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⑥『Eight years later』
兄のお陰で、兄のせい4
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私としてはもっと温和に似てくれた方が嬉しかったんだけど、あの子が温和から引き継いだのは指の形と目元だけで。
私と違って和音の目元はキリッとしたシャープな印象の二重で、それはまぎれもなく温和から遺伝したところなんだけど……。
そこ、お兄ちゃん似だと言われたらそう見えなくもない感じなのが困りどころでもあるの。
よく見たら目尻の感じとか……お兄ちゃんの目元とは違って少し優しげで、やはり温和からの遺伝に違いないって分かるんだけど……基本的なパーツが兄と似ている私から、だから……。
下手すると私よりお兄ちゃんに似てる気がするときすらあるの。
実際お兄ちゃんはよく和音の父親に間違われたりするみたい。
お兄ちゃんにはその自覚、あまりないんだけど……和音は知らない人から「パパとお出かけいいわね~」とか話しかけられてムッとするのだと話してくれるから……多分そうなんだと思うの。
「奏芽、私のパパじゃないのにっ!」
プンスカと小さな唇を突き出す可愛らしい娘の顔を思い出して、私は小さく吐息を落とす。
お兄ちゃん、私が子供の頃は散々「音芽は不細工だ」ってひねくれた意地悪をしてきたことを思えば、素直に姪っ子のことを「可愛い」と褒めてくれるのは喜ばしいことなのかも知れない。
知れないけど……!
「ねぇお兄ちゃん! 和音がお兄ちゃんのこと好きだって……気付いてる?」
とうとう我慢できなくなって、溜め息混じりにそう問いかけたら、『可愛がってる姪が叔父を好きなのって何か問題あんの?』って、鈍感ですか!?
私のことを、温和がやたらと鈍感娘って言うけれど、きっとお兄ちゃんもだ。
「和音のそれは恋愛感情の“好き”です!」
電話だから睨み付けられないのがすっごく残念!
私が声に怒気を滲ませてそう言ったら、電話口で息を飲む気配があった。
『マジか』
ややしてポツンとつぶやかれた言葉に、私は「マジです」と冷ややかに返す。
『なぁ音芽。――俺、いま本気で好きな子いんだけど』
あまりに鈍感すぎる兄が腹立たしくて、危うく彼が人生最大の告白をしてきたのを聞き逃しそうになってしまった。
『こりゃ、和音にもちゃんと伝えとかなきゃまずそうだな』
って。
ん!? ん!? んーっ!?
いま、お兄ちゃん、何て言ったの!?
本気で好きな……子がいる、とかなんとか……言わなかった!?
き、聞き間違いじゃない、よ、ね?
あの“遊び人”で有名だったお兄ちゃん、が!?
ひゃーっ。嘘でしょ!?
瞬間、和音のことがポォーンと頭から飛んでいってしまうぐらい、それは私にとって衝撃の告白だったの。
お、お母さん、何か知ってるかしら?
私と違って和音の目元はキリッとしたシャープな印象の二重で、それはまぎれもなく温和から遺伝したところなんだけど……。
そこ、お兄ちゃん似だと言われたらそう見えなくもない感じなのが困りどころでもあるの。
よく見たら目尻の感じとか……お兄ちゃんの目元とは違って少し優しげで、やはり温和からの遺伝に違いないって分かるんだけど……基本的なパーツが兄と似ている私から、だから……。
下手すると私よりお兄ちゃんに似てる気がするときすらあるの。
実際お兄ちゃんはよく和音の父親に間違われたりするみたい。
お兄ちゃんにはその自覚、あまりないんだけど……和音は知らない人から「パパとお出かけいいわね~」とか話しかけられてムッとするのだと話してくれるから……多分そうなんだと思うの。
「奏芽、私のパパじゃないのにっ!」
プンスカと小さな唇を突き出す可愛らしい娘の顔を思い出して、私は小さく吐息を落とす。
お兄ちゃん、私が子供の頃は散々「音芽は不細工だ」ってひねくれた意地悪をしてきたことを思えば、素直に姪っ子のことを「可愛い」と褒めてくれるのは喜ばしいことなのかも知れない。
知れないけど……!
「ねぇお兄ちゃん! 和音がお兄ちゃんのこと好きだって……気付いてる?」
とうとう我慢できなくなって、溜め息混じりにそう問いかけたら、『可愛がってる姪が叔父を好きなのって何か問題あんの?』って、鈍感ですか!?
私のことを、温和がやたらと鈍感娘って言うけれど、きっとお兄ちゃんもだ。
「和音のそれは恋愛感情の“好き”です!」
電話だから睨み付けられないのがすっごく残念!
私が声に怒気を滲ませてそう言ったら、電話口で息を飲む気配があった。
『マジか』
ややしてポツンとつぶやかれた言葉に、私は「マジです」と冷ややかに返す。
『なぁ音芽。――俺、いま本気で好きな子いんだけど』
あまりに鈍感すぎる兄が腹立たしくて、危うく彼が人生最大の告白をしてきたのを聞き逃しそうになってしまった。
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ん!? ん!? んーっ!?
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き、聞き間違いじゃない、よ、ね?
あの“遊び人”で有名だったお兄ちゃん、が!?
ひゃーっ。嘘でしょ!?
瞬間、和音のことがポォーンと頭から飛んでいってしまうぐらい、それは私にとって衝撃の告白だったの。
お、お母さん、何か知ってるかしら?
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