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*束の間だけ逆?

待てとか無理っぽいだろ?

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音芽おとめ

 ベッドに下ろされてすぐ、温和はるまさに優しく名前を呼ばれて、私はくすぐったさに首をすくめる。

「口、開けて」
 正面に立って私を見下ろす温和はるまさから熱っぽく言われると、彼と何度も唇を重ねて、それが何を意味するのか覚えてしまった身体は、いやらしくもこれから起こることを期待してキュン、と疼いてしまう。

 言われた通り、おずおずと小さく唇を開くと、温和はるまさがしゃがみ込むようにして柔らかい唇を重ねてくれる。
 そうして無防備に開いたままの口中に、彼の舌が伸びてきて――。
 ぬるりとしたなめらかな感触に、私はゾクッと身体を震わせる。

「音芽、お前、キス、好きだよな」
 うっとりと彼の蹂躙になすがままだった私に、温和はるまさがククッと笑ってそんなことを言う。
 どちらの唾液とも分からないもので濡れ光った私の唇を、温和はるまさが優しく拭ってくれる。

「そっ、そんなことっ……」
 ないって言えなくて語尾がゴニョゴニョと濁る私を見て、温和はるまさが堪えきれないようにギュっと抱き締めてきた。

「俺は……お前とキスするの、好きなんだけどな?」

 温和はるまさは本当、ずるいっ。
 いつもはこの上なくひねくれもので素直じゃないくせに。
 エッチの時だけはやたらと素直なんだもの――。

温和はるまさはやっぱり……」
 ジキルとハイドだと思う。
 その言葉を寸でのところで飲み込んで、私は彼にしがみついた。


 そうして温和はるまさの耳元で精一杯強がって見せるの。
「私は……よく分からない、です……」
 って。

 本当は彼とする何もかもが心地良くておかしくなってしまいそうな癖に、なんとなくそれを認めるのが悔しくて、たまにはこんな風に反抗してみたってバチは当たらないんじゃないかしら?って思ってしまった。

 温和はるまさは私の言葉に一瞬きょとんとすると、フッと笑って私の鼻をギュッとつまんだ。

「今日はやけにひねくれ娘ですね、音芽おとめさん」

 言われて、私はどっちが!って言いたくなったけれど、その言葉を飲み込んだ。

 いつも言われる「鈍感娘」や「バカ音芽」と、どっちがマシかしら。
 そんなことを思ってしまって。

「あ、あの……温和はるまさ。お風呂……」

 温和はるまさにほんの少し触れられただけで下腹部が堪らなく疼いて、下着がふしだらに濡れてしまっている。

 それを隠したくて恐る恐る言ったら、「片付けもさせてやれねぇくらい切羽詰まってんのに、そんなの待てると思う?」って言われてしまう。

 ばかりか、手を取られて彼の中心に触れさせられて――。

 手の中でドクン、と脈打つ熱い塊に、
「ひゃっ」
 思わずビックリして手を引っ込めたら、「な? 待てとか無理っぽいだろ?」って耳元に吹き込まれた。

 私は自分同様、まだキスしかしていないのに、私より遥かに手だれなイメージの温和はるまさが、そんな風になってしまっているのにただただ驚いて……。でも同時にすごく嬉しかったの。
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