【完結】【R18】オトメは温和に愛されたい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■こたつ/2022年冬の書き下ろし短編

期待に応えてやらないと、な?*

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 ニヤリと微笑む温和はるまさを見て、音芽おとめがぶわりと耳まで赤く染めるから。

「うっわ。音芽ちゃん。何考えたの? や~らしいっ♪」

 温和はるまさは、音芽を揶揄からかうみたいにそう言いながら膝立ちになって、音芽の方へグッと身を乗り出した。

「い、いやらしいことなんか考えてないっ」

「ふ~ん? そう。けど俺はもうその気だから付き合えな?」

 わざと着たままにしていたスーツのジャケットを、音芽に意識させるようばさりと脱ぎ捨てると、緩めもせずそのままにしていたネクタイの結び目に手をかけて――。
 わざわざ音芽に見せつけるようにしてグイッと緩めて、首からそれを擦り抜いた。

「はる、まさ……?」

 おびえたような目で、音芽おとめ温和はるまさの手にしたネクタイを見やった。

「んー、何? 音芽はそんなにコレが気になんの?」

 温和はるまさはククッと笑って手の中のネクタイを一本の紐に仕立て直すと、意味深に音芽の眼前。なめらかな布地を滑らせるようにして、手のひらの上で動かしてみせる。

 その動きを音芽が目で追ってくるから。

「そいつは期待に応えてやらねぇと、……な?」

 温和はるまさは自身のワイシャツのボタンを上から順にくつろげていきながら、音芽を見下ろすように彼女の真ん前へ立ちはだかった。

「優秀な音芽ちゃんなら自分がこれからどうしたらいいか……分かるよな?」

 問いかける温和はるまさをこたつの中からソワソワと不安そうな――。それでいてどこか期待に満ちた目で見上げると、音芽がおずおずと両手を温和はるまさの方へ差し出してきた。

 まるで手錠を掛けられるのを待つ罪人みたいに手首の内側同士をピッタリとくっ付けるようにして伸ばされた音芽の華奢な手を掴むと、温和はるまさは手にしたネクタイでクルクルと一纏ひとまとめ。そんな音芽の両手を拘束してやる。

 シュッと乾いた衣擦れの音がして、いましめが音芽の白い肌に食い込むのを見て、温和はるまさはニヤリと口の端に笑みを浮かべた。

「なぁ音芽。お前、俺に縛られるこうされるの、好き?」

 束ねた手首を押さえつけるように、音芽の身体を横たえて。
 片手でキュッと床に縫いとめると、温和はるまさは空いた方の手で音芽の頬を優しく撫で上げる。

「ほら、俺の手。お前に触れるたびに熱を持って。もうさっきみたいに冷たくねぇだろ?」

 そのまま音芽のあごを捉えて上向かせると、
「音芽、口開けろ」
 言って、情欲に潤んだ瞳で温和はるまさを見上げる音芽にねっとりと絡みつくような口付けを落とす。

「――いい子だ」

「ふ、ぁっ、……は、るまさぁ……」

 熱に浮かされたように自分の命令に従順に従う音芽を見下ろして、温和はるまさは彼女を優しく褒めてとろけさせていく。


 ソフトSMとも言うべき、このどこかいびつな関係には、温和ご主人様からの飴と鞭が必要不可欠。


「今からこたつなんか要らねぇくらい、お前の身体を熱く火照らせてやるからな? 覚悟しろ」

 すでにほんのりとあけに色付いて。匂い立つような熱を放ち始めた音芽に覆いかぶさって宣言した温和はるまさだったけれど。

 もちろん彼の下腹部だって、そんな音芽に当てられて、痛いくらいに張り詰めてたかぶっている。


「なぁ音芽。――こたつ、邪魔だな?」

 今からここで音芽を存分に愛し尽くすのだ。

 グッとこたつを足で向こう側へ押し退ける温和はるまさを、熱に浮かされた目で見上げた音芽が小さくコクッとうなずいた。

「――言ったな?」

 途端温和はるまさがニヤリと笑って、音芽の敏感な肉芽をショーツ越しに擦り上げる。

「ひ、あぁ、んっ、温和はるまさぁ、……っ」

 まさかその同意が、『明日こたつを撤去する』とイコールだなんて気付けないまま。
 音芽は温和はるまさに甘く淫らにかされる。

 縛られたままの両手首から全身に甘美な痺れが流れ込むようで、音芽はビクビクと小刻みに身体を震わせた。


 せっかく奏芽かなめにもらってきたぽかぽかぬくぬくのこたつなのに。

 温和はるまさの愛撫にほだされて、明日には仕舞い込まれることになってしまった。

 新居が建って、その家での初めての冬が訪れるまでのおよそ一年間。

 音芽はこたつに入る楽しみを奪われることになる。

 だけどそんなことにも気付けないまま。今はただただ温和はるまさの腕の中。

 二人きりの部屋に音芽の艶っぽい嬌声と、温和はるまさの熱を帯びた吐息だけが満ちていく――。


  END(2022/12/09-12/10)
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