243 / 409
③ 愛されている実感を
初めての時は痛かったけど、今日も痛いのかな
しおりを挟む
温和は、私からの幼稚園児並みのキスを受け止めて、大人のキスに導き直してくれるの。
ちゅく、っと舌が唾液を絡めて蠢く音に、目端にじんわりと涙が滲む。
気持ち……いい。
うっとりと熱に浮かされて、温和に支えられて立っているのがやっとの私の耳元へ、
「音芽、ベッド、行こうか?」
彼自身も堪えきれないように掠れて艶めいた声音でそうささやいてきて、私は恥ずかしさに頬を染めながらも小さくうなずいた。
初めての時は痛かったけど、今日も痛いのかな。
温和に手を引かれて、ほんの数歩先のベッドに向かいながら、グルグルとそんなことを考える。
***
甘く重怠い疼痛を訴える腰の違和感に、愛された実感を覚えながらのシャワーから戻ると、温和の穏やかな寝顔があった。
パジャマがなかったのでとりあえず、と着てみたスリップの下は、ブラはおろかショーツさえ身に付けていない。
だって。
履いたほうがいいかなって手にしたショーツは、温和に脱がされた時にはもう随分としっかり濡れそぼっていて、とても再度身に付けられるような状態ではなかったんだものっ。
「温和、可愛い」
情事の後、そのまま眠りそうになっていた私を促して、「シャワーだけは済ませておけよ」って言ってくれた温和だったのに。
私がそうしている間に、自分は疲れて眠ってしまったのね。
無理もない。
彼は昨日の夜、ほとんどまともに眠れていなかったみたいだし、それに――。
先ほどまでのあれこれをふと思い出して、途端赤面してしまう。
温和、私のおねだり通り……いやそれ以上に……私に愛されているんだって実感を沢山沢山注ぎ込んでくれた。
視線を転じると、お互いに残しあった胸元のキスマークが目に付いて、彼は私の、私は彼のものなんだとキュン、と甘やかに胸が疼く。
そういえば――。
私、温和の写真、高校生の時に買った、例の修学旅行の写真以来、ちゃんとしたの、持っていない。
そう気付いたらソワソワと落ち着かなくなって、私はそっとベッドから離れると、玄関付近に放置されたままになっていた鞄からスマホを探して戻ってきた。
すやすやと眠る彼をこっそり写真に収めてから、ふふと笑って、もう一度布団にもぐり込む。
温和は私の気配を察すると、無意識なのかな。
眠ったまま私の頭を優しく撫でてくれて、背後からギュッと抱きしめてくれた。
起きなきゃいけない時間まではまだあと数時間。
薄い布越しに温和の体温を感じながら、私はそっと目を閉じた。
ちゅく、っと舌が唾液を絡めて蠢く音に、目端にじんわりと涙が滲む。
気持ち……いい。
うっとりと熱に浮かされて、温和に支えられて立っているのがやっとの私の耳元へ、
「音芽、ベッド、行こうか?」
彼自身も堪えきれないように掠れて艶めいた声音でそうささやいてきて、私は恥ずかしさに頬を染めながらも小さくうなずいた。
初めての時は痛かったけど、今日も痛いのかな。
温和に手を引かれて、ほんの数歩先のベッドに向かいながら、グルグルとそんなことを考える。
***
甘く重怠い疼痛を訴える腰の違和感に、愛された実感を覚えながらのシャワーから戻ると、温和の穏やかな寝顔があった。
パジャマがなかったのでとりあえず、と着てみたスリップの下は、ブラはおろかショーツさえ身に付けていない。
だって。
履いたほうがいいかなって手にしたショーツは、温和に脱がされた時にはもう随分としっかり濡れそぼっていて、とても再度身に付けられるような状態ではなかったんだものっ。
「温和、可愛い」
情事の後、そのまま眠りそうになっていた私を促して、「シャワーだけは済ませておけよ」って言ってくれた温和だったのに。
私がそうしている間に、自分は疲れて眠ってしまったのね。
無理もない。
彼は昨日の夜、ほとんどまともに眠れていなかったみたいだし、それに――。
先ほどまでのあれこれをふと思い出して、途端赤面してしまう。
温和、私のおねだり通り……いやそれ以上に……私に愛されているんだって実感を沢山沢山注ぎ込んでくれた。
視線を転じると、お互いに残しあった胸元のキスマークが目に付いて、彼は私の、私は彼のものなんだとキュン、と甘やかに胸が疼く。
そういえば――。
私、温和の写真、高校生の時に買った、例の修学旅行の写真以来、ちゃんとしたの、持っていない。
そう気付いたらソワソワと落ち着かなくなって、私はそっとベッドから離れると、玄関付近に放置されたままになっていた鞄からスマホを探して戻ってきた。
すやすやと眠る彼をこっそり写真に収めてから、ふふと笑って、もう一度布団にもぐり込む。
温和は私の気配を察すると、無意識なのかな。
眠ったまま私の頭を優しく撫でてくれて、背後からギュッと抱きしめてくれた。
起きなきゃいけない時間まではまだあと数時間。
薄い布越しに温和の体温を感じながら、私はそっと目を閉じた。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる