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(6)やぶをつついてヘビを出す?
色っぽいこと?
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***
『し、失礼しまぁ~す』
我が家のリビングなのに、不破がいると思うとどうあったって緊張のあまり遠慮がちになってしまう。
日和美は小さな声で、まるでよそのお宅を訪問した〝気のいい泥棒〟のような声をかけると、そろりそろりと足音を忍ばせて不破が眠る布団に近付いた。
不破はテレビ前に置かれていたソファやローテーブルを窓際に寄せるようにして布団を敷いていたから、襖を開けたら結構すぐそこ――目の前にいて。
まだ暗闇に慣れ切らない日和美の目に、テレビ下のDVDデッキの時計が光るデジタル表示や、テレビの主電源のスタンバイの明かり、カーテンの隙間から差し込む月光が力を貸してくれる。
自分も少し前まで暗がりにいたこともあって、割とすぐに夜目に慣れてきた日和美だ。
真っ暗闇じゃなく、あちこちにほんのりと明かりを放つものがあったのも幸いして。すぐさま布団に入った不破の様子が割とハッキリ認識出来るようになった。
(はわわわ~。不破譜和さん、めちゃ綺麗)
ぱっちりキラキラなお星さまが散りばめられたみたいな目が開いているところも確かに素敵だけれど、こうして目を閉じていると、まつ毛が長いのが際立つではないか。
明度なんてほとんどない明かりの下でさえ、頬にまつ毛から落ちる影が見える気がして――。
彼の枕元にあるDVDデッキの時計表示の緑がかった明かりに照らされているからだろうか。
ほんのりと青白く見える不破の肌はまるでビスクドールみたいに現実味がなくて。
作り物みたいにすべすべの肌に、日和美は思わず明かりに引き寄せられる蛾みたいにおびき寄せられてしまう。
布団わきにトスン……とひざをつくと、彼へ覆いかぶさるみたいにしてまじまじとその顔を見詰めた。
(不破さん、ちゃんと息してる?)
こうして眺める限りでは苦しんでいるようには見えない。
でも余りにもお行儀よく寝そべっているから、逆に息をしているように見えなくて、日和美は一人ソワソワしてしまう。
(か、確認のためっ)
異性の寝間に忍び込んでイケナイことをしているというやましさを払拭するように、言い訳がましく心の中でそうつぶやくと、そぉっと彼の口元に耳を近付けて吐息を確認しようとして――。
「ん……」
途端不破が眉根を寄せて小さく喘ぐから。
ドッキィーーーンッ!
耳を不破の口元に持っていっていたこともあって、ふぅっと耳朶を掠めた不破の吐息と色っぽい声に、日和美は危うく心臓が口から飛び出してしまいそうになる。
ただ単に、やたら近付き過ぎてしまったせいで、日和美の髪の毛が不破の鼻先をくすぐったのが原因なのだけれど、日和美にはそんなの分からなくてただただ後ろめたさに苛まれて冷や汗タラタラだ。
(あ、いや、喘いだって定義しちゃうのは語弊がありますかねっ!?)
それでは、まるで日和美が色っぽいことを仕掛けたみたいではないか。
『し、失礼しまぁ~す』
我が家のリビングなのに、不破がいると思うとどうあったって緊張のあまり遠慮がちになってしまう。
日和美は小さな声で、まるでよそのお宅を訪問した〝気のいい泥棒〟のような声をかけると、そろりそろりと足音を忍ばせて不破が眠る布団に近付いた。
不破はテレビ前に置かれていたソファやローテーブルを窓際に寄せるようにして布団を敷いていたから、襖を開けたら結構すぐそこ――目の前にいて。
まだ暗闇に慣れ切らない日和美の目に、テレビ下のDVDデッキの時計が光るデジタル表示や、テレビの主電源のスタンバイの明かり、カーテンの隙間から差し込む月光が力を貸してくれる。
自分も少し前まで暗がりにいたこともあって、割とすぐに夜目に慣れてきた日和美だ。
真っ暗闇じゃなく、あちこちにほんのりと明かりを放つものがあったのも幸いして。すぐさま布団に入った不破の様子が割とハッキリ認識出来るようになった。
(はわわわ~。不破譜和さん、めちゃ綺麗)
ぱっちりキラキラなお星さまが散りばめられたみたいな目が開いているところも確かに素敵だけれど、こうして目を閉じていると、まつ毛が長いのが際立つではないか。
明度なんてほとんどない明かりの下でさえ、頬にまつ毛から落ちる影が見える気がして――。
彼の枕元にあるDVDデッキの時計表示の緑がかった明かりに照らされているからだろうか。
ほんのりと青白く見える不破の肌はまるでビスクドールみたいに現実味がなくて。
作り物みたいにすべすべの肌に、日和美は思わず明かりに引き寄せられる蛾みたいにおびき寄せられてしまう。
布団わきにトスン……とひざをつくと、彼へ覆いかぶさるみたいにしてまじまじとその顔を見詰めた。
(不破さん、ちゃんと息してる?)
こうして眺める限りでは苦しんでいるようには見えない。
でも余りにもお行儀よく寝そべっているから、逆に息をしているように見えなくて、日和美は一人ソワソワしてしまう。
(か、確認のためっ)
異性の寝間に忍び込んでイケナイことをしているというやましさを払拭するように、言い訳がましく心の中でそうつぶやくと、そぉっと彼の口元に耳を近付けて吐息を確認しようとして――。
「ん……」
途端不破が眉根を寄せて小さく喘ぐから。
ドッキィーーーンッ!
耳を不破の口元に持っていっていたこともあって、ふぅっと耳朶を掠めた不破の吐息と色っぽい声に、日和美は危うく心臓が口から飛び出してしまいそうになる。
ただ単に、やたら近付き過ぎてしまったせいで、日和美の髪の毛が不破の鼻先をくすぐったのが原因なのだけれど、日和美にはそんなの分からなくてただただ後ろめたさに苛まれて冷や汗タラタラだ。
(あ、いや、喘いだって定義しちゃうのは語弊がありますかねっ!?)
それでは、まるで日和美が色っぽいことを仕掛けたみたいではないか。
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