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お見舞い

俺たち、来年の夏に式を挙げようと思っています

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大我たいがさん、ベッドのところのテーブル、出しても?」

 ベッドにまたがるように設置された長細いテーブル――オーバーテーブルを指差すなっちゃんに、「もちろん」と応えると、鶴見つるみ先生が「狭くてすみません」と言って。

 その表情からは、先程までのどこか仄暗ほのぐらい陰は消えていて、いつものにこやかで穏やかな同僚の鶴見先生だった。

 個室ではないけれど4人部屋なので、大部屋ほど窮屈ではない。

 とはいえ、カーテンで仕切られた空間に大の大人が4人は結構ぎゅーぎゅーで。


***


 なっちゃんと2人で、袋の中からひとつずつコーヒーをテーブルに出す。

「皆さん、内緒話はすまれました?」

 各々にカップが行き渡ったのを確認して、なっちゃんがそう言って、クスッと笑った。

「内緒話ですか? はい。すみましたよ。僕は今、撫子なでしこと付き合っていますので僕が居ないからって手を出さないでくださいねって霧島きりしま先生に釘を刺させて頂いていたところです」

 なっちゃんにニコッと笑いかける鶴見つるみ先生に、温和はるまさが「は? それ、逆でしょう」と応酬する。


 さっきの今で、温和はるまさ相手にこんな軽口が叩ける鶴見つるみ先生のメンタルは、やはり私には理解不能で……どこか不気味にすら思えて。

 でも温和はるまさはそんな鶴見先生のげんに何の戸惑いもなく乗るの。
 ある意味温和はるまさも海千山千の強者つわものかもって思った。

「俺の音芽おとめに2度と言い寄らないでくださいねって話だったんじゃなかったですかね?」

 恥ずかしいことを平気で言い合う男性陣に、なっちゃんと顔を見合わせて眉根を寄せる。

 そうして堪え切れなくなって、2人で笑い合ってから、「私たちも恋人を取らないでねって言い合いしなきゃダメですかね?」って私が言ったら「あー、オトちゃんが大我たいがさんにそういうことしたら私、恨んじゃう!」って返してくれて。

 そんなことありっこないのにね、って笑って、コーヒーを飲んで。

 ん、苦いっ!

 そういえば私、コーヒーはミルクたっぷりじゃないと飲めなかった。

 そう思ったけど、楽しそうなみんなの様子を見ていたら、いつもは飲めないはずのブラックコーヒーが不思議とそこそこ飲めて――。

 アイスコーヒーだったのも、氷で薄まるのと、冷たさで舌が麻痺するから良かったのかも知れない。


***


 いち早くコーヒーを飲み終えた温和はるまさが、「そういえば……俺たち、来年の夏に式を挙げようと思っています。おふたりとも是非いらしてくださいね」と言って。

 私は思わずコーヒーを吹き出しそうになってしまった。

 え!?
 まだ何も煮詰めてないのに、それ、決定事項だったの!?

 温和はるまさぁーーーー!

 何だか知らないうちに外堀をどんどん固められているように感じるのは……気のせいでしょうか?
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