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メッセージ
裏側の刻印はお間違いございませんでしたか?
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指輪が出来たと連絡が入って、温和と2人、終業後にすぐ受け取りに行った。
お互いに相手が自分の指輪に何と言うメッセージを刻印してくれたのかまだ知らないの。
行きがけの車中で温和に「何て入れてくれたの?」って聞いたら、「忘れた」って。
頭のいい温和に限ってそんなことあるわけない。――意地悪。
「そういうお前は何て入れたんだよ?」
温和が私の指に嵌まる例のクローバーリングを撫でながら聞いてくる。
「わ、忘れちゃった」
私は温和を真似てそう言ってから、ベッと舌を出してそっぽを向いた。
「音芽、俺に意地悪したらどうなるか忘れたの?」
なのに温和ってば大人気ない。
自分だって同じことをしたくせに、私にはそういうこと言うのね。
でも彼ならやりかねない。
ソワソワとした目で温和を見つめたら、ククッと笑われて、
「ま、指輪受け取ったら分かることか。それまでのお楽しみってことで許してやるよ」
私の手をギュッと掴んで彼が言う。
「お仕置きは……しない?」
恐る恐る聞いたら「お望みならするけど?」って……。
私は慌てて首をブンブン振った。
***
「こちらです。ご確認ください」
温和と私の前に赤いリボン付きの白のリングケースが置かれる。
温和にお願いします、と言う視線を投げかけたら彼がうなずいて、無言でリングケースを手に取って。
「音芽、開けるよ?」
って優しく声をかけてくれるの。
お互いに自分が刻印した側の指輪――温和は私の、私は温和の――を手に取る。
リングの内側に目を凝らして、自分が相手に送ったメッセージがちゃんと間違いなく彫られていることを確認して――。
温和がそのまま付けて帰りますって宣言して、私の指にはまるクローバーリングを抜き取って、受け取ったばかりのリングを嵌めてくれた。
クローバーリングが、代わりにリングケースに収まる。
「あ、あのっ……私まだ……」
言うと「俺もまだお前からのは見てねぇよ」って耳打ちされて。
私は温和の左手薬指に彼のリングを嵌めながら、ドキドキが止まらない。
「裏側の刻印はお間違いございませんでしたか?」
聞かれて、温和と顔を見合わせる。
私がうなずくのを確認して、温和が「大丈夫です」と答えてくれて。
***
「ありがとうございました。――末長くお幸せに」
店員さんの言葉に見送られて、温和とふたり、小ぶりの白い紙袋を手に歩く。
中には小さなリボンのかかったリングケースがひとつ。
でももともと中に入っていた結婚指輪はお互いの指に嵌まっていて、代わりに今まで私が仮初でつけていたクローバーリングがポツンと収まっている。
お互いに相手が自分の指輪に何と言うメッセージを刻印してくれたのかまだ知らないの。
行きがけの車中で温和に「何て入れてくれたの?」って聞いたら、「忘れた」って。
頭のいい温和に限ってそんなことあるわけない。――意地悪。
「そういうお前は何て入れたんだよ?」
温和が私の指に嵌まる例のクローバーリングを撫でながら聞いてくる。
「わ、忘れちゃった」
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「音芽、俺に意地悪したらどうなるか忘れたの?」
なのに温和ってば大人気ない。
自分だって同じことをしたくせに、私にはそういうこと言うのね。
でも彼ならやりかねない。
ソワソワとした目で温和を見つめたら、ククッと笑われて、
「ま、指輪受け取ったら分かることか。それまでのお楽しみってことで許してやるよ」
私の手をギュッと掴んで彼が言う。
「お仕置きは……しない?」
恐る恐る聞いたら「お望みならするけど?」って……。
私は慌てて首をブンブン振った。
***
「こちらです。ご確認ください」
温和と私の前に赤いリボン付きの白のリングケースが置かれる。
温和にお願いします、と言う視線を投げかけたら彼がうなずいて、無言でリングケースを手に取って。
「音芽、開けるよ?」
って優しく声をかけてくれるの。
お互いに自分が刻印した側の指輪――温和は私の、私は温和の――を手に取る。
リングの内側に目を凝らして、自分が相手に送ったメッセージがちゃんと間違いなく彫られていることを確認して――。
温和がそのまま付けて帰りますって宣言して、私の指にはまるクローバーリングを抜き取って、受け取ったばかりのリングを嵌めてくれた。
クローバーリングが、代わりにリングケースに収まる。
「あ、あのっ……私まだ……」
言うと「俺もまだお前からのは見てねぇよ」って耳打ちされて。
私は温和の左手薬指に彼のリングを嵌めながら、ドキドキが止まらない。
「裏側の刻印はお間違いございませんでしたか?」
聞かれて、温和と顔を見合わせる。
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***
「ありがとうございました。――末長くお幸せに」
店員さんの言葉に見送られて、温和とふたり、小ぶりの白い紙袋を手に歩く。
中には小さなリボンのかかったリングケースがひとつ。
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