【完結】【R18】オトメは温和に愛されたい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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■ *Play with dolls/オマケ的SS 12

今日は温和の誕生日だよ?(1)

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「どうぞ」

 温和はるまさの後をついて、音芽おとめ自身何度も足を踏み入れたことのある彼の部屋に入る。

 やっぱりお皿だけでも洗ってくるべきだった、虫が来そうで嫌だなぁなんて、温和はるまさに気付かれない様、小さく吐息を落とした音芽は、見るとはなしに投げかけた視線の先に、信じられないものを見つけて息を飲んだ。

 見慣れたはずの温和はるまさの部屋の一角。
 基本的に単調なモノトーンで統一された温和はるまさの部屋のなか、そこだけ異彩を放っている。

(うそ……。何あれ……)

 何だかよくわからない状況に、音芽おとめは靴を脱ぎかけた姿勢のままフリーズした。

 フランス人形が着ていそうな、フリルフレアがふんだんに使われたシャンパンゴールドのドレスが、トルソーに着せ掛けられて鎮座ましましていて。
 胸元やフリルのすそ袖口そでぐちなどに金糸で施された刺繍がゴージャスさに拍車をかけている。
 そのシルエットは、これでもかというぐらい絞られたウエストとは対照的に、大きく広がったヒップラインから下のラインがとても女性らしくて素敵。
 ヴィクトリア王朝の姫君を彷彿ほうふつとさせられるような、そんなドレス。

 それはそれは豪奢ごうしゃで心奪われるドレスだけれど、それだけに如何にも〝男の部屋〟といった雰囲気の、飾り気のない温和はるまさの部屋には余りにもそぐわない代物しろものだ。

 音芽おとめが戸惑ってしまったのも無理はない。


「は、るまさ? コレ……」

 なぁに?と聞きたいのに、一気に押し寄せる情報に圧倒されて、その言葉が出てこない。

 ふと見れば、ソファそばのローテーブルの上にはそのドレスに似合いそうなネックレスやイヤリングまで用意されていた。


「見て分かんね? ドレスだけど」

 靴を脱ぎかけた姿勢のまま、所在なく玄関先に立ち尽くした状態で動かなくなってしまった音芽に、焦れた様子で温和はるまさが手を伸ばす。

「とりあえず靴脱いで上がれ」

 待ちきれないとばかりに、半ば強引に音芽の手を引いてき立てると、そのままドレスの前まで連れて行った。

「すげぇ豪華に見えんだろ?」

 だけど実際はそんなに高くないから安心しろと耳元でささやかれて、音芽おとめは「何に安心するのですかっ、温和はるまささん!」と声にならない悲鳴を上げる。

 この口ぶりから察するに、温和はるまさはこのドレスを音芽に着せようと買ったのに違いない。

「もっ、もしかしてコレを私に着ろとか」

 言わないですよね!?と言いたかったのに「お前以外に誰が着んだよ?」と逆に問われてしまった。

「は、温和はるまさ?」

 なに言ってるの?のつもりでつぶやいた声に、「俺は女装の趣味なんてねぇよ」と不機嫌な声が応じる。

 いや、そんなこと、分かってます。
 分かってますし、あのサイズはどう見たって温和はるまさ向きではありません。

 でもだからと言って――。

「きょ、今日は温和はるまさの誕生日、だよ?」

 プレゼントを渡すのは音芽であって、温和はるまさではないはずだ。

(なのに何この状況……。意味分かんないっ!)
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