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第1章 少年期〜覚醒編〜

第2話 使わないもの

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 「神殿?」

 「そうだ、ここがクロス神殿。
 今からファミリアが固有スキルを授かる場所だ。」


 お父さんは、いつもの冒険者の格好ではなく、紺色のスーツのような服装で、同じくスーツ風の衣装を纏う僕を神殿へ案内してくれた。

 今日は、この世界の住人なら誰でも授かるという固有スキルを与えられる日。
 どうしたって緊張してしまう。


 「あんまり強張らなくていいぞ、ファミリア。
 神官から与えられる固有スキルは、態度で決まったりするものではないからな。
 ファミリアの真の状態……心に合ったものが固有スキルになる」

 「そうなんだ。はじめて知った……
 うん。少しだけど、楽になった気がする」

 「おうおう、そのくらいの感じでいい。
 気楽に行ってこい!」

 「うん、パパ!行ってきます」


 僕のおうちは、お母さんだけじゃなくてお父さんも優しい。
 僕は、ふたりの子どもに生まれて幸せだな

 ありがとう。

   
 入口でお父さんと離れると、少し古くさいけど、豪華で立派な広間があった。

 大っきい広間の奥には、十つの扉があった。その扉の向こうには各部屋につき一人の神官様がいるらしい。
 きっと、その部屋の中で固有スキルを授けられるのだろう。  
 各部屋の前には、僕と同年代だと思われる子どもたちが列をなして並んでいた。


 僕はその中から、いちばん人の少ない列を選んで自分の番が来るのを待った。

 やっぱり少し緊張するけど、お父さんが言ってたことを思い出すと、だんだんと気持ちは落ち着いていった。

  
 あっ、次は僕の番だ!


 「さあ、少年。
 まずは君の名前を聞かせておくれ」

 「ファミリアです!
 ファミリア・ビンドウィードといいます」

 「ビンドウィード様というと…… 
 あのハルス・ビンドウィード様のご子息にあらせられますか!」


 目の前の神官様は、かなり年老いている男の人のように見えるが、並んでいたときに感じた威厳はどこか遠くへ消え去ってしまったみたいだ。
 お父さんの子だと知って、慌てている。


 「うん!ボクのお父さんはハルスで間違いないよ」

 「左様でございますか……ハァ、これも神によるめぐりわせなのでしょう。
 私は、あなたのお父様ハルス様に固有スキルを差し上げた神官なのですよ。」

 「えっ、そうなの!?こんな偶然あるんだね!」
 

 お父さんの固有スキル《指導者》

 このスキルの初期効果は、"スキル使用者自身と共に戦う仲間のステータスがそれぞれ2倍になる(効果時間:1分間)"という、いわゆるチートスキルだったが、驚くべきなのはそこからだった。

 固有スキルは、自身と向き合って努力することで、初期効果→中期効果→終期効果とスキルの内容が増えていき、使い分けができるようになると知られている。


 お父さんの場合、中期効果が化けた。

 "効果対象の最も強い意欲を反転させる(効果時間:10時間)"
 
 例えば、戦闘中に相手が欲に満たさられていたなら、反転させて喪失状態にさせることが可能になる、とんでもないスキルだ。


 けど、お父さんはこの中期効果を得てから、使ったことは数えるほども無いらしい。

 お父さんは、人情にあふれて優しい人だから、なぜか性に合わないこの効果を無闇やたらと使いたくはなかったんだと思う。

 お父さんは、そうしてよかったって僕によく話す。


 "頼りの綱を初期効果だけにしていたから、今得た力があり、仲間がいるのさ"と
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