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■こたつ/2022年冬の書き下ろし短編
期待に応えてやらないと、な?*
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ニヤリと微笑む温和を見て、音芽がぶわりと耳まで赤く染めるから。
「うっわ。音芽ちゃん。何考えたの? や~らしいっ♪」
温和は、音芽を揶揄うみたいにそう言いながら膝立ちになって、音芽の方へグッと身を乗り出した。
「い、いやらしいことなんか考えてないっ」
「ふ~ん? そう。けど俺はもうその気だから付き合えな?」
わざと着たままにしていたスーツのジャケットを、音芽に意識させるようばさりと脱ぎ捨てると、緩めもせずそのままにしていたネクタイの結び目に手をかけて――。
わざわざ音芽に見せつけるようにしてグイッと緩めて、首からそれを擦り抜いた。
「はる、まさ……?」
怯えたような目で、音芽が温和の手にしたネクタイを見やった。
「んー、何? 音芽はそんなにコレが気になんの?」
温和はククッと笑って手の中のネクタイを一本の紐に仕立て直すと、意味深に音芽の眼前。なめらかな布地を滑らせるようにして、手のひらの上で動かしてみせる。
その動きを音芽が目で追ってくるから。
「そいつは期待に応えてやらねぇと、……な?」
温和は自身のワイシャツのボタンを上から順にくつろげていきながら、音芽を見下ろすように彼女の真ん前へ立ちはだかった。
「優秀な音芽ちゃんなら自分がこれからどうしたらいいか……分かるよな?」
問いかける温和をこたつの中からソワソワと不安そうな――。それでいてどこか期待に満ちた目で見上げると、音芽がおずおずと両手を温和の方へ差し出してきた。
まるで手錠を掛けられるのを待つ罪人みたいに手首の内側同士をピッタリとくっ付けるようにして伸ばされた音芽の華奢な手を掴むと、温和は手にしたネクタイでクルクルと一纏め。そんな音芽の両手を拘束してやる。
シュッと乾いた衣擦れの音がして、縛めが音芽の白い肌に食い込むのを見て、温和はニヤリと口の端に笑みを浮かべた。
「なぁ音芽。お前、俺に縛られるの、好き?」
束ねた手首を押さえつけるように、音芽の身体を横たえて。
片手でキュッと床に縫いとめると、温和は空いた方の手で音芽の頬を優しく撫で上げる。
「ほら、俺の手。お前に触れるたびに熱を持って。もうさっきみたいに冷たくねぇだろ?」
そのまま音芽のあごを捉えて上向かせると、
「音芽、口開けろ」
言って、情欲に潤んだ瞳で温和を見上げる音芽にねっとりと絡みつくような口付けを落とす。
「――いい子だ」
「ふ、ぁっ、……は、るまさぁ……」
熱に浮かされたように自分の命令に従順に従う音芽を見下ろして、温和は彼女を優しく褒めて蕩けさせていく。
ソフトSMとも言うべき、このどこか歪な関係には、温和からの飴と鞭が必要不可欠。
「今からこたつなんか要らねぇくらい、お前の身体を熱く火照らせてやるからな? 覚悟しろ」
すでにほんのりと朱に色付いて。匂い立つような熱を放ち始めた音芽に覆いかぶさって宣言した温和だったけれど。
もちろん彼の下腹部だって、そんな音芽に当てられて、痛いくらいに張り詰めて昂っている。
「なぁ音芽。――こたつ、邪魔だな?」
今からここで音芽を存分に愛し尽くすのだ。
グッとこたつを足で向こう側へ押し退ける温和を、熱に浮かされた目で見上げた音芽が小さくコクッとうなずいた。
「――言ったな?」
途端温和がニヤリと笑って、音芽の敏感な肉芽をショーツ越しに擦り上げる。
「ひ、あぁ、んっ、温和ぁ、……っ」
まさかその同意が、『明日こたつを撤去する』とイコールだなんて気付けないまま。
音芽は温和に甘く淫らに啼かされる。
縛られたままの両手首から全身に甘美な痺れが流れ込むようで、音芽はビクビクと小刻みに身体を震わせた。
せっかく奏芽にもらってきたぽかぽかぬくぬくのこたつなのに。
温和の愛撫にほだされて、明日には仕舞い込まれることになってしまった。
新居が建って、その家での初めての冬が訪れるまでのおよそ一年間。
音芽はこたつに入る楽しみを奪われることになる。
だけどそんなことにも気付けないまま。今はただただ温和の腕の中。
二人きりの部屋に音芽の艶っぽい嬌声と、温和の熱を帯びた吐息だけが満ちていく――。
END(2022/12/09-12/10)
「うっわ。音芽ちゃん。何考えたの? や~らしいっ♪」
温和は、音芽を揶揄うみたいにそう言いながら膝立ちになって、音芽の方へグッと身を乗り出した。
「い、いやらしいことなんか考えてないっ」
「ふ~ん? そう。けど俺はもうその気だから付き合えな?」
わざと着たままにしていたスーツのジャケットを、音芽に意識させるようばさりと脱ぎ捨てると、緩めもせずそのままにしていたネクタイの結び目に手をかけて――。
わざわざ音芽に見せつけるようにしてグイッと緩めて、首からそれを擦り抜いた。
「はる、まさ……?」
怯えたような目で、音芽が温和の手にしたネクタイを見やった。
「んー、何? 音芽はそんなにコレが気になんの?」
温和はククッと笑って手の中のネクタイを一本の紐に仕立て直すと、意味深に音芽の眼前。なめらかな布地を滑らせるようにして、手のひらの上で動かしてみせる。
その動きを音芽が目で追ってくるから。
「そいつは期待に応えてやらねぇと、……な?」
温和は自身のワイシャツのボタンを上から順にくつろげていきながら、音芽を見下ろすように彼女の真ん前へ立ちはだかった。
「優秀な音芽ちゃんなら自分がこれからどうしたらいいか……分かるよな?」
問いかける温和をこたつの中からソワソワと不安そうな――。それでいてどこか期待に満ちた目で見上げると、音芽がおずおずと両手を温和の方へ差し出してきた。
まるで手錠を掛けられるのを待つ罪人みたいに手首の内側同士をピッタリとくっ付けるようにして伸ばされた音芽の華奢な手を掴むと、温和は手にしたネクタイでクルクルと一纏め。そんな音芽の両手を拘束してやる。
シュッと乾いた衣擦れの音がして、縛めが音芽の白い肌に食い込むのを見て、温和はニヤリと口の端に笑みを浮かべた。
「なぁ音芽。お前、俺に縛られるの、好き?」
束ねた手首を押さえつけるように、音芽の身体を横たえて。
片手でキュッと床に縫いとめると、温和は空いた方の手で音芽の頬を優しく撫で上げる。
「ほら、俺の手。お前に触れるたびに熱を持って。もうさっきみたいに冷たくねぇだろ?」
そのまま音芽のあごを捉えて上向かせると、
「音芽、口開けろ」
言って、情欲に潤んだ瞳で温和を見上げる音芽にねっとりと絡みつくような口付けを落とす。
「――いい子だ」
「ふ、ぁっ、……は、るまさぁ……」
熱に浮かされたように自分の命令に従順に従う音芽を見下ろして、温和は彼女を優しく褒めて蕩けさせていく。
ソフトSMとも言うべき、このどこか歪な関係には、温和からの飴と鞭が必要不可欠。
「今からこたつなんか要らねぇくらい、お前の身体を熱く火照らせてやるからな? 覚悟しろ」
すでにほんのりと朱に色付いて。匂い立つような熱を放ち始めた音芽に覆いかぶさって宣言した温和だったけれど。
もちろん彼の下腹部だって、そんな音芽に当てられて、痛いくらいに張り詰めて昂っている。
「なぁ音芽。――こたつ、邪魔だな?」
今からここで音芽を存分に愛し尽くすのだ。
グッとこたつを足で向こう側へ押し退ける温和を、熱に浮かされた目で見上げた音芽が小さくコクッとうなずいた。
「――言ったな?」
途端温和がニヤリと笑って、音芽の敏感な肉芽をショーツ越しに擦り上げる。
「ひ、あぁ、んっ、温和ぁ、……っ」
まさかその同意が、『明日こたつを撤去する』とイコールだなんて気付けないまま。
音芽は温和に甘く淫らに啼かされる。
縛られたままの両手首から全身に甘美な痺れが流れ込むようで、音芽はビクビクと小刻みに身体を震わせた。
せっかく奏芽にもらってきたぽかぽかぬくぬくのこたつなのに。
温和の愛撫にほだされて、明日には仕舞い込まれることになってしまった。
新居が建って、その家での初めての冬が訪れるまでのおよそ一年間。
音芽はこたつに入る楽しみを奪われることになる。
だけどそんなことにも気付けないまま。今はただただ温和の腕の中。
二人きりの部屋に音芽の艶っぽい嬌声と、温和の熱を帯びた吐息だけが満ちていく――。
END(2022/12/09-12/10)
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