○✕売ります!?

一ノ瀬凛

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春、欲しいですか?

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「何を?!お前、それ本気で言ってんのかっ!!」

 バンッ···ガシャーンッ···

「あなた。なにもそこまで言わなくても···」

 仕事のストレスでイライラしている父親に、その父親の姿に震える母親···

「うっせーんだよっ!」

 ドアを荒々しく閉め、私はあてもなく家を飛び出した。

❨ったく、どいつもこいつも···❩

 何も持たずに家を飛び出してきたから、スマホもお財布も持っていない。

 かと言ってあの家に帰るのも嫌だった私は、デパートの閉館時間までグルグル歩き回り、駅近くの公園のベンチに座って空を夜空を眺めていた。


 ザッ······

「きみ、そんなとこでなにしてるの?」
「別に···」
「いくら?」

❨こいつ何言ってんだ?幾らって···❩

 サワッ···

「ちょ···」
「お金に困ってんなら···」
「······。」

 男の手が、シャツの中に滑り込んでいく···

 ビクッ···

「あの···」
「きみ、おっぱいおっきいね。ほら、もう感じてる···」
「んっ!」
「ホテル行こっか?それとも、トイレで?」

 何も答えないでいたら、手を掴まれてズカズカとラブホテルに連れ込まれた。


 男の手が、私のシャツを脱がし、ブラを外すと、

「えっ?んなっ···」

 何故かそのブラで両手を縛られて、ベッドに···

「ふふっ。柔らかくて、いい形···」

 男の手が乳房を強く掴み、先端にはネチョネチョとした舌先があたる。

 んんっ···

「きみ、感じるの早いね。ここもかな?」

 ショートパンツの中から手を入れられ、下着の隙間から強引に指が···

 はわっ······んっ···

「やっぱり···かなり濡れてきてる」

 ショートパンツと下着を脱がされ、男の顔が真上に···

 唇を塞がれ、乳房への愛撫をしながら、段々と舌が下へと移動していき、

 はうっ!!

❨初めての経験···こんなとこ誰も···❩

 ピチャッピチャッと男の舌が小さな芽をつついて起こす。

「凄いよ、中からこんなに···」

 ジュルジュルと音をたてては、私の中から溢れるジュースを飲み、飲まれた感覚で身体が小さく踊る。

 んっ······は···ぁ···

 男はひとしきりその部分を愉しんだあと、

「少し我慢してて···」

 ううっ!!

 静かに挿ってきて、上から私を見下ろす。

「大丈夫?少し痛かった?」

❨既に経験はしてあったけど、大きさが違った❩

「さっ、ほどこう」

 両手が解放されると、肩も少し楽になった。

 静かな部屋に男の息遣いや時折聞こえるペタペタとあたる小さなモノ。

 んっ···

❨この人、絶対勘違いしてる···❩

 時々、小さく動きを止めては、また腰を動かし続ける男。

 んっ······いいっ···あっ···あっ······

❨男の経験は、二人だけど中に挿った時、痛みがあった❩

 思わず男の身体にしがみつく。

「いいね。密着度が増すよ···。きみ、名前は?」
「香菜···」
「香菜、ね」

 男は、名前を呼びながら愛撫するのが好きなのか、発射する時でも、私の名前を呼びながら中に出していった。

「はい。5万!」
「······。」

 私が、その金額に驚いてたら、

「えっ?足らない?じゃ、じゅ···」
「いや、いいです。5万、で···」

 本当はお金なんていらなかった。ただ、あの家には帰りたくなかったから···

「帰る?」

 男は、私の髪を触りながら言う。

「帰りたくない。あんな家···」
「そっ。じゃ、泊ーまろっ!家に帰るのも面倒臭いし···」

 ニカッと笑ってそう言った。

 それが、私と磯山友幸との出会いだった。


「嘘···」
「じゃ、ねーよ。ほら···」

 テーブルの上にポンッと置かれた小さな手帳。所謂、警察手帳···

「ほんとだ。緑が丘中央警察署···生活安全課?えっ?磯山友幸」

❨生活安全課って···その人が買春?❩

「嘘だと思うなら、ここかけてみる?」

 目の前に差し出したのは、同じ名前の書かれた名刺。

「でも···」
「みなまで言うな。幾ら警官だって所詮男だ」
「はぁ···。で、なんですか?頼みたい事って···」

 すると磯山さんは、周りをキョロキョロ見回して、小さな声でこう言った。

「お前、カネ欲しくないか?」
「えっ···」

 そりゃお金は欲しいです。なんせ、私はまだ中学生。

「欲しいけど···」
「ウリしない?」

 いつものようにニカッとした笑顔で、サラッと売春を勧めてきた!どういうことかは知ってるけど、

「やる···」

 自分の口からは、信じられない言葉が出たのには、驚いた。

「お前だけは、特別だ」

 ???

 その意味は、どういう意味かは知らないけど、磯山さんが紹介してくれたお客さんは、どのおじさんも羽振りがよくて、とても優しかった。


「どれがいい?」

 普段、家では絶対に行けそうにない高級レストランに連れて行かれ、まず食事から始まる。

「じゃ、舌平目のコース。デザートは、ロイヤルカッション···」

 を堪能し、少しドライブを楽しんでのシティホテル。お客さんが定期的に泊まってるらしい。

「パパ!行こっ!」

 そう言うと誰も怪しまない。下手に名前で呼ぶと危ないから。

 エレベーターで、24階まで登ると、歩いて数秒で部屋がある。

 ピッ···

「開いたよ」

 彼は、カードキーをスーツの内ポケットにしまいながら、先に進む。

「綺麗···」

 窓からの夜景もまた、格別。彼は、後ろに周り服の上から乳房を掴み、ゆっくりと揉んでいく。

「香菜···今夜は···」

 パパ達には、友達の家で勉強すると嘘ついてお泊りセットを持ってきた。勿論、中に勉強道具が入ってる。

 んっ···

「博さん···」

 プチプチと服のボタンが外され、窓に映ったのは、下着姿の私。

「可愛いよ。よく似合う···」

 この下着、この博さんからの贈り物。

 ブラのリボンもパンティの紐を解かれ、背後からの愛撫を受け続ける。

「さっ、こっち」

 大きな革張りのソファに座り、足を大胆に広げ、目を閉じると彼のフサフサとした髪が太腿にあたり、緊張する。

 チロッ···

 んんっ···

 柔らかな茂みの奥に隠れた芽を早く起きろと急かすように、舌が動きだす。

 あぁっ···

「香菜···どうした?」
「ちょっと···驚いて···あっ!!」

 何がどうなったのか?はわからないけど、一番敏感な部分に舌ではない何かがあたって···

「お前の跳ね方、好き。今のは、歯をあてた」

❨歯?!それで、あんな?!❩

 ジュルッ···ジュゥッ!!

 身体の中から、ジュースが吸われていく感覚···

「好き······んんっ···」

 彼の頭にソッと手を乗せ、軽くその部分に押し付ける···

「気持ちいい···はぁ」
「香菜···挿れるぞ」

 身体を起こした彼は、ゆっくりと力強く私の中に挿り、腰を打ち付けてくる。

「博さん···キスして···」

 自分のを舐めた口でされるのは、最初抵抗はあったけど、今は慣れた。自分の匂い好き。

 ブチュッとした濡れた唇に吸い付くように、私は自分から舌を絡ませていく。

 お金が絡んでいても、この時だけは、博という男の女。それでいい···

「香菜···今日は一段と可愛い···」

 腰を捕まれ、グイグイと突かれても痛さよりも快感が先に来て、

 んぁぁっ!!いいっ!あっ!あっ!

 声を発し、身体全体で男に絡む。

「いいよ···香菜···アァッ···出そうだ」

 男は、苦痛な顔をし、そう言うと中に放ち始めた。

「アァッ···香菜···香菜···」

 男は、自身が落ち着くまで私の乳房を優しく揉みながら、赤ちゃんが母親の乳房に吸い付くようにしてくる。

「ふふっ···赤ちゃんみたい」

 そう言いながらも、私の手はソッと男の髪を撫でていく。


「えっ?!多いよ···」

 目の前に出されたのは、100000円···

「彼から金額は聞いてるけど、今日かなり良かったから」
「駄目です。いつものように、10000円!」

 100000円の中から1枚だけ抜くと、目の前に突き返す。

「じゃぁ···後で買い物しよう」

 でも、結局彼が勧める物はどれも高く中学生の私には大人過ぎて···


「で、それ買ってもらったのか?」
「うん。可愛い?」

 腕に嵌めたBABY-Gを高らかにあげる。

「よく似合ってるよ···」

 週に一度だけ、知らないおじさんに抱かれたり、いつものおじさんに抱かれても、磯山さんは普通に抱いてくれる。いや、いつもより激しい?


 そんな関係は、長くは続かなかった。

 学校にいく支度をしながら、ニュースを聞いてた時、耳に磯山友幸という名前が届いた。

「まっ、やぁね!おまわりさんですって···」

❨ママ違うよ?磯山さんは、ただの職員だよ?❩

「香菜?どうした?顔色悪いぞ?」
「······。」

❨磯山さん、逮捕された。どうしよぉ?!❩

 ドサッ···

「おい、香菜!」
「か、香菜ちゃんっ?!」


 目が覚めたのは、真っ白な天井の病室だった。

「香菜?ママよ?わかる?」
「うん···」

❨磯山さん···❩

「パパは?」
「ん?そこにいるわよ。あなた?」

❨私···私···❩

 いつか、磯山さん言ってた。

---

「もし俺らが捕まっても、お前の事だけは、バレないようにしてるから!!それだけは、信じろ!」

---

「バカね···私」

「ん?香菜ちゃん、なんか言った?」

 3日間、病院に閉じ込められてたけど、幸い脳には異常なく退院したものの、頭の中は磯山さんの事が気になっていた。

 逮捕された時は、ニュースで取り上げられたけど、それからは何もわからず、時間だけが過ぎていき、私の上を何人もの男が通り過ぎていった。


「私、もしかしたら妊娠したかも···」
「······。」

 待ち合わせをしたカフェに少し遅れてきた周平さんは、私の口から出た言葉に固まった。

 まだふたりとも高校生で、産めたとしても育てられる自信はなかった。

「俺が、なんとかするから···」

 そう言い周平さんは、その場を立ち去った。

「ごめんね···」

 お腹の赤ちゃんが、磯山さんとの子だったらどうだろうか?冷めきった珈琲を飲み干し、考えてみる。

 携帯は、解約はされてはいないが、連絡はない。検索すると、刑務所というとこにいくらしい。

「いつか、会えるといいな」


 それから暫くして···

「まさか、あんたに会う事になるとは···」
「······。」

 周平さんの元カノの亜子先輩にいきなり呼び出されて、スタバにきた。

「で、どうだったの?妊娠してた?」
「うん。7週目···」

 窓からなんとなく人並みを眺める。

「親は?お金は?」

❨怖くて言えない❩

 首を振ると、彼女は優しくこう言った。

「バカね···」
「うん」

 翌日、私は彼女に連れられて市外の産婦人科に来て、診察して貰ってから、中絶した。

「いい?絶対にママには言わないでよ!大事になるから!」
「判ったって!」
「······。」

 どうやら亜子先輩の知り合いらしい。なんとなく顔が似てるから、親戚なのかも知れない。

 暫く休んでから、家まで送るからと病院の先生の車で家まで行く筈が、

「どうして?」

 公園に寄りたいって亜子先輩が、急に言い出して、ついていったら、周平さんがいた。

「こら、周平!あんた、言わなきゃいけないことあるでしょ!」

 亜子先輩に睨まれた周平さんは、私の顔を見るなり、

「げ、元気?」

 と場違いな言葉を発したから、更に怒られ···

「ごめんっ!!」

 深々と頭を下げた。

「ったく。このバカ、ろくなことしないんだから!」
「······。」

 不思議だ。確か、私との浮気が原因で別れたと聞いたのに、それでもこうして···

「先輩···私の方こそごめんなさい」

 頭を下げた。たぶんだけど、亜子先輩、まだ周平さんのこと···

 帰りは、狭い車にギュウギュウ詰めで送ってもらった。


❨磯山さん···会いたいよ❩
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