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(1)真夜中の通販
危ない! 避けてーっ!
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「よっこらしょっ!」
祖母が重いものを持ち上げるときはこの掛け声に限る!と教えてくれたのを忠実に守りながら、掛け布団を持ち上げてみたら、案外すんなり持ち上がった。
ただ単に、「重い」と言う予備知識を得てそれ相応の気構えで望んだから先ほどより易々と持ち上がったに他ならないのだが、日和美は(おばあちゃん、さすがだよ!)と思って祖母を心の底から崇め奉る。
実は日和美、幼い頃に母を亡くしていて父・和彦に男手ひとつで育てられた経緯を持っていた。
父の仕事中は基本保育園に通っていたけれど、何かあるたびに父方の祖父母が面倒を見てくれて。
特に祖母は孫の日和美を本当に可愛がってくれたから。
日和美本人には自覚がないけれどかなりの〝おばあちゃんっ子〟なのだ。いや、〝おばあちゃん信奉者〟と言うべきか。
よろめきながらも何とか掛け布団をベランダまで持ち出してバサリと柵に掛けた!までは良かったのだけれど。
「あ、布団ばさみ忘れた!」
それがないと、干した布団が下に落ちてしまうかも知れない。
このアパート、建物が割と敷地一杯一杯に建っていて、ベランダのすぐ下は道路に面している。
布団に限らず、洗濯物なんかも落としてしまったらみんな道端に落下してしまう感じ。
そんなに人通りもないし、滅多に車も通らない道だけど、もちろん通路である以上誰も通らないわけじゃない。
今だって、ちょっと先の方からスーツ姿の男性が歩いてくるのが見えている。
「んーっ!」
なるべく内側に比重が掛かるように布団を引っ張って、布団ばさみを取りに部屋に入ろうと、布団から手を離した途端。
「あああーーーっ!!」
布団がズルリとバランスを崩して、あろうことか柵の向こう側へずり落ちて行くのが見えて――。
慌てて手を伸ばして端っこを捕まえた!……けれどダメだった。
重い木綿入りの掛け布団は、日和美の手をスルリと抜けて真っ逆さま。
ちょうどさっき見るとはなしに見たスーツ姿の男性目がけて落ちていくではないか!
「きゃーーーっ! 危ない! 避けてーっ!」
声を限りに叫んだけれど、遅かった。
その瞬間は、何故だかとってもとってもスローモーションに見えた日和美だ。
ふわっふわの色素の薄い男性が「え?」と言う顔でこちらを振り仰いだのが見えて、「わ! すっごいハンサム!」とつぶやいたと同時、その顔がゆっくりと布団に覆い隠されて見えなくなった。
祖母が重いものを持ち上げるときはこの掛け声に限る!と教えてくれたのを忠実に守りながら、掛け布団を持ち上げてみたら、案外すんなり持ち上がった。
ただ単に、「重い」と言う予備知識を得てそれ相応の気構えで望んだから先ほどより易々と持ち上がったに他ならないのだが、日和美は(おばあちゃん、さすがだよ!)と思って祖母を心の底から崇め奉る。
実は日和美、幼い頃に母を亡くしていて父・和彦に男手ひとつで育てられた経緯を持っていた。
父の仕事中は基本保育園に通っていたけれど、何かあるたびに父方の祖父母が面倒を見てくれて。
特に祖母は孫の日和美を本当に可愛がってくれたから。
日和美本人には自覚がないけれどかなりの〝おばあちゃんっ子〟なのだ。いや、〝おばあちゃん信奉者〟と言うべきか。
よろめきながらも何とか掛け布団をベランダまで持ち出してバサリと柵に掛けた!までは良かったのだけれど。
「あ、布団ばさみ忘れた!」
それがないと、干した布団が下に落ちてしまうかも知れない。
このアパート、建物が割と敷地一杯一杯に建っていて、ベランダのすぐ下は道路に面している。
布団に限らず、洗濯物なんかも落としてしまったらみんな道端に落下してしまう感じ。
そんなに人通りもないし、滅多に車も通らない道だけど、もちろん通路である以上誰も通らないわけじゃない。
今だって、ちょっと先の方からスーツ姿の男性が歩いてくるのが見えている。
「んーっ!」
なるべく内側に比重が掛かるように布団を引っ張って、布団ばさみを取りに部屋に入ろうと、布団から手を離した途端。
「あああーーーっ!!」
布団がズルリとバランスを崩して、あろうことか柵の向こう側へずり落ちて行くのが見えて――。
慌てて手を伸ばして端っこを捕まえた!……けれどダメだった。
重い木綿入りの掛け布団は、日和美の手をスルリと抜けて真っ逆さま。
ちょうどさっき見るとはなしに見たスーツ姿の男性目がけて落ちていくではないか!
「きゃーーーっ! 危ない! 避けてーっ!」
声を限りに叫んだけれど、遅かった。
その瞬間は、何故だかとってもとってもスローモーションに見えた日和美だ。
ふわっふわの色素の薄い男性が「え?」と言う顔でこちらを振り仰いだのが見えて、「わ! すっごいハンサム!」とつぶやいたと同時、その顔がゆっくりと布団に覆い隠されて見えなくなった。
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