【完結】【R18】オトメは温和に愛されたい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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近付くなって言ったよな?

私以外の人を抱きしめないで

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「貴方から川越かわごえ先生のにおいが、してる……」

 温和はるまさの目をじっと見つめて言う。
 怖いけど、逸らしたり、しない。

温和はるまさ、川越先生を抱きしめたり……した……?」

 恐る恐る……でもはっきりと疑念を問いかけたら、温和はるまさが一瞬きょとんとしてから、次いで怒ったように眉根を寄せて「あの女」って腹立たしげにつぶやいた。

「……すまん、音芽おとめ。――俺の、……ミスだ」
 言って、温和はるまさが私をじっと見つめてから「今度からこんな事ないように気をつける」って言った。

 はっきりとそうだと言葉にはしなかったけれど、それは彼女を抱きしめていないという意思表示にも取れなくて、しかも今後もそう言うことがあるかもしれないと示唆しさする発言とも取れて。

 不安になった私は
「……イヤ!」
 気が付いたら、自分でもびっくりするぐらいハッキリと温和はるまさにそう訴えていた。
「どんな理由があっても……そういうのは、嫌っ! 温和はるまさ、お願いだから……私以外の女性ひとを……抱きしめたり……しないで!?」

 私、大抵のことは我慢できる。
 温和はるまさに強く言われたら逆らえない。そう言うところがあるの、自覚してる。
 でも、そんな私にだって、許せないことがあるんだって分かって……欲しい。

 何でも容認できるわけじゃ、ないんだよ?

 言って、温和はるまさをじっと見つめたら、彼がハッとしたように瞳を見開いて。

温和はるまさ……お願い」

 もう一度そう言ったら、涙がポロリとこぼれ落ちた。

音芽おとめ……」
 慌てたように腰を浮かせた温和はるまさが、私にしっかりと視線を合わせた。

「分かったから落ち着けよ。こんな状況だし……信じてもらえねぇかも知れねぇけど……俺、お前以外の女を抱きしめたりしねぇし、これからもそういうことするつもりないから。もう2度とこんなにおいをようなヘマもしないって誓う。だから……頼む。――泣きやめよ」

 言って、「なぁ音芽。お前は……学生の頃より強くなってるって……思っていい……のか?」
 私の頭を撫でながらそっとそんなことを問いかけてくる。

 私は温和はるまさの言葉の意味が理解できなくて、彼を見つめた。

***

 温和はるまさに学生の頃の話を持ち出されて、私はふと思い出す。

「あのね、温和はるまさ。……私、川越かわごえ先生に初めましてをした時……頭の中に膜がかかったみたいな変な感じになったの。あのとき、川越先生と初めて会った気がしなかったのは……私の気のせい? それとも……思い出せていないだけで、どこかで――例えば学校やなんかで……会ってたりする、のかな……」

 言いながらも、やはりそのことを深く思い出そうとしたら、何かが邪魔をしてモヤモヤと居心地の悪い気分になる。

「――もしかして……温和はるまさも彼女のこと、昔から知ってた? 川越先生は……温和はるまさの……元カノ?」

 それは、ずっとずっと心の奥底でおりのようにわだかまっていた疑問。
 ハッキリと聞いてしまったら……何かが壊れてしまうような気がして、思っていてもずっと口にできなかった思い。

 温和はるまさの腕をギュッと掴んでそう問いかけたら、情けないぐらい手が震えた。
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