文明論で分かる現代政策

平 一

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4 文明の循環が分かれば、デジタル改革が分かる!

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最近使われる言葉にはDXデジタル・トランスフォーメーション
略してデジトラというのもあります。
これは、一般的には情報技術による経済・社会活動の改善をいいます。

しかし、現在の国の政策としてのデジタル改革トランスフォーメーションは、
官公庁の行政活動から経済・社会活動全体に広げる形で、
情報化の不足解消と、AI化を目指す政策だと思います。

元々デジタルとは、レコード盤のように連続的な情報処理に対し、
光学ディスクなどを用いて電算機コンピュータで行う、
0と1など飛び飛びのあたいによる情報処理であり、
1990年代の懐かしい言葉のようにも聞こえます。

しかし日本は今でも他国に比べ、情報技術による、
行政サービスの利便化が足りないのでそれを改善し、
さらに以後は経済・社会活動全体において、
人工知能(AI)の活用までを図る、という政策です。

これは、デジタル改革トランスフォーメーション政策が、
狩猟・農耕・工業・情報社会に続く、
AI社会ともいうべき〝ソサエティ5.0〟の実現に
向けたものとされていることからも明らかです。

では、これを〝文明の星〟理論からみると、
どうなるでしょうか?



文明の発展には、循環サイクルがあります。
技術が進めば経済・社会活動は拡大・複雑・加速化するので、
政策もまた高度化し、必要とあれば大勢が動くが、
衆知も活かせるよう、巨大化と共に分権化します。
その政策がさらに、次世代技術の開発を助け、
新たな文明段階への発展を促すのです。

第2章では、情報段階の文明においては、
持続可能性サステナビリティーが求められること、
第3章では、その実現のために総合的なSDGs政策が
進められていることを、書きました。

しかし、一定の技術段階で政策が利害調整を極めたら、
新たな技術を開発・普及しない限り、さらなる改善は望めません。
農業社会で工業社会の豊かな生活はできず、
工業社会では情報社会の便利な生活は望めない。
情報社会でも、AI社会の持続可能な生活は難しい。
そこで政策は、さらに次の主力技術を中心とした、
次世代技術を開発・普及すべきことになります。

現在の日本は、文明発展の循環サイクルでいうと、
情報社会からAI社会への移行期にあります。
しかしその前提となる、情報化にも不十分なところがあるため、
このままでは利便性や持続可能性サステナビリティーの確保は難しい。

そこで我国は利便性と持続可能性サステナビリティー、両方の実現を目指し、
SDGsのような総合政策を実現するために、
それを助ける行政管理政策及び技術的政策として、
デジタル改革トランスフォーメーション政策を進めているのだと思います。

ところで、この〝デジトラ〟で開発・普及が図られている
人工知能とは、一体どんな主力技術なのでしょうか?
人工知能は、学習により因果法則を発見・活用できる、
自動改善型の演算指示プログラムです。

〝ああいうときはああする〟と教えたことしかできない
従来型の電算機コンピュータに対して、
人工知能を搭載したものは、経験から学習することで、
〝どうしたらいいか〟まで〝考え〟られるのです。

人工知能は、体外知性の創造によって、
もはや人智を越えて複雑加速化する文明活動の、
自動最適化による自己制御を可能とし、
持続可能性サステナビリティーを実現できる次世代技術だと思います。

従来は人間だけが行えた、知的活動の本質的な部分を、
機械に支援・代行してもらえるのは、大きな技術革新です。
それを支える電算機コンピュータの演算・記録・通信能力は高いので、
その学習能力は人間よりもはるかに大量高速であり、
同様の事例があれば忘れず迅速的確に法則を適用し、
学習内容を他の電子頭脳に広めることも簡単確実です。

小規模電力を集めて変化する需要に応えるには、どうしたらいいか?
一定の機能を持つ物質を見つけて作り出すには、どうしたらいいか?
事故や渋滞を防ぐため、どう運転や交通を制御したらいいか?
ある内容を他の言語で伝えるには、どう翻訳・表現したらいいか?
人間同様の仕事ができるロボットを、どう作り、動かしたらいいか?
顧客の需要を満たし収益を増すには、どんな商品や販売法がいいか?
人々の生活や健康を改善するため、どんな助言をしたらいいか?
難病を治すために、どう新薬の発見・製造や遺伝子治療を行えばいいか?
様々な子供達に教育を提供するため、どんな個別的配慮を行えばいいか?
国民の満足を高め行政費用コストを下げるには、どうすればいいか?
……それらに必要な法則性を発見し、情報提供や機械操作をするのです。

そのような人工知能(AI)を中心とする次世代技術は、
① 新素材・新エネルギー、IoTインターネット・オブ・シングスとビッグデータ処理、
知能ロボット、生物工学バイオテクノロジー生体工学バイオニクス、先進医療・教育のように、
② 人工物・自然物間の障壁を除いて双方の持続可能性サステナビリティーを高める、
体内環境含む自然・社会環境に優しい技術であり、
③ 環境、経済、社会(人間含む)、政策の全分野において、
まさに文明の持続的発展を可能にしてくれる技術です。

昨今よく聞くスマートグリッドやマイナンバー、データヘルス、
あるいはスマート(スーパー)シティといった政策用語も、
そうした技術の活用を前提としており、
様々な政策における次世代技術の重要性を示していると思います。

 

以上、現代の政策において用いられる、
持続可能性サステナビリティーSDGsエスディージーズ
デジタル改革トランスフォーメーションといった言葉について、
私見ですが〝文明の星〟理論による説明を試みました。

まとめますと、持続可能性サステナビリティーは現代文明の共通課題、
SDGsエスディージーズはその解決のための国際的な総合政策、
デジタル改革トランスフォーメーションは我国における総合政策の支援政策となり、
順々に目的と手段の関係になっていると思います。

人類文明は今、拡大や効率化に続いて、持続が求められる段階にある。
その持続とは、文明の構造における4つの政策全てに関わる、
複合的な課題なので、実現のためには総合的な政策が必要になる。
日本では特に、文明の循環における位置あるいは発展状況から、
総合政策達成のために社会の完全情報化とAI化をめざす、
技術的な支援策もとられている、というわけです。

私達が地球上における持続可能性サステナビリティーを達成できれば、
それは今後の本格的な宇宙進出に際し、
宇宙船や地球外施設といった閉鎖系クローズドシステムの中で、
文明活動を営んでいくのにも役立つことでしょう。

次世代技術とそれを活用した総合政策による、
人類文明のさらなる発展に期待します。
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