとは別に、「日和美さんと撮った写真も肌身離さず携帯するようにします」と付け加えてくれた不破に、日和美は嬉しくて参ってしまう。
実は先日、通販サイトでスーツに合いそうな男性向けビジネスバッグと、カジュアルな服に合いそうなボディバッグも買ってしまった日和美だ。
いずれもどんな服にも合わせやすいよう黒いのを選んだのだが、不破はそのカバンに携帯電話だけではなく、百円ショップで買ってきたアルバムも入れて持ち歩くつもりらしい。
不破は記憶喪失になった際、身元の分かるものを一切持っていなかった。あの時せめて携帯電話を持っていたならば、今みたいな根無し草にはなっていなかっただろう。
それを踏まえた上での用心らしいのだが、実際そうしてくれると言われただけで、日和美はすごく心強くて。
(もし不意に記憶が戻られて私のことを忘れちゃったとしても……接点ゼロにはならない……よね? 写真には不破さんの手でメモ書きもされてるし)
そんな風に思ってしまった。
(そういえば不破さん、メモ書きの最後。「ぼくに何か」の後には何て書いたんだろう?)
あれから数日。
「じゃあ、行ってきますね」
いよいよ日和美が社会人としての第一歩を踏み出す日がやってきた。
身元は定かでないまでも、そんな自分でも出来る仕事を探したいと申し出てきた不破に、そんなに焦って無理なさらなくてもいいのにと思いつつも、不破自身に直で繋がる連絡先の必要性は感じた日和美だ。
思い立ったら動かずにはいられない性分。
日和美は、写真を撮った翌日には不破とともに自分が使っている携帯キャリア――doconoショップに出向いて、もう一台携帯電話を契約したのだけれど。
機種はほぼ無料に近いもので勘弁してもらった日和美だったのに、実際与えられてばかりの不破からは恐縮されまくりで。
「本当にすみません」
そう眉根を寄せられた時にはびっくりしてしまった。
「私が不破さんと連絡取りたくて勝手にしてることです。謝らないで?」
不破をなだめながらも、彼の言いたいことが痛いほど分かる日和美だ。
もし逆の立場だったなら、日和美だって相手に対して負い目ばかり感じてしまっただろうから。
「本当、一日でも早く何か仕事をみつけないと、今の僕って、完全に日和美さんのヒモ状態ですもんね」
(ひ、ヒモ!?)
ちょいちょい思うのだが、不破は彼の外観イメージに合わない意外な言葉を結構知っている。
(王子、日本に来て長いのかなぁ)
勝手に不破のことを外国人だと決めつけている日和美は、ぼんやりとそんなことを思って。
「あの……くれぐれも無理だけはしないでくださいね? 私、不破さんに何かあったらめちゃくちゃ泣いちゃいます」
出先で不意に記憶が戻って、そのままアパートに帰って来なくなってしまったら……とか思ったら、不安でたまらない。
(出来ることなら閉じ込めてしまいたいくらいですっ!)
などと過激なことを考えているだなんて、バレるわけにはいかないではないか。
「はい。気を付けます。出かける時は電話を絶対持って出ますし、それに――」
そこでカバンからゴソゴソと小さなアルバムを取り出した不破に、日和美は思わず目を瞠った。
それを見せてくれながら、スマートフォンとは別に、「日和美さんと撮った写真も肌身離さず携帯するようにします」と付け加えてくれた不破に、日和美は嬉しくて参ってしまう。
実は先日、通販サイトでスーツに合いそうな男性向けビジネスバッグと、カジュアルな服に合いそうなボディバッグも買ってしまった日和美だ。
いずれもどんな服にも合わせやすいよう黒いのを選んだのだが、不破はそのカバンに携帯電話だけではなく、百円ショップで買ってきたアルバムも入れて持ち歩くつもりらしい。
不破は記憶喪失になった際、身元の分かるものを一切持っていなかった。あの時せめて携帯電話を持っていたならば、今みたいな根無し草にはなっていなかっただろう。
それを踏まえた上での用心らしいのだが、実際そうしてくれると言われただけで、日和美はすごく心強くて。
(もし不意に記憶が戻られて私のことを忘れちゃったとしても……接点ゼロにはならない……よね? 写真には不破さんの手でメモ書きもされてるし)
そんな風に思ってしまった。
(そういえば不破さん、メモ書きの最後。「ぼくに何か」の後には何て書いたんだろう?)
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