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お見舞い

本当に私のことを好きでしたか?

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「僕も……今は逢地おおち先生――撫子なでしことお付き合いさせて頂いていますし、あなた方の前でも先程、あえて隠さず“撫子”と呼ばせていただきました。だからお互い様です」

 次いでそう言い募られて、そう言えばそうだったと思い至った私は、小さくうなずいた。

 首肯そうしながら、このタイミングで、私はどうしても“あのこと”を聞きたくてたまらなくなってしまったの。

「あ、あの……鶴見つるみ先生。先生は……あの時、本当に私のことを好きでしたか?」

 何だかそうではない気がして。
 好きとか嫌いとか……そういうのとは違う次元で、彼は私に執着しているように思えたのだ。

「……」

 私の言葉に鶴見つるみ先生が驚いたように瞳を見開いた。

「――何でいきなりそんなことを?」

 聞かれて、私はソワソワする。
 自分の横に立つ温和はるまさをちらりと見つめてから、恐る恐る口を開いた。

「こんなこと言ったら甘いって叱られてしまうかもしれないんですけど……」
 この前置きは鶴見先生に対して、というより温和はるまさに対して。

 今から私が言うことは、温和はるまさにとっては少なからず面白くないって感じられることだと思うから。
 敢えてそう前置きすることで「お願いだから途中で口を挟まないでね」という気持ちを込めたつもり。

「私と鶴見つるみ先生は……年こそ同い年じゃないですけど、勤め始めたのが同じ年の春で……いわゆる同期です。それで……というのも変な話かもしれないんですけど……私、他の先生方より鶴見先生のこと、知っているつもりでいたんです。だから余計に感じたんですけど――」

 横目にちらりと温和はるまさを確認したら、不機嫌そうに眉をピクッと動かしはしたけれど、口を挟んでくる気配はなさそうでホッとする。

 ごめんね、温和はるまさ
 面白くないかもしれないけど……。でもお願い、最後まで言わせて?

「私をどうこうしようとしていた時の鶴見先生は……その……私の知っている鶴見先生じゃなかったように思うんです。――す、少なくとも……私が知っているあなたは……同僚を脅してどうこうしようとするような人じゃないかな、って……」

 しどろもどろになりながらも何とかそう言ったら、鶴見先生が明らかに驚いたように瞳を見開いた。
 それから不自然に私から視線を逸らして――。

「鶴見先生?」

 私の言葉を肯定も否定もしない彼に、再度呼びかけたら、鶴見先生が「参りましたね」と吐息を漏らすように小さくつぶやいた。
 その苦しそうな声音に、私は思わず息を呑む。

「――おかしいと……思いませんか?」

 不意に話を変えられたようで、え?と思う私の肩を、温和はるまさが少し落ち着け、とでも言うふうに軽く抱いてくれる。
 温和はるまさの温もりを感じられるだけで、こんなにも心穏やかになれるから不思議。
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