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(6)やぶをつついてヘビを出す?

まるで新婚さんみたいっ!

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 不破ふわ天蓋付てんがいつきの大きなベッドで、高級ふかふか羽毛布団にくるまれて真っ裸で寝る方がしっくりくる気さえしてしまった。

 だが実際の不破。顔はどう見ても春風みたいなぽやんとした印象の王子様なのに、やることは結構庶民的なのだ。

 それは努力してやっているようには見えなくて……どう考えても〝やりつけている〟身に染みている感のある所作だから、日和美ひなみは不破の人物像がますます掴めなくなってしまう。

(不破さんって何者なんだろう)

 気になるけれど知りたくない。
 複雑な乙女心だ。

 そんなことを考えていたら、味噌汁用の火にかけながらも、小さく吐息がもれてしまった日和美だ。

 冷蔵庫には忙しい時を見越して、あらかじめかつお節と乾燥わかめ、刻みネギ、おが味噌と一緒に丸められた味噌玉がラップに包んでいくつかストックしてある。
 汁椀に入れてお湯を注いでかきまぜれば一人分のお味噌汁がすぐに出来上がる優れものだ。


 湯がいて冷凍しておいたほうれん草は、小鉢に入れたら調度良いぐらいの量ずつに分けてこちらもラップにくるんである。
 それを二包ふたつつみ取り出すと、温まったひじきの煮物と入れ替えるように電子レンジへ放り込んだ。

 その間に玉ねぎのスライスをフライパンで軽くしんなりする程度に炒めてから、そこへ一昨日しょうが焼きのタレに漬けこんでおいた豚肉を取り出して投入して。

 ジューと言う小気味よい音をさせながらしょうが焼きに火を通していたら、電子レンジが仕上がりを知らせてきた。


「いい匂いですね。……僕にも何か手伝えることがありますか?」

 気が付けば、布団を端に避け終わった不破ふわ日和美ひなみのすぐ後ろに立っていて、日和美の手元を覗き込んでいた。

 思わず「ひゃっ!」と小さく声を上げて肩を跳ねさせたら、不破に悪戯っぽくクスクス笑われてしまう。

(あーん、王子っ、その笑顔は反則ですっ)

 心の中、(まるで新婚さんみたいっ!)とキュンキュンしながら、日和美はさっきレンジから取り出したひじきの煮物にちらりと視線を投げかけて。

「食器棚に小鉢が入ってるんですけど、それにアレ、盛りつけてもらってもいいですか?」

 キッチンの引き出しからとりわけ用の箸を出して不破に渡したら、「お安い御用です」とまたしてもキラースマイル。

(ぐっ。心臓がっ)

 何て思っていたら、危うくしょうが焼きを焦げ付かせてしまうところだった。
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