【完結】【R18】オトメは温和に愛されたい

鷹槻れん(鷹槻うなの)

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それでも朝はやってくる

いっそ休んでしまいたいっ

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 家から職場――私立の小学校――まではアパートから徒歩十分圏内。

 昨日転んで負った怪我は、温和はるまさが綺麗に洗ってくれたのが良かったのか、今のところ化膿などしそうには見えなくて。
 ただ、転んだ際に結構強く膝を地面に打ち付けたみたいで、傷口の痛みとは違った鈍痛が、歩くたびに膝に走った。
 心持ち、膝が腫れて熱を帯びている気もする。
「うー、これは歩くの結構しんどいかも」
 というより、子供たちと接するときに不自由かも。

 私の受け持ちは二年二組。
 一年生ほど園児に近くはないけれど、やっぱりまだまだ低学年。
 甘えたい盛りの子供たちだから、日々抱きつかれたり負ぶさってきたりされていて。

 今日はそれがしんどいかもしれない。

 体育の授業は、二年一組――温和はるまさの受け持ちのクラス――と合同だからそこは彼に頼れるとして……。

 いつもの調子でそこまで考えてから、私の頭はトリ頭ですか!?とハッとする。

 イーヤーだぁー。

 授業しごととはいえ温和はるまさと45分間も一緒にいなきゃいけないとか、苦行ですか!?

 いやそれ以前として――。
 職員室でも席、隣り合わせでした……。
 児童らがいるときは殆どの時間を教室で過ごすからいいとして……問題は朝礼の時と放課後……かな。
 二年生の学年主任の温和はるまさと、同学年を受け持っている以上、連絡を取り合わないわけにはいかないわけでっ。

(あーん、いっそ休んでしまいたいっ)

 とか現実逃避なことを思ったけれど、可愛い子供たちの顔を思い出すと、そういうわけにもいかず。

 私はほうっと溜め息をつくと、渋々ながらも出勤のための支度したくを進めていく。
 箪笥たんすから選び出した、コットンの白い長袖Tシャツの上に、ターコイズグリーンの薄手のカーディガンを羽織る。下はティーグリーンの、ミモレ丈のスカンツ。
 姿見の前で全体のバランスをチェックして、まぁまぁかな?と思う。ただ、コーディネートはともかくとして、歩くたびに布地が傷口に擦れて痛いのが、しんどい。
 これは少し早めに家を出て、コンビニに寄り道して絆創膏を買わないと。
 大きいサイズがなかったら、とりあえず重ね貼りで対応すればなんとかなる……かな。
 仕事後に薬局に寄って、ちゃんとしたのを買うとして、今日のところはとりあえず。

 そんなことを思っていたら、まだ六時過ぎだというのにチャイムが鳴った。
 こんな時間に来訪者とか……。嫌な予感しか、しない……。
 インターホンのモニターを確認すると……ビンゴ。
 ムスッとした顔で、スーツ姿の温和はるまさが立っていた。

 どうしよう。居留守、使っちゃう……?

 部屋の電気も煌々こうこうとついていて……テレビからは朝のワイドショーが流れている。
 こんな状態で居留守とか……無理、です、よね?

 っていうか温和はるまさ
 昨夜の今朝でうちのチャイムを鳴らせるとか……どういう神経してるの。

(いや、何にも思ってないだけ……か)

 私が思うほど、温和はるまさは昨日の出来事を重く受け止めていないんだ、きっと。

 そう思ったら、ウジウジ思い悩んでいる自分がバカみたいに思えてきた。
 気にしない素振りをしてくれるんなら、私もそれに乗っかった方が楽かもしれない。仕事のこともあるし。

 私はぐっと拳を握りしめると、玄関に向かう。
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