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■早く食べ終わって?/オマケ的SS⑦

すぐ綺麗にしないとベタベタになっちまう

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***

「もぉ! 食べるにしてもせめてちゃんと座ってから!」

 追い立てるようにリビングに温和はるまさを追いやると、ソファに並んで座って透明な袋を開ける。

あっつ……」

 温和はるまさがつぶやいて、アイスをくわえたまま扇風機のスイッチを入れた。

温和はるまさ、お行儀悪い!」
 言ったら、「音芽おとめさん、まるで学校の先生みたいですよ」って笑うの。

 いや、私もあなたも先生じゃん!

 思ったけど、確信犯だろうし、と思ってあえてスルー。
 なのに、「わー、今日の音芽、やけに塩対応っ」とか。

 だって私、夕飯作りさせてもらえてないし、結構ソワソワしてるのよ?
 それに……何より――。

 酸味のあるアイスを一口かじりながら、温和はるまさをチラッと窺い見たら、「あー、ごめんって。次はお前の好きなアーモンドチョコのやつ買っていいから。……な?」って。

 温和はるまさめ。分かってて自分の好きな方を優先したのね?
 
 思ったら、何だか急におかしくなった。

温和はるまさ、ホント子供みたい」

 2つ年上で、お兄ちゃんみたいな頼れる存在。

 それが、私がずっと温和はるまさに対して抱いていた評価だったんだけどな。

 一緒に暮らすようになって、案外彼は子供っぽいところがある可愛らしい人だ、と気付かされた。

「そういうの、嫌い?」
 気が付けば、いつの間にかアイスを食べ終わっている温和はるまさに、ウソォ!って思う。

「な、音芽。答えろよ」

 対して私の方は、一口しかかじっていないアイスが、扇風機の風に煽られて溶け始めている。

「垂れちゃうっ」
 慌てて垂れないように棒を上にしてもう一口齧ったら、温和はるまさに腰を引き寄せられた。

「あ、ちょっと待って、今ダメっ」

 アイスが溶けて落ちちゃいそうなの!
 逆さまのままにしておくのも、棒から落ちてしまいそうで元に戻してみたものの、扇風機を止めなきゃ溶けるの早過ぎ!

 ソワソワと慌てる私を横目に、温和はるまさが瞳を細めた。

「ね。さっきの質問の答え、まだ?」

 大好きな温和はるまさに、真正面からじっと見つめられたら、私は彼に抗えない。

「き、嫌いじゃない……です」
 それでも恥ずかしさに思わず視線を逸らしてから、うつむきがちにつぶやいた。

「ん? 何? 小さくて聞こえねぇな?」

 意地悪く耳元に吹き込むように再度問いかけられて――。

 そうこうしているうちに手に持ったアイスから、とうとう冷たいしずくが流れ始めた。

 それを、グイッと手を押さえつけてひじから指先に向かって舐め上げながら、温和はるまさが熱に浮かされたような目で見つめてくるの。

 アイスを食べ終えたばかりだからかな?
 温和はるまさの唇も舌も冷たくてゾクゾクする……。
 ってそんなことを考えている場合じゃなくて!

「なぁ音芽おとめ、それ、早く食べ終わって? お前のアイスで濡れ光った唇、すげぇそそられるんだよ」
 
 掠れがちな艶めいた声でそう付け加えてから、「お前がそれ食い終わったら、今度は俺がお前を食う番な?」とか。

 いや、だから夕飯っ!

 心の中で抗議した瞬間、ホロリと崩れたソーダ味のアイスが、あろうことかオープンカラーになったワンピースの襟口えりぐちの中に落ちてきて、胸の膨らみの上で砕けた。

「ひゃっ」
 冷たくて思わず悲鳴を上げたら、それを合図にしたみたいに温和はるまさにソファに押し倒される。

「あー、こりゃ、大変だ。すぐ綺麗にしないとベタベタになっちまう」

 嬉々とした様子の温和はるまさに、ひとつずつボタンを外されながら、夕飯が食べられるのは何時になるんだろう?ってぼんやりと思った。



      END(2020/09/18)
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