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(6)やぶをつついてヘビを出す?

瞬く間に燃え上がる恋?

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 不破ふわの腕の中。
 一人もじもじソワソワしていたら、不破に「しーっ」と大人しくするようなだめられて、髪の毛をくしゃくしゃっと掻き乱すみたいに撫でまわされる。

 これではまるで愛犬か何かの扱いではないか――。

 日和美ひなみは動物を飼ったことがないので本当の所はよくは分からないけれど、北国で沢山の動物と一緒に暮らす『動物キングダム』と言う施設を作っている〝ゲンゴロウさん〟と呼ばれるおじさんの出る動物番組は結構好きで、テレビでよく観ている。

 不破の日和美への接し方は、その中でゲンゴロウさんが大型犬などを撫でまわす仕草にそっくりだと感じてしまった。

(私、ペット扱いですかね⁉︎)

 とすると、さっき不破が口走った〝ルティ〟とやらもそんな感じなのかもしれないな、と思って。

(いやいやいや。そうと見せかけて……実は不破さんにそっくりなお人形さんみたいな可愛い可愛い妹さんとかっ!? はたまためっちゃ年下の許嫁いいなずけと言う線も捨てきれないではないですかっ)

 日和美のような庶民にはあまり関係のない話だけれど、高貴な方々の間にはまだまだ色々ありそうな気がする。

 政治的な裏があって仕組まれた婚姻相手とか……家同士が決めた許嫁とか……生まれた瞬間から一緒になることを定められた結婚前提のどこぞの姫君様とか……。

(どれも……ありそう!)

 とどのつまり、全部いまTLで流行りの政略結婚モノの設定なのだけれど、日和美の中では全て違うものとして列挙されていた。

 記憶を失っているはずの不破ふわの口から、その手掛かりになりそうな記憶の断片かけらみたいな言葉が出てきたことよりも、もしかしたら彼にはどなたか決まったお相手がいらっしゃるのかも知れない、と思う方が胸をチクチクと刺してきてしんどいと思ってしまった日和美ひなみだ。

(不破さん……)

 彼のことをそう呼べるのも後ちょっとなのかも知れない。

 日和美はツンと痛くなった鼻をシュン、とすすり上げると、
(だったら今だけ)
 そう思って不破の胸に頬をすり寄せた。


***


『日和美さん、好きです。愛しています』

『私もです! 大好きです、不破さん!』

 出会ってたった一日。
 布団の落下から始まった稀有けうな偶然が引き合わせた二人は、恋に落ちるのも急転直下。

 出会った翌日には二人同時にお互いに対する烈火ような想いに気が付いて、恋の炎は瞬く間に燃え広がった。

 そうして今まさに。
 一面の花畑の中で二人。嘘偽うそいつわらざる気持ちを確かめ合ったばかり。

 彼はやはり某国の王子さまで、国には親が決めた隣国の姫君様な許嫁いいなずけがいて……結婚しなかったら戦争になってしまうかも知れないって。

『こんなに愛し合っているのに……。一緒にはなれないんですね、私たち』

 うわーん!

 日和美は鼻水と涙でぐしゃぐしゃに泣き濡れながら、ヒシッと不破譜和ふわにしがみ付いた。
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